王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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鷹揚な性格の香蘭だが、この「入浴義務」だけは例外だ。彼女はどのような事情があろうとも湯浴みを必ず要求してくるし、また約束を破ることを許さない。
まだ父親が健在だった頃に、ちょっとしたことが原因で転倒して膝を強打してしまい、歩くことさえままならない状況だったにもかかわらず、香蘭が有無を言わせず「風呂に入る」と言い放った時の形相を、十三は未だに忘れる事ができない。彼女の顔の筋肉が生み出した造形は、市の図書館で見た天野可淡という人形作家が作った少女人形の写真にそっくりだった。そして、それを見た英二は、無言で這いずりながら少女とこの浴室に姿を消した。
今の自分が置かれている境遇も、あの時の父親とそれほど大差がない。香蘭は自分が口答えをすることも、駄々をこねることも、些細なことで彼女の力を利用しようとすることも面白がって許してくれる。だが「入浴義務」だけは何があっても実行させようとする。
幸いなことに、この義務には大きな特典が付いてくる。最初は恐る恐るだったが、今やこの役得なしの奉仕は考えられないほどだ。
全てのレモンに切り込みを入れ、洗面台に積み上げた十三は、それらを再びビニール袋に入れると、湯が溜まった浴槽に近づいて果汁ごと投げ入れた。湯気と共にレモンの香りが浴室に広がると、少年は果汁で汚れたナイフと手を洗い、立水栓の蛇口を捻って湯を止める。
入浴の準備を終えた十三が、次に向かったのは広い浴室の片隅だった。そこには、直方体をした大きなプラスティックの衣装ケースが置いてあった。
黒い詰め襟の学生服を身にまとった少年は、ケースのふたを開けると、どう考えても特定の目的のために作られたとしか思えない、布地面積が極端に小さいネックホルダー型の子供用ワンピースを取り出した。
折りたたんでいたワンピースを広げて皺を引き延ばした十三は、浴室の入り口に向かって、
「準備完了!」
と大きな声をかけた。しばらくすると、一糸まとわぬ姿になった香蘭が、満面の笑みをたたえながら浴室に姿を現した。
「さあ、これを着て」
少年は今にも折れそうなほどほっそりした体型の「外なる神」に近寄ると、白いミニのワンピースを手渡した。香蘭は困惑した面持ちで少年を見上げ、
「これから、入浴するのではないのか?」
と疑問を口にする。
「その前に、この格好で写真を撮りたいんだよ」
「どうしてじゃ?」
「俺が香蘭に義務を果たしているって証拠が欲しいんだ」
「ならば、このままの姿でも良いではないか」
「いやいや。毎回裸だと、どの時に撮った写真か分からなくなるだろう?」
「まあ、確かにそうじゃが……」
香蘭は得心がいかない面持ちのまま、紐のように細いネックホルダーを首にかけた。十三は黒い詰め襟の胸ポケットから携帯電話を取り出すと、ボタンを操作してカメラモードに切り替える。
「これで良いか?」
乳房と股間を除いてほぼ全裸に近い格好になると、香蘭は両手を後ろに回して少年に確認を要請した。十三は黒髪の「外なる神」を舐めるように観察してから相好を崩し、携帯電話の小さなレンズを彼女に向ける。
「いいよー、香蘭。そのままでいてねー」
少年は気持ち悪いぐらい優しい声を上げながら、せわしなく香蘭の周囲を回り、カメラのシャッターを何度も切った。特にこだわったのは横からのアングルで、紐状のネックからほんの少しだけはみ出すようにして乳首が見える位置を血眼になって探し出す。
「のう、十三。妾はそろそろ風呂に入りたいのじゃが……」
しばらくすると、撮影会に飽きてきて香蘭は大きく伸びをして首を左右に曲げた。すると十三は悪鬼を想わせる形相になって、少女の姿をした神に食ってかかる。
「だ、駄目だ! まだ、これって一枚が撮れてないんだ!」
「これは、妾との義務を果たした証拠の写真では……」
「そうなんだけど、そうじゃない部分もあるんだよ!」
「は、はあ? 何がなにやら一体……」
