王様を欲しがったカエル

　毎年恒例のことだが、冬風邪でノックダウン。３日間ほど貴重な時間を浪費する。その間にも規制推進派の動向は活発で、１２月４日にはシーファー米在日大使が公明党の浜四津敏子代表代行と児童買春・ポルノ禁止法見直しプロジェクトチームと懇談。

　１２月１２日には同じくシーファーによる在京米国大使館主催の児童ポルノ単純所持のセミナーが開催され、やはり前述の公明党議員である松あきらが、来週の国会でこの問題を取り上げることが決定しているという。

　単純所持の法制化という点では、危機的な状況だ。

　で、その間に私がやっていたことといえば、最近になって規制推進派のトップとして活発に活動をしている森田明彦が書いた論文の精読と、同じく規制推進派の筆頭であるＡＰＰ研の杉田聡が書いた『レイプの政治学』の再読、これに平行してやはり規制は筆頭であるエクパットの母胎である『矯風会百年史』の年表再読、執筆が中断しているフィルタリングソフト問題の資料収集……などである。

　ぶっちゃけ、仕事をしている時間、食事をしている時間、寝ている時間、ゲームなどで息抜きしている時間を除く時間のほとんどが資料を読む行為に使われている。お陰様で、勉強嫌いな私の全身には、すでにストレス性発疹が出てきている。でも、これらの文章を読み終えて、問題点を整理したら、文章に起こしてロビイング活動の準備に入らなきゃあかんわけですよ。

　もうね、久しぶりに愚痴を言わせてもらいますよ。精神的に限界だっちゅーの。資料を読むこと自体は苦痛じゃありませんし、人に会うのも苦痛じゃありませんよ。ただ、来年から長編小説を本格的に復活させたいから、その準備に必要な資料にも目を通しておきたいわけですよ。一体、どこにそんな時間があると？

　現状における私の政治関係のコネクションというのは、ネット上でニュース系の情報を一GT掲示板参加者さんとＭＵＤＡＮさんと知人３名が集めてきてくれて、政界に関する情報は３人の知人が提供してくれて、学術系の資料はやはり３人の知人に協力を仰いでいるという状態です。もちろん、全員がロハでやってくれてます。お金にならないから仕方ないとはいえ、他人様をタダでこき使うことに対する後ろめたさは、ちょっとこの場では口に出来ないですよ。

　自分がそういう人達のリンクマン的なポジションに収まっているのは、宗教、国際問題、社会学etcの情報に関するクリティカルな部分を囓っているからで、これは作家という職業上必要な技術や知識が、たまたま状況にマッチしたからに過ぎません。前にも言ったけど、元来クリエーターというのは現実認識能力を犠牲にして創作活動をやっているわけで、私だって必ずしもこうした問題に対して適正な資質を有しているわけじゃない。

　でも、森田明彦が平気で嘘をついてオタク虐めに興じる論理的な背景を解説するためには、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の影響下で、日本の社会学がどんだけ歪曲しているか（これは日本に限った話ではなくて、世界中の社会学がアレなわけですが）を理解している必要があるし、ウェーバーの著書はもちろん、その影響下で理論を構築した丸山眞男、大塚久雄に対する批判も出していかないと駄目なんですよ。

　で、一体それを規制反対派の中で誰がやるのかと？　みんな、興味ないよね？　ホントのことを言うと、私も社会学に興味なんてないですよ。知っていたのは単なる偶然で、ネットで発表した『墜ちる女神』というＳＭ小説のアイデアとして借用するために、ウェーバー、丸山、大塚の順番に本を読んでいっただけの話です。また、その内容が酷いなんてもんじゃない。嘘まみれで、しかもつまらない。同じ嘘なら、最近になって買った『怪物王女』の最新刊の方が１万倍も面白いですよ。

　しかも、「ウェーバーがねぇ……」という愚痴を発した途端に「大塚先生？」と即答してくれた知人はたった１名。この知人はその後も「大塚もウェーバーも内容の真偽言及は回避するんだよね？」と、１００点満点の回答をしてくれたんですけど、彼はバリバリのマルキスト。何というか、知識量と理論武装の程度に関して、かつてのマルキストが高度だった時代があることを思い知らされる。こっちの世界に足を突っ込むようになってから、右翼とも新左翼系の人間とも顔を合わせる機会があり、勉強する気が無いどころか、そもそも論理的な理解能力がどの程度あるのかすら疑わしい現状を目の当たりにしていると、ねぇ……。

　もっとも、私は「学者になって他人から尊敬されたい」とか「批評家になって世間を正しい方向に導きたい」などという承認欲求を持ったことがないので、頭の善し悪しで人付き合いを取捨選択した事も無いんですけど、こういう危機的な状況を前にすると、「アカデミズム関係の知人を増やしておいた方が良かったかなー？」という気持ちにもなるわけですよ。もっとも、対立しているのがアカデミズムならぬ馬鹿デミズムの皆さんだから、どっちが良かったのかは未だに謎ですが。

　まあ、愚痴はここまで。

　現状で、私の手に余っている問題が２つあります。１つは駐日アメリカ大使のトーマス・シーファーの経歴で、日本語版のウィキペディアには「大学在学中に11歳の少年への性的虐待で逮捕された事があるが、証拠不十分として釈放されている」という一文があるんですが、ソースが分かりません。もしも、これが事実だとしたら、シーファーがアメリカにいた時から青少年育成に興味を持っていた理由が分かるんですが……。

　もう１つはフィルタリングソフトに関する情報で、市場占有率の調査をする際に必要な、富士キメラ総研の「2008ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」の入手が困難で、ロビイング活動が停滞しています。原因はこのレポートの価格で、101,850円もしやがります。ちょっと個人で購入するには難しい値段です。図書館などにあれば良いんですけど、この手のものは近場で見つけるのが難しい。

　何とかならないモンですかね？