王様を欲しがったカエル

　仕事の都合で開始した、男女交際、恋愛に関する読書は、取り合えず１２冊まで進行。１日あたり０．５冊ぐらいのペースで、最終的には５０冊から６０冊前後までは読み込んでいく予定……なのだが、読んでいるだけで猛烈に疲弊した。

　まず、驚いたのがいわゆる恋愛指南本に、女性から誘ってくるケーススタディがほぼ皆無なこと。男性と女性の人口は半々なはずなのに、男性が女性を誘うケースしか載っていないって、一体どの世界の日本のことなんだ？　それとも、想定される対象読者は「自分から誘ってくる女はビッチ」と思っている野郎ばっかりなんだろうか？

　次に驚いたのが、恋愛、男女交際、そして結婚の３つを論理的に区分して解説をしている本が、現段階で１冊しか見あたらないところ。大抵の本は、この３つが混同されて書かれている、もしくは婚活系の本のように特定のシチュエーションに特化したものしかない。これで、読者はスキルを習得することが可能なのだろうか？

　ぶっちゃけ、この手のジャンルに関して、私はここ数年まで全く興味がなかったので、出版されている本を読んだことすらなかったのだが、一気に通読することによって見えてきたものがある。それは「事実は小説より奇なり」の一言に尽きる。

　その中でもいちばん驚愕したのが「女性とつき合ったことがほとんどないのに、自分の好みの女性のタイプや恋愛観をダラダラ語る」男性がいるのを知ったことで、これには危うく顎が外れそうになった。

　推察するに、本人は自己の内面をさらけ出すことによって誠実さを周囲にアピールしたいらしいのだが、どう考えてもこれはただの「恋愛における自殺」でしかない。つまり、自分の好きなシチュエーションや好みの女性を話してしまうのは、作戦を遂行する前に作戦計画を敵に喋ってしまうようなものだということが分かっていないのだ。

　ちょっと考えて欲しい。たとえば、ある女性のブログに「私はジャニーズの××君みたいな男子がタイプでーす」とか「海の見えるホテルでデートするのが理想でーす」などとダラダラ書いてあったとして、その女性とつき合いたいと思うだろうか？　ところが、男性の方はこの手の致命的なミスをやりまくっているのである。既に彼女がいる男性ですら、かなり危険と思われる行為を、まだ彼女のいない男性がやったら必敗はほぼ確定だろう。

　こんな、戦場でつい立ち上がって額を撃ち抜かれてしまうような迂闊君に、一体何を教えろと言うのだろう？　戦場では腰をかがめて前進、あるいは匍匐前進するのは基本中の基本で、作戦計画を周囲に漏らさないのも基本中の基本だ。

　あぁ、読めば読むほど自信が無くなっていくよ。大丈夫か、俺……。