「大事なのは自然な感じなんだ。嘘っぽく無いというか……そう! わざとらしいポーズをとられると、バカにされてる気がするんだよ」
「?????」
「だからさ、女の子にわざとらしいポーズをとられると、男はこんなモンで喜んじゃうんでしょうみたいな、下心を見透かされている気がするだろう? それが駄目なんだよ。バカにされている気がするんだよ。だから、理想は盗撮だよね。盗撮されている女の子は、こっちの視線に気が付いてないから、態度が自然というか……」
「の、のう、十三。お前はどうしてこういう時ばかり饒舌になるのじゃ?」
「そりゃ饒舌にもなるよ。僕がどれだけ苦労して、ネットで小学生の盗撮画像を集めてるか、香蘭には分かるかい?」
「いや、分からぬが……」
返答に窮した香蘭は、思わず視線を宙に彷徨わせた。十三はネズミに襲いかかる猫のように、前のめりの姿勢でシャッターを切る。
「それ! その顔! 最高!」
「こ、こうか?」
「そう! その困ったような顔が良いねー」
「本当か?」
「嘘なんて言わないよ! いいよー」
「ならば、今の写真は妾の携帯にも送れ。記念にとっておきたい」
「うん。今すぐ送るよ。いやー、ベストショットが撮れて良かった」
詰め襟の裾で額に浮かんだ汗を拭った少年は、携帯をカメラモードからメール送信モードに切り替えて、撮ったばかりの写真の中で一番気に入ったものを、香蘭に持たせてある携帯に送付した。少女の姿をした神は十三の作業が終わるのを待つと、紐にしか見えない子供用ワンピースを脱ぎ捨てて全裸に戻る。
「さてと……」
一拍おいた香蘭はどこからともなくトールケースに入ったDVDを取り出すと、撮影が終わって虚脱状態になっている十三の眼前に突き出した。DVDのケースには全裸の女性が泡まみれになって男性にまたがっている姿が印刷されており、その脇には大きく『風俗のお仕事・ソープランド編』という文字が躍っている。
「……これは?」
何度か目を瞬かせた少年は、少女の姿をした神とDVDケースを見比べた。香蘭は真顔のまま深くうなずいて、ケースを頭頂部に掲げてポーズをとる。
「妾は団家の当主と契約を結び、この世界に来ておる。それは知っておるな?」
「そりゃ、もちろん。父さんから耳にたこができるぐらい聞かされたからね」
「その際に、1日に1回は妾の身を清めねばならぬ義務を負っているのも知っておろう?」
「だから、こうやってお風呂の準備をしているじゃないか」
「じゃが、お前の父親の英二がどうしても首を縦に振らぬことが1つだけあったのじゃ」
「まさかと思うけど、その両手に持ってるソープランドじゃないだろうな?」
「その、まさかじゃ」
少女の外見をした神の、あまりにもきっぱりとした回答に、十三は首を後ろに引いてから、頭を大きく左右に振った。
「断る」
やはりきっぱりした少年の回答に、今度は香蘭が大きく頬を膨らませる。
「何故じゃ? このソープランドという場所は、昔はトルコ風呂と呼ばれていたではないか。今でも特殊浴場と呼ぶとインターネットには書いてあったぞ」
「何をネットで調べてるんだ? そこは身を清める場所じゃない」
「しかし、風呂じゃ。それは認めるな」
「認めるけど、俺が香蘭にソープランドのサービスをするのは真っ平だ」
「どうしてじゃ? 英二も同じ事を妾に言っておった」
「いいか、香蘭。俺は親父が好きじゃない。むしろ、憎んでいると言っても良いぐらいだ。だが、その意見にだけは強く同意する」
「分からぬ。どうして妾の要望が受け入れられぬのか? 妾もお前に写真を撮らせているではないか。お前も妾にそれなりのサービスをするべきじゃ」
「写真については心から感謝する。でも、ソープランドは女性が男性にサービスする場所なんだ。だから俺の役目じゃない」
「そう言うと思っておった」
十三が小学生にしか見えない神への奉仕を拒否する理由を述べると、彼女はにやりと笑ってソープランドの教則DVDを頭の上で揺らし始めた。
「伊具の奴に調べさせたら、2007年に福岡の中州で女性向けのソープランドがあったそうじゃ。つまり、男性が女性にサービスするソープランドはあったのじゃ。だから、お前が妾にサービスするのは……」
香蘭がそこまで言いかけたところで、少年は彼女からDVDケースを奪い取り、フライングディスク競技の要領で浴室の隅に投げ捨てた。
