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紙屋研究所の歪んだ性愛観(1)

1.
 実は、この文章を書く前に、別のブログ用文章を仕上げている最中だったんだけど、マンガ評論系サイトである『紙屋研究所』に、APP研の主要メンバーである杉田聡が書いた『男権主義的セクシュアリティ』の紹介文が載っていることをこのブログのコメント欄で知り、その内容があまりにも酷かったので急遽予定を変更。こっちの文章を先に書き上げることにする。というか、学術界における表現規制派のトップが書いたトンデモ論文に、マンガ評論をやっている人が条件付きとはいえ賛意を示すのはいかがなものか?

 APP研はキャサリン・マッキノンというラディカルフェミニストの主張を理論的な柱とする極左系の反ポルノ団体で、学術系のメンバーが数多く在籍している。このラディカルフェミニズムの主要な理論は、男性を資本家、女性をプロレタリアートに見立て、男性が女性を性的に搾取しているというもので、そこからポルノが性暴力を蔓延させる元凶で、これを根絶すべしという論理的帰結に至るため、APPは表現規制に積極的な態度を見せている。

 で、上記の概要だけ説明すれば、勘のいい人であればすぐ分かるだろうが、実はラディカルフェミニズムの理論は同性愛を想定していない。たとえば、男性が男性に性欲を抱いた場合(実際にそういうことはよくある)、男性=搾取する側、女性=搾取される側という前提が崩れてしまうのだ。だから、最近のラディカルフェミニズムの会合では、同性愛者の参加は禁止されている。また、最近になって発覚したことだが、APP研内部では同性愛の性行為に関しては「マイノリティの閉ざされた社会の中では人権侵害が多発しやすい」という、まったく別途の、しかもやはり間違った説明がなされているようだ。あのー、ナチスとかソ連とか今の中国とか、いわゆる大国でも大規模な人権侵害は多発しているんですけど。正気ですか?

 で、紙屋研究所だ。私はこのサイトを何度も閲覧している。そして、よく言えばイノセンスな、悪く言えば青臭い論旨展開がかなり好きだ。ただし、童貞臭いだけあって恋愛はともかくセックス絡みの話になるとまるで駄目(ちなみに、戦争ネタ、精神病絡みのネタでも同様の現象が発生するが、これは紙屋の知識量が不足しているであろうと想定されるジャンルと被る)で、酷いとしか形容のしようがない評論が飛び出してくる。

 最初にこのことに気付いたのは、ホイチョイ・プロダクションズの『気まぐれコンセプト クロニクル』の書評を読んだ時で、

 この漫画はとにかく下品である。「女を食う」という意識や、支配的な価値観に安易にのっかっているあたりが特に。「質がかわっていない」ということの中には、人権的進歩もない、ということも含まれる。『フジ三太郎』が朝日新聞的良識の仮面の下に男尊女卑を潜伏させていたとすれば、『気まぐれ』はそんな体裁さえとりつくろわぬ、あけすけな下品さがウリである。この漫画は虚構の妄想や欲望漫画ではなく、現実の生活習慣や行動規範に緊密に対応していてタチがわるいのである。ノンフィクションとしての説得力が出てしまうのだ。

 という一文には目が釘付けになった。

 え? リアル? 何が?

 何で私がこう思ったのかというと、実はインターネットが普及しだした当初、ホイチョイのメンバーの一人(敢えて名前は伏す)が、私の知人女性をナンパしようとして送ってきたメールを横流しで読ませてもらっていたからだ。

 これが実に悲しいメールで、「どこどこに美味しいレストランがある」とか「俺は業界関係者に知人がたくさんいる」とか、「うわー、こいつ社会人になるまでモテなかったんだろうなー」という切なさ炸裂の内容。知人女性はメールを転送する際にコメントをつけてきたんだけど、そっちの方はあんまりにも残酷で公開する気がおきませーん。

 ところが、紙屋の書評によると、それらは「行動規範」に対応したものなんだそうである。あのー、一体何の行動規範に対応してるんでしょうか?

