王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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本日は仕事を早めに切り上げて、レンタル店で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を借りてきて鑑賞。トラウマ治療を試みる。
このアニメが初放送されていた当時、私は色々あって角川書店関係の仕事から撤退し、知人の漫画家さんの紹介で作家に転身。フランス書院のナポレオン文庫から1冊目の単行本を出版したばかりだった。初の転職だったので不安な上に、この時期のナポレオン文庫は主力の雑破業氏が、やっぱり色々あって脱退。編集さんからは暗に「雑破さんの後釜をよろしく」と言われ、「作風がぜんぜん違うのに、平気かよ?」と相当神経を使っていた。
その時期にこの作品はとどめだった。と言っても、私はこの作品を見ていなかった。従兄弟(当時小学生)が家に遊びに来た時に、偶然アニメの話になって、「最近、何を観てるの?」と尋ねたら「オタクなんだけど……」と恥ずかしながら紹介してくれたのが存在を知ったきっかけである。
そこで、ちょうど放映日だったということもあって、一緒に鑑賞。話はよく覚えていないのだが、エヴァンゲリオンが穴を昇るとか落ちるとかいう展開で、いつものガイナックステイストだったから、別段何の感慨も持たず、続きも見る気が起きなかった。
ところが、その間に仕事関係の人間が次々とエヴァンゲリオンにはまっていった。今、思い返してもものすごい感染力だったが、困ったことにしばらくすると私の作風がエヴァンゲリオンに似ているという評価が、あちこちから聞こえるようになった。
何で? あっちは関西系のSF、アニメ、特撮オタクで、こっちはSFというバックボーンこそ一緒ではあるものの、ゲーム、ミリタリーオタクで接点はまるでない。文化が違う。ぜんぜん関係ないじゃん……などと思っていられたのもつかの間。この話を相談したイラストレーター氏が、わざとエヴァンゲリオン風のイラストを私の小説にいれちゃったのだ。
これには、さすがの私もまいって編集さんに相談したところ、「話が全然違うから大丈夫」ということで、めでたく出版したのが『逢魔の刻印』だった。これが呪いの始まりである。もう、この時期になると、あんまりにも他人様から「似ている、似ている」と連呼されていたので、私も熱心なエヴァンゲリオンのファンからビデオを借りて、最初から作品を確認する作業を行っていた。
で、確かに話はまったく違っていたのだが、宗教的なモチーフを扱っている点と、キャラクターの心理描写の方法に類似点があることを確認。「あーあ」と思ったのを今でも明確に記憶している。
私が宗教的なモチーフを使いたがるのは昔からで、これは宗教に興味があるからというよりも、子どもの頃に大ヒットしたジャガーバックス(立風書房)の影響、もっと限定すると佐藤有文著の『世界妖怪図鑑』へのオマージュだ。今でも敬愛する石原豪人氏のイラスト目当てで購入したのだが、そのあまりにも胡散臭い内容にはまるはまる。
何せ、著名なゴヤの作品である『我が子を食らうサトゥルヌス』まで妖怪として紹介し、デタラメな解説文を付け加えているんだから、もうコメントのしようがない。ところが、当時は私も無知だから、まさかこれが無断引用とは気付かず、後になってゴヤの作品集を観て唖然とした次第。これより酷い扱いだったのがフェリシアン・ロッブスの『魔王が毒麦の種を蒔く』で、同図鑑で紹介された時の名称は「投げ捨て魔人」。これも後にロッブスを知って愕然とするのだが、まあ、佐藤さんというのはこの手のネタのオンパレードで、成長するに連れて彼のテイストである「いい加減なサンプリング」の妙味が中毒化するという仕掛けになっていた。
それはさておき、エヴァンゲリオンだ。こいつは後々まで私につきまとった。約1年でナポレオン文庫を脱退し、エロゲーの制作と平行して別ペンネームでエンターブレイン関係のゲームでシナリオを担当していた時期も「似ている」「パクリだ」という評価がかなりの確率でユーザーから届いたのだ。そのころになると、私ももうげんなりしてきていて、「もうええわい」という気持ちになっており、オタク系の仕事よりも実写系ポルノの仕事に食指がシフトし始めていた………………。
これ以降に関しては書くのが面倒くさいので省略するが、こうやって12~3年ぶりに同作品に目を通すのは、自らの過去を振り返るよい機会である。余談になるが、レンタル店のアルバイト君が、この作品を見たのは小学生の時だったそうで、自分の老化を意識させられるという意味においても嫌な経験だったことを付け加えておく。
もっとも、これだけ年月が経てば、もうこの作品の風評が私につきまとうことはないだろう。制作になんか一切関与してなかったのにねー。で、リハビリの結果だが、素直に面白いと思えましたよ。マル。