「な、何をする!」
「諦めるんだ、香蘭。俺は香蘭の身を清めるつもりはあるけど、ソープランドのサービスはしない。そんなにしたければ、情報を教えてもらった伊具さんとするんだな」
「いやじゃ、いやじゃ! 十三にしてもらいたいのじゃ!」
「嫌もへったくれもあるか! とにかく、俺はソープランドごっこなんて真っ平だ」
「ゲンゴロウ洗いというのをされてみたいのじゃ! 十三だって、小学生の時はゲンゴウロウが好きだったではないか」
「俺が好きだったのはゲンゴロウじゃない! タガメだ! それに俺が本当に好きなのは美少女小学生だ。ソープランドのテクニックなんて知らん!」
「だからDVDを持ってきたのに、お前が捨てたではないか!」
全裸の少女の姿をした「外なる神」は浴室のタイルの上で地団駄を踏み、後ろに流した長い黒髪を振り回した。すると彼女の上方にある空間に透明な塊が出現し、見る間に巨大化していった。
「……なんだこれ!」
照明が放つ光の変化から異変を感じ取った十三は、真上を見上げて素っ頓狂な声を上げた。唇を突き出して眉をつり上げた香蘭は、今や浴槽ほどの大きさまで成長した透明な塊を指し示し、
「ローションじゃ! これでソープランドごっこをするのじゃ!」
と宣言するやいなや、人差し指を少年に突きつけた。
「ば、バカ! 止め……」
十三が両手を前に突き出して黒髪の少女を制するよりも早く、彼女の指が少年の額に向けられた。すると空中で静止していたローションの塊は、重力に引かれて彼の頭部にのしかかる。
「……あぼっ!」
大量の潤滑剤を浴びせかけられた十三は、その重さに負けて前のめりに倒れ込んだ。少年の額が冷たいタイルに勢いよく接触すると、ゴツッという固い物同士がぶつかった嫌な音が浴室に響き渡る。
全身をローションに覆われてうつ伏せになった十三は、そのままの姿勢で何回かビクンビクンと痙攣した後で、ぴくりとも動かなくなった。
「十三? 十三!」
少年の異変に気づいた香蘭は慌てて彼に駆け寄ろうとしたが、床に広がったローションに脚を滑らせると、彼の後頭部に自らの美しい富士額をのめり込ませていった。
まだ父親が健在だった頃に、ちょっとしたことが原因で転倒して膝を強打してしまい、歩くことさえままならない状況だったにもかかわらず、香蘭が有無を言わせず「風呂に入る」と言い放った時の形相を、十三は未だに忘れる事ができない。彼女の顔の筋肉が生み出した造形は、市の図書館で見た天野可淡という人形作家が作った少女人形の写真にそっくりだった。そして、それを見た英二は、無言で這いずりながら少女とこの浴室に姿を消した。
今の自分が置かれている境遇も、あの時の父親とそれほど大差がない。香蘭は自分が口答えをすることも、駄々をこねることも、些細なことで彼女の力を利用しようとすることも面白がって許してくれる。だが「入浴義務」だけは何があっても実行させようとする。
幸いなことに、この義務には大きな特典が付いてくる。最初は恐る恐るだったが、今やこの役得なしの奉仕は考えられないほどだ。
全てのレモンに切り込みを入れ、洗面台に積み上げた十三は、それらを再びビニール袋に入れると、湯が溜まった浴槽に近づいて果汁ごと投げ入れた。湯気と共にレモンの香りが浴室に広がると、少年は果汁で汚れたナイフと手を洗い、立水栓の蛇口を捻って湯を止める。
入浴の準備を終えた十三が、次に向かったのは広い浴室の片隅だった。そこには、直方体をした大きなプラスティックの衣装ケースが置いてあった。
黒い詰め襟の学生服を身にまとった少年は、ケースのふたを開けると、どう考えても特定の目的のために作られたとしか思えない、布地面積が極端に小さいネックホルダー型の子供用ワンピースを取り出した。
折りたたんでいたワンピースを広げて皺を引き延ばした十三は、浴室の入り口に向かって、
「準備完了!」
と大きな声をかけた。しばらくすると、一糸まとわぬ姿になった香蘭が、満面の笑みをたたえながら浴室に姿を現した。
「さあ、これを着て」
少年は今にも折れそうなほどほっそりした体型の「外なる神」に近寄ると、白いミニのワンピースを手渡した。香蘭は困惑した面持ちで少年を見上げ、