 いいですか、紙屋先生。他の地域は知らないけど、少なくとも東京も含めた北関東周辺じゃ、恋愛やセックスに関してイニシアティブを握ってるのは女性の方なんですよ。だから、「据え膳食わぬは男の恥」って言葉があるんですよ。分かりますか? つまり、男性の方から女性に声をかける行為そのものが、そもそも行動規範から逸脱してるんですよ。普通、成人後の男性が女性と性交渉も含む関係になる時には、「ウチにご飯食べに来ない?」って女性から誘われるんですよ。だから「据え膳」って言葉にリアリティがあるんですよ。それとも、紙屋先生は関東在住じゃないんですか?

 それ以前に、飯を奢ったり業界人を紹介したりしないと、女性とお付き合いしてもらえない段階で、そいつはもう女性から「男」として扱われてないんですよ。メールだって他の人間に筒抜けになっちゃうぐらいのカーストなんです。その理由が分かります? というか、ホントにリアルを理解してますか? 『気まぐれコンセプト』は「リアル」じゃないから面白いんですよ。

 要するに、普通にセックスで感じることの出来る女性は、自分の意中の相手じゃない限り、美味しいレストランで奢ってもらっただけで、その男とセックスしようとは思わないんです。だって、美味しいレストランを知っているかどうかと、セックスが上手いかどうかは全然別の話だもん。ということは、ですよ。レストランで飯を食わせてもらった代償としてセックスさせる女性というのは、そもそもセックスが好きじゃないか、肉体的に未成熟な女性かのどっちかの可能性が高いということなんですよ。

 で、ホイチョイの面白ところというのは、そういう女性(ホイチョイ曰く、レベルの高い女!)をわざわざ選んで取っ替え引っ替えしているという行動パターン(←ここは重要)にあるんです。じゃあ、なんで彼らがそういう行動をとるのかと言えば、それは本人も具体的な行為としてのセックスに興味がないか、あるいは「家族サービス」だからですよ。

 「家族サービス」というのは古いエロ本業界の隠語で早漏のことです。サービスでもしなけりゃ、彼女や奥さんに捨てられるぐらいセックスが早く終わっちゃう、という意味ですね。ちなみに、強姦犯とか援助交際が好きな人にも「家族サービス」が含まれる率は高いです。まあ、当然だよね。早かったら、無理矢理やるか子供を相手にするか、餌で釣るぐらいしか選択肢がないし、女性の判断基準も「顔やスタイルの善し悪し」という視覚的な要素に限定されがちだもんな。セックスそのものは「あっという間」なんだから。

 また、ホイチョイの面子自身にも、そういう自覚があるから、「飯を奢ってセックスさせてもらう」という発想が出てくるんですよ。よく言えば自己認識が出来ているってことになるし、悪く言えば被害妄想が強いって事なんですけど。私の知人にも「俺は自分に(男としての)自信がないから、女に奢らないと不安で仕方がないんだーっ!」って絶叫してる男性がいますけど、彼なんかは正直ですよね。

 でも、ホイチョイの作品というのは、そういう点はオープンにしてないんです。だから、ちっともリアルじゃないんですよ。セックスが下手じゃない限りね。また、本人達もその点は了解の上で本を書いているから、そこが彼らの本を読む時の笑いのツボになっているわけです。たとえば、ホイチョイの『東京いい店やれる店』なんかはその典型ですけど、「ここで食事を奢れば、女とセックスできるレストラン」というテーマで、実際にやっていることは当時は最先端だった東京の風俗紹介ですよ。これは、どう考えたって下品な欲望をむき出しにしているんじゃなくて、半分以上は単なる偽悪的な照れ隠しでしょ?

 それを本気にして読むなんて、強姦モノのポルノを見て自分がレイプをするシーンを想像しているキ○ガイと一緒ですよ……って、結論言っちゃった! まあ、いいや。
(続く)

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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
です。★マークを@に変えて使ってね。

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