このアニメが初放送されていた当時、私は色々あって角川書店関係の仕事から撤退し、知人の漫画家さんの紹介で作家に転身。フランス書院のナポレオン文庫から1冊目の単行本を出版したばかりだった。初の転職だったので不安な上に、この時期のナポレオン文庫は主力の雑破業氏が、やっぱり色々あって脱退。編集さんからは暗に「雑破さんの後釜をよろしく」と言われ、「作風がぜんぜん違うのに、平気かよ?」と相当神経を使っていた。
その時期にこの作品はとどめだった。と言っても、私はこの作品を見ていなかった。従兄弟(当時小学生)が家に遊びに来た時に、偶然アニメの話になって、「最近、何を観てるの?」と尋ねたら「オタクなんだけど……」と恥ずかしながら紹介してくれたのが存在を知ったきっかけである。
そこで、ちょうど放映日だったということもあって、一緒に鑑賞。話はよく覚えていないのだが、エヴァンゲリオンが穴を昇るとか落ちるとかいう展開で、いつものガイナックステイストだったから、別段何の感慨も持たず、続きも見る気が起きなかった。
ところが、その間に仕事関係の人間が次々とエヴァンゲリオンにはまっていった。今、思い返してもものすごい感染力だったが、困ったことにしばらくすると私の作風がエヴァンゲリオンに似ているという評価が、あちこちから聞こえるようになった。
何で? あっちは関西系のSF、アニメ、特撮オタクで、こっちはSFというバックボーンこそ一緒ではあるものの、ゲーム、ミリタリーオタクで接点はまるでない。文化が違う。ぜんぜん関係ないじゃん……などと思っていられたのもつかの間。この話を相談したイラストレーター氏が、わざとエヴァンゲリオン風のイラストを私の小説にいれちゃったのだ。
これには、さすがの私もまいって編集さんに相談したところ、「話が全然違うから大丈夫」ということで、めでたく出版したのが『逢魔の刻印』だった。これが呪いの始まりである。もう、この時期になると、あんまりにも他人様から「似ている、似ている」と連呼されていたので、私も熱心なエヴァンゲリオンのファンからビデオを借りて、最初から作品を確認する作業を行っていた。
で、確かに話はまったく違っていたのだが、宗教的なモチーフを扱っている点と、キャラクターの心理描写の方法に類似点があることを確認。「あーあ」と思ったのを今でも明確に記憶している。
私が宗教的なモチーフを使いたがるのは昔からで、これは宗教に興味があるからというよりも、子どもの頃に大ヒットしたジャガーバックス(立風書房)の影響、もっと限定すると佐藤有文著の『世界妖怪図鑑』へのオマージュだ。今でも敬愛する石原豪人氏のイラスト目当てで購入したのだが、そのあまりにも胡散臭い内容にはまるはまる。
何せ、著名なゴヤの作品である『我が子を食らうサトゥルヌス』まで妖怪として紹介し、デタラメな解説文を付け加えているんだから、もうコメントのしようがない。ところが、当時は私も無知だから、まさかこれが無断引用とは気付かず、後になってゴヤの作品集を観て唖然とした次第。これより酷い扱いだったのがフェリシアン・ロッブスの『魔王が毒麦の種を蒔く』で、同図鑑で紹介された時の名称は「投げ捨て魔人」。これも後にロッブスを知って愕然とするのだが、まあ、佐藤さんというのはこの手のネタのオンパレードで、成長するに連れて彼のテイストである「いい加減なサンプリング」の妙味が中毒化するという仕掛けになっていた。
それはさておき、エヴァンゲリオンだ。こいつは後々まで私につきまとった。約1年でナポレオン文庫を脱退し、エロゲーの制作と平行して別ペンネームでエンターブレイン関係のゲームでシナリオを担当していた時期も「似ている」「パクリだ」という評価がかなりの確率でユーザーから届いたのだ。そのころになると、私ももうげんなりしてきていて、「もうええわい」という気持ちになっており、オタク系の仕事よりも実写系ポルノの仕事に食指がシフトし始めていた………………。
これ以降に関しては書くのが面倒くさいので省略するが、こうやって12~3年ぶりに同作品に目を通すのは、自らの過去を振り返るよい機会である。余談になるが、レンタル店のアルバイト君が、この作品を見たのは小学生の時だったそうで、自分の老化を意識させられるという意味においても嫌な経験だったことを付け加えておく。
もっとも、これだけ年月が経てば、もうこの作品の風評が私につきまとうことはないだろう。制作になんか一切関与してなかったのにねー。で、リハビリの結果だが、素直に面白いと思えましたよ。マル。
1件のコメント
[C464]
- 2008-05-27
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私も結構、影響を受けました。
しかし、鳥山さんにとってはエヴァでしたか。
私にとってのエスプリとか●●みたいなものですなw
私も日々戦っております。
PS/業務連絡:例のページみました、また連絡します。