「これから、入浴するのではないのか?」
と疑問を口にする。
「その前に、この格好で写真を撮りたいんだよ」
「どうしてじゃ?」
「俺が香蘭に義務を果たしているって証拠が欲しいんだ」
「ならば、このままの姿でも良いではないか」
「いやいや。毎回裸だと、どの時に撮った写真か分からなくなるだろう?」
「まあ、確かにそうじゃが……」
香蘭は得心がいかない面持ちのまま、紐のように細いネックホルダーを首にかけた。十三は黒い詰め襟の胸ポケットから携帯電話を取り出すと、ボタンを操作してカメラモードに切り替える。
「これで良いか?」
乳房と股間を除いてほぼ全裸に近い格好になると、香蘭は両手を後ろに回して少年に確認を要請した。十三は黒髪の「外なる神」を舐めるように観察してから相好を崩し、携帯電話の小さなレンズを彼女に向ける。
「いいよー、香蘭。そのままでいてねー」
少年は気持ち悪いぐらい優しい声を上げながら、せわしなく香蘭の周囲を回り、カメラのシャッターを何度も切った。特にこだわったのは横からのアングルで、紐状のネックからほんの少しだけはみ出すようにして乳首が見える位置を血眼になって探し出す。
「のう、十三。妾はそろそろ風呂に入りたいのじゃが……」
しばらくすると、撮影会に飽きてきて香蘭は大きく伸びをして首を左右に曲げた。すると十三は悪鬼を想わせる形相になって、少女の姿をした神に食ってかかる。
「だ、駄目だ! まだ、これって一枚が撮れてないんだ!」
「これは、妾との義務を果たした証拠の写真では……」
「そうなんだけど、そうじゃない部分もあるんだよ!」
「は、はあ? 何がなにやら一体……」
「大事なのは自然な感じなんだ。嘘っぽく無いというか……そう! わざとらしいポーズをとられると、バカにされてる気がするんだよ」
「?????」
「だからさ、女の子にわざとらしいポーズをとられると、男はこんなモンで喜んじゃうんでしょうみたいな、下心を見透かされている気がするだろう? それが駄目なんだよ。バカにされている気がするんだよ。だから、理想は盗撮だよね。盗撮されている女の子は、こっちの視線に気が付いてないから、態度が自然というか……」
「の、のう、十三。お前はどうしてこういう時ばかり饒舌になるのじゃ?」
「そりゃ饒舌にもなるよ。僕がどれだけ苦労して、ネットで小学生の盗撮画像を集めてるか、香蘭には分かるかい?」
「いや、分からぬが……」
返答に窮した香蘭は、思わず視線を宙に彷徨わせた。十三はネズミに襲いかかる猫のように、前のめりの姿勢でシャッターを切る。
「それ! その顔! 最高!」
「こ、こうか?」
「そう! その困ったような顔が良いねー」
「本当か?」
「嘘なんて言わないよ! いいよー」
「ならば、今の写真は妾の携帯にも送れ。記念にとっておきたい」
「うん。今すぐ送るよ。いやー、ベストショットが撮れて良かった」
詰め襟の裾で額に浮かんだ汗を拭った少年は、携帯をカメラモードからメール送信モードに切り替えて、撮ったばかりの写真の中で一番気に入ったものを、香蘭に持たせてある携帯に送付した。少女の姿をした神は十三の作業が終わるのを待つと、紐にしか見えない子供用ワンピースを脱ぎ捨てて全裸に戻る。
「さてと……」
一拍おいた香蘭はどこからともなくトールケースに入ったDVDを取り出すと、撮影が終わって虚脱状態になっている十三の眼前に突き出した。DVDのケースには全裸の女性が泡まみれになって男性にまたがっている姿が印刷されており、その脇には大きく『風俗のお仕事・ソープランド編』という文字が躍っている。
「……これは?」
何度か目を瞬かせた少年は、少女の姿をした神とDVDケースを見比べた。香蘭は真顔のまま深くうなずいて、ケースを頭頂部に掲げてポーズをとる。
「妾は団家の当主と契約を結び、この世界に来ておる。それは知っておるな?」
「そりゃ、もちろん。父さんから耳にたこができるぐらい聞かされたからね」
「その際に、1日に1回は妾の身を清めねばならぬ義務を負っているのも知っておろう?」
「だから、こうやってお風呂の準備をしているじゃないか」
