王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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前回紹介した『モテ本案内51』で、恋愛本の読破数がジャスト25冊になったので、ネタバレにならない程度に問題を整理してみる。
(1)動物行動学、あるいは人間行動学からの視点が著しく欠けている。
これは全てのモテ本にあてはまる欠陥で、この欠陥がある以上、既存のモテ本の記述は部分的にしか使えない。要するにスピリチュアル、すなわちオカルト系のモテ本を除き、ほとんどのモテ本は、
1.心理学
2.脳科学
3.生命化学
4.社会科学
の研究成果を基礎に自説の正しさを強調する、というスタイルを採用しているのだが、各の記述に一貫性や整合性がない。
その代表的なものが「人間はかつて狩猟生活者で、男性は狩りをしていた」というもので、これは脳の男女差の説明と平行して行われるが、両者は完全に矛盾する。つまり、男性が女性に較べると規則性の高い行動や現象を好む傾向が強いという調査結果が出ているのは事実なのだが、だとしたら人間の男性は不確定要素の多い狩猟よりも、規則的に労働することで収穫を得やすい農耕や牧畜を好むはずで、現実の歴史も狩猟から農耕・牧畜へと「より規則性の高いもの」に発展してきている、という厳然たる事実がある。
この流れが最終的に理数系学問全般の発展に繋がるわけだが、それを無視してまで「男が狩りを……」と言いたがる理由が分からない。恐らく、男性は狩り、女性は子育て(?)のような性差による役割を強調することで、自説を印象づける目的があるのだろうが、結果として読者を混乱させる役割しか果たしていない。
つまり、男性に恋愛が「苦手」なタイプが多いのは、恋愛(を代表とする人間関係全般)に規則性がなく、この規則性のなさが男性の興味を惹かないことが原因なのだ。これは恋愛本を読むまでもなく、自分を含む周囲の人間関係を見ていれば明白な事実だが、何故か恋愛本の著者のほとんどが指摘をしていない。本当に目の前にいる人間を見ているのかという疑問が生じてくるし、恐らく著者の大半は目の前にいる人間を見ていない。
同時に、男性向けのモテ本の大半は「どうしたら、女性を規則的に動かせるか(コントロールできるか)」に多くの記述を費やしている。これは、規則性に惹かれやすいタイプの男性が女性とつき合いたいと思った際に、非規則的な関係に耐えられず、できる限り規則的であって欲しいという願望に応えた形の記述なんだろうけれども、そもそも規則性のないものに無理やり規則性を付与しようとするから、部分的な効果しか見込めないという形で欠陥が現れる。
(2)遺伝が優先なのか、心理学が優先なのか?
これも(1)と同様の欠陥で、人間の脳、すなわち遺伝領域にまで踏み込んで説明をしているにもかかわらず、心理学的な技術(気の持ちよう)で行動を変えることができると主張する本が多い。遺伝的なものであれば変化はできないはずで、これは完全な矛盾である。どっちなんだよ。
余談になるが、心理学を利用して恋愛話を語るタイプの著者が、揃いも揃ってプロスペクト理論を援用していないのにはかなりがっかりした。年齢と結婚の関係を説くのであれば、この理論を「持ってくる」のが妥当だと思うのだが……。どうなってるのかね? ひょっとすると、まだその手の本に当たっていないだけかも。
(1)動物行動学、あるいは人間行動学からの視点が著しく欠けている。
これは全てのモテ本にあてはまる欠陥で、この欠陥がある以上、既存のモテ本の記述は部分的にしか使えない。要するにスピリチュアル、すなわちオカルト系のモテ本を除き、ほとんどのモテ本は、
1.心理学
2.脳科学
3.生命化学
4.社会科学
の研究成果を基礎に自説の正しさを強調する、というスタイルを採用しているのだが、各の記述に一貫性や整合性がない。
その代表的なものが「人間はかつて狩猟生活者で、男性は狩りをしていた」というもので、これは脳の男女差の説明と平行して行われるが、両者は完全に矛盾する。つまり、男性が女性に較べると規則性の高い行動や現象を好む傾向が強いという調査結果が出ているのは事実なのだが、だとしたら人間の男性は不確定要素の多い狩猟よりも、規則的に労働することで収穫を得やすい農耕や牧畜を好むはずで、現実の歴史も狩猟から農耕・牧畜へと「より規則性の高いもの」に発展してきている、という厳然たる事実がある。
この流れが最終的に理数系学問全般の発展に繋がるわけだが、それを無視してまで「男が狩りを……」と言いたがる理由が分からない。恐らく、男性は狩り、女性は子育て(?)のような性差による役割を強調することで、自説を印象づける目的があるのだろうが、結果として読者を混乱させる役割しか果たしていない。
つまり、男性に恋愛が「苦手」なタイプが多いのは、恋愛(を代表とする人間関係全般)に規則性がなく、この規則性のなさが男性の興味を惹かないことが原因なのだ。これは恋愛本を読むまでもなく、自分を含む周囲の人間関係を見ていれば明白な事実だが、何故か恋愛本の著者のほとんどが指摘をしていない。本当に目の前にいる人間を見ているのかという疑問が生じてくるし、恐らく著者の大半は目の前にいる人間を見ていない。
同時に、男性向けのモテ本の大半は「どうしたら、女性を規則的に動かせるか(コントロールできるか)」に多くの記述を費やしている。これは、規則性に惹かれやすいタイプの男性が女性とつき合いたいと思った際に、非規則的な関係に耐えられず、できる限り規則的であって欲しいという願望に応えた形の記述なんだろうけれども、そもそも規則性のないものに無理やり規則性を付与しようとするから、部分的な効果しか見込めないという形で欠陥が現れる。
(2)遺伝が優先なのか、心理学が優先なのか?