「じゃが、お前の父親の英二がどうしても首を縦に振らぬことが1つだけあったのじゃ」
「まさかと思うけど、その両手に持ってるソープランドじゃないだろうな?」
「その、まさかじゃ」
少女の外見をした神の、あまりにもきっぱりとした回答に、十三は首を後ろに引いてから、頭を大きく左右に振った。
「断る」
やはりきっぱりした少年の回答に、今度は香蘭が大きく頬を膨らませる。
「何故じゃ? このソープランドという場所は、昔はトルコ風呂と呼ばれていたではないか。今でも特殊浴場と呼ぶとインターネットには書いてあったぞ」
「何をネットで調べてるんだ? そこは身を清める場所じゃない」
「しかし、風呂じゃ。それは認めるな」
「認めるけど、俺が香蘭にソープランドのサービスをするのは真っ平だ」
「どうしてじゃ? 英二も同じ事を妾に言っておった」
「いいか、香蘭。俺は親父が好きじゃない。むしろ、憎んでいると言っても良いぐらいだ。だが、その意見にだけは強く同意する」
「分からぬ。どうして妾の要望が受け入れられぬのか? 妾もお前に写真を撮らせているではないか。お前も妾にそれなりのサービスをするべきじゃ」
「写真については心から感謝する。でも、ソープランドは女性が男性にサービスする場所なんだ。だから俺の役目じゃない」
「そう言うと思っておった」
十三が小学生にしか見えない神への奉仕を拒否する理由を述べると、彼女はにやりと笑ってソープランドの教則DVDを頭の上で揺らし始めた。
「伊具の奴に調べさせたら、2007年に福岡の中州で女性向けのソープランドがあったそうじゃ。つまり、男性が女性にサービスするソープランドはあったのじゃ。だから、お前が妾にサービスするのは……」
香蘭がそこまで言いかけたところで、少年は彼女からDVDケースを奪い取り、フライングディスク競技の要領で浴室の隅に投げ捨てた。
「な、何をする!」
「諦めるんだ、香蘭。俺は香蘭の身を清めるつもりはあるけど、ソープランドのサービスはしない。そんなにしたければ、情報を教えてもらった伊具さんとするんだな」
「いやじゃ、いやじゃ! 十三にしてもらいたいのじゃ!」
「嫌もへったくれもあるか! とにかく、俺はソープランドごっこなんて真っ平だ」
「ゲンゴロウ洗いというのをされてみたいのじゃ! 十三だって、小学生の時はゲンゴウロウが好きだったではないか」
「俺が好きだったのはゲンゴロウじゃない! タガメだ! それに俺が本当に好きなのは美少女小学生だ。ソープランドのテクニックなんて知らん!」
「だからDVDを持ってきたのに、お前が捨てたではないか!」
全裸の少女の姿をした「外なる神」は浴室のタイルの上で地団駄を踏み、後ろに流した長い黒髪を振り回した。すると彼女の上方にある空間に透明な塊が出現し、見る間に巨大化していった。
「……なんだこれ!」
照明が放つ光の変化から異変を感じ取った十三は、真上を見上げて素っ頓狂な声を上げた。唇を突き出して眉をつり上げた香蘭は、今や浴槽ほどの大きさまで成長した透明な塊を指し示し、
「ローションじゃ! これでソープランドごっこをするのじゃ!」
と宣言するやいなや、人差し指を少年に突きつけた。
「ば、バカ! 止め……」
十三が両手を前に突き出して黒髪の少女を制するよりも早く、彼女の指が少年の額に向けられた。すると空中で静止していたローションの塊は、重力に引かれて彼の頭部にのしかかる。
「……あぼっ!」
大量の潤滑剤を浴びせかけられた十三は、その重さに負けて前のめりに倒れ込んだ。少年の額が冷たいタイルに勢いよく接触すると、ゴツッという固い物同士がぶつかった嫌な音が浴室に響き渡る。
全身をローションに覆われてうつ伏せになった十三は、そのままの姿勢で何回かビクンビクンと痙攣した後で、ぴくりとも動かなくなった。
「十三? 十三!」
少年の異変に気づいた香蘭は慌てて彼に駆け寄ろうとしたが、床に広がったローションに脚を滑らせると、彼の後頭部に自らの美しい富士額をのめり込ませていった。
21件のコメント
[C3843] 検索する神
- 2010-06-14
- 編集
[C3845]
美少女にソープランドプレイを拒否るとか(しかも相手から誘ってきたのに)馬鹿なの?死ぬの?
いやまあ主人公の性格から当然の流れなんだろうけど、読者側から見ておいしそうな選択肢を主人公のへたれで唾棄されると、なんか、こう、うぎぎときますな
いやまあ主人公の性格から当然の流れなんだろうけど、読者側から見ておいしそうな選択肢を主人公のへたれで唾棄されると、なんか、こう、うぎぎときますな
- 2010-06-14
- 編集
[C3847] 盗撮w
あははあ、やっちまったな。って感じですね。しかし、逆ソープはAVでもメジャーだし、あってもよかったんじゃないですかね?
>電気屋さん
ゲンゴロウが泳ぐところを思い浮かべましょうw
>電気屋さん
ゲンゴロウが泳ぐところを思い浮かべましょうw
- 2010-06-14
- 編集
[C3848] 電気屋さん、寛さん
だから、ちゃんと最初からストレートだって言ったじゃないですかー。
ゲンゴロウ洗いは、ソープ嬢がうつ伏せになった男性の下に体を入れ前後に滑るテクニックで、そのときの男の格好が脚を広げて泳ぐゲンゴロウに似ていたんで、この名前が付いたんだと思います。
ゲンゴロウ洗いは、ソープ嬢がうつ伏せになった男性の下に体を入れ前後に滑るテクニックで、そのときの男の格好が脚を広げて泳ぐゲンゴロウに似ていたんで、この名前が付いたんだと思います。
- 2010-06-15
- 編集
[C3850] 検索してみた。
ためしに検索してみたら、いきなりトップに画像つきのサイト引っかかってきました。グーグル様スゴい! こんなネタさすがにムリだと思ってたのに。やってみるもんだなー。
そして二つ目がココでした(爆
>主人公は盗撮画像を見ながらのオナニーこそ至高だとかたくなに信じて疑わない好青年です。
『処女と淫魔』by鬼椿ユングって小説ありまして、コレの主人公がまさにソレです。主人公に惚れてる義妹がいて、もちろんモーションかけてくるんですが、ストリップさせてもフェラチオさせても「よし、コレでオナニーライフがレベルアップ!」とか考えるよーなヤツです。
そして二つ目がココでした(爆
>主人公は盗撮画像を見ながらのオナニーこそ至高だとかたくなに信じて疑わない好青年です。
『処女と淫魔』by鬼椿ユングって小説ありまして、コレの主人公がまさにソレです。主人公に惚れてる義妹がいて、もちろんモーションかけてくるんですが、ストリップさせてもフェラチオさせても「よし、コレでオナニーライフがレベルアップ!」とか考えるよーなヤツです。
- 2010-06-15
- 編集
[C3852] 電気屋さん
セックスよりオナニーが好きという男性は意外に多いんですよね。話を聞いていると、どうも外ればっかり引いた結果のような気もするんですが。
しかし、ゲンゴロウ洗いの2番目がココですか。メジャーなネタじゃなかったのかな?
しかし、ゲンゴロウ洗いの2番目がココですか。メジャーなネタじゃなかったのかな?