これも(1)と同様の欠陥で、人間の脳、すなわち遺伝領域にまで踏み込んで説明をしているにもかかわらず、心理学的な技術(気の持ちよう)で行動を変えることができると主張する本が多い。遺伝的なものであれば変化はできないはずで、これは完全な矛盾である。どっちなんだよ。
余談になるが、心理学を利用して恋愛話を語るタイプの著者が、揃いも揃ってプロスペクト理論を援用していないのにはかなりがっかりした。年齢と結婚の関係を説くのであれば、この理論を「持ってくる」のが妥当だと思うのだが……。どうなってるのかね? ひょっとすると、まだその手の本に当たっていないだけかも。
2件のコメント
[C3012]
- 2010-02-01
- 編集
[C3015] せんせー、それジーンちゃいます、ミームです。
もー、鳥山クンったらワカってるクセにイケズなんだからー。
モテ本の著者が心理学だの脳科学だのを一般教養レベルにすら理解してるはずないじゃないっスか。つごーのいートコだけちゃらっと検索してハクつけてるだけだから、骨組みがグズグズなんてあったりまえ。
そもそも遺伝の話でジーンとミームの区別付いてるヤツほとんどいない気がする。ワカった上でごっちゃにするひきょーもんすらいるっぽいし。2)の話って要するにそーゆー話だと思う。
こないだも書いたけど、そもそも恋愛行動なんて人の行動の中で最もリクツにはまらんもんだってのはほとんどの人に多かれ少なかれ同意得られるハズのもんで、その印象は実際正しいワケです。
そこを怪しげなヘリクツでカタにハメよーたって実りは少ないと思うなー。
そもそもの問題は、恋愛なんぞハナから向いちゃーいないリクツ屋にすら恋愛を志向せざるを得ない社会状況にあって、コレにゃソレなりの答えもっちゃーいるんだけど、なんとなくネタばらしになりそーなんでとりあえず自粛。
プロスペクト理論の件も、コレがふつーは経済行動の説明に使われるからで、恋愛関連の行動心理学でちゃらっと検索して出てくるネタじゃないからでしょー。本質は普遍性が高くて恋愛にも援用可能なモノであると気づくにはちりっと突っ込んでべんきょーしないと。少なくとも恋愛関連の本のドレにも出てくるタイプの知見とは思えないなー。
モテ本の著者が心理学だの脳科学だのを一般教養レベルにすら理解してるはずないじゃないっスか。つごーのいートコだけちゃらっと検索してハクつけてるだけだから、骨組みがグズグズなんてあったりまえ。
そもそも遺伝の話でジーンとミームの区別付いてるヤツほとんどいない気がする。ワカった上でごっちゃにするひきょーもんすらいるっぽいし。2)の話って要するにそーゆー話だと思う。
こないだも書いたけど、そもそも恋愛行動なんて人の行動の中で最もリクツにはまらんもんだってのはほとんどの人に多かれ少なかれ同意得られるハズのもんで、その印象は実際正しいワケです。
そこを怪しげなヘリクツでカタにハメよーたって実りは少ないと思うなー。
そもそもの問題は、恋愛なんぞハナから向いちゃーいないリクツ屋にすら恋愛を志向せざるを得ない社会状況にあって、コレにゃソレなりの答えもっちゃーいるんだけど、なんとなくネタばらしになりそーなんでとりあえず自粛。
プロスペクト理論の件も、コレがふつーは経済行動の説明に使われるからで、恋愛関連の行動心理学でちゃらっと検索して出てくるネタじゃないからでしょー。本質は普遍性が高くて恋愛にも援用可能なモノであると気づくにはちりっと突っ込んでべんきょーしないと。少なくとも恋愛関連の本のドレにも出てくるタイプの知見とは思えないなー。
- 2010-02-02
- 編集
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