- 2010-06-16
- 編集
[C3853] 鳥山さん
>主人公は盗撮画像を見ながらのオナニーこそ至高だとかたくなに信じて疑わない
ということは、壷洗いまでたどりつくかどうかも見所のひとつですね。
これエロ抜きにして普通のラノベにしても結構いけるんじゃないですかね?んで、売れたらアニメ化して、主題歌とかも売れちゃったりしてウハウハしたいもんですな。
タイトルはと○る邪神○ネクロノミコンとか…げふっげふっ
ということは、壷洗いまでたどりつくかどうかも見所のひとつですね。
これエロ抜きにして普通のラノベにしても結構いけるんじゃないですかね?んで、売れたらアニメ化して、主題歌とかも売れちゃったりしてウハウハしたいもんですな。
タイトルはと○る邪神○ネクロノミコンとか…げふっげふっ
- 2010-06-16
- 編集
[C3854] 都条例関連でお知らせがあります。
- 2010-06-17
- 編集
[C3867] 鳥山さん
数が少ないので申し訳ないですが、身近な購買層の人に「こんな話があったらどお?」と聞いてみたところ、「目新しい」「惹かれるものがある」ということだったので、需要はあるんじゃないでしょうか。
ただみんなそろって「読後感の良いものなら」ということでしたが。
ただみんなそろって「読後感の良いものなら」ということでしたが。
- 2010-06-18
- 編集
[C3884] 鳥山さん
>清涼飲料水みたいなコメント
商品の性質としては似てるかも。
要するに、最後は結果としてでもいいもんになって悪をやっつけてほしいとw
生ぬるい邪神を求めてるっぽいですね。でも、毎回他の邪神と戦うような構成にすればシリーズ化もいけるかも?
商品の性質としては似てるかも。
要するに、最後は結果としてでもいいもんになって悪をやっつけてほしいとw
生ぬるい邪神を求めてるっぽいですね。でも、毎回他の邪神と戦うような構成にすればシリーズ化もいけるかも?
- 2010-06-20
- 編集
[C3887] Anchangさん
あ、悪? 悪ってなんジャロ?
他の邪神と戦う構成になるのは構想時からそのつもりだったんですけど、悪をやっつける設定というのは……。
ブブゼラいかがどすえ?
ボエエエエー。
他の邪神と戦う構成になるのは構想時からそのつもりだったんですけど、悪をやっつける設定というのは……。
ブブゼラいかがどすえ?
ボエエエエー。
- 2010-06-22
- 編集
[C3890] 今頃になって『神狩り』読んでたり。
「生ぬるい」ってよか「わかりやすい」だよネ。
神とは語るべからざるモノでなく、語れざるモノであるってのが理解できんのだと思う。ワケわかんないから面白いしコワい、とSFモノのやつがれなぞは思っちまうんだが、どーも少数派らしーです。しくしく…。
ニャル子がおかぴーのは、第一に擬人化しちゃいけないものをしちゃった点だと思ってるんだけどねー。
それにしてもキッチリ週刊なのはホントにびっくりですナ(笑
神とは語るべからざるモノでなく、語れざるモノであるってのが理解できんのだと思う。ワケわかんないから面白いしコワい、とSFモノのやつがれなぞは思っちまうんだが、どーも少数派らしーです。しくしく…。
ニャル子がおかぴーのは、第一に擬人化しちゃいけないものをしちゃった点だと思ってるんだけどねー。
それにしてもキッチリ週刊なのはホントにびっくりですナ(笑
- 2010-06-22
- 編集
[C3894] 電気屋さん、Anchangさん
この作品に関しては、わざと極端に形式化しているので、分かり易いと思います。
そして、Anchangさんの推測は当たりです。ね? 分かり易いでしょ?
そして、Anchangさんの推測は当たりです。ね? 分かり易いでしょ?
- 2010-06-23
- 編集
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しっかし十三クンよ、ケータイのカメラはダメだろ。ココはこだわりの一眼レフとか持たなきゃアカンだろ。むしろココは一発二眼レフでもヨいくらいだぞ?たしかに素子の性能は高くなってきてるが、レンズがダメだ。なにより撮ってる姿がチャラい。
それにしてもローション召喚からのくだりにはスキつかれました。こーもストレートにスラップコメディしてくるとわ。
最後にしつもん。ゲンゴロウ洗いってどんなん?