王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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ところが厄介なことに、精神病に罹患した女性がどの程度の性的暴力を受けたのかは、客観的な物証なり証言がないと判断できません。理由は彼女たちが往々にして性的虐待をねつ造するからです。これは、統合失調症、鬱病のほぼ基本的な病態である被害妄想が引き起こす現象です。
たとえば、或る重度の統合失調症を患った女性は、彼女の家族から依頼を受けて精神病院に(彼女を)移送するためドライバーが室内に侵入した途端に「ぎゃーっ! 犯されるっ!」と叫んで大暴れしてしまいました。これで性的虐待が1カウントになります。本人的には、確かに虐待を受けているわけです。男性に対して極度の被害妄想を抱いている女性であれば、男性が自分に近寄ってきただけで「危害を加えるに違いない」と思うのは当然です。しかし、客観的に見た場合、これは虐待ではありません。
2つめにありがちなのは、「過去の不快な記憶から、性的虐待っぽいものを選択して性的虐待をねつ造してしまう」というもので、これは(3)で説明した、鬱病、統合失調症の特徴の1つである「嫌なことばかり思い出してしまう」という症状と、被害妄想が結びついて起こります。
たとえば、子供の頃に知らないおじさんに声をかけられたのが怖かった、という記憶があったとしましょう。脳が正常に作動している場合は、それは「過去の出来事に過ぎない」と、感情とは切り離して客観的に思い出すことが可能です。しかし、脳に異常が生じた結果として(精神的な、あるいはもっと正確に脳神経的な)苦痛を被っている場合、そのように考えることは困難です。
これも(3)で説明したとおり、彼らの大半は「今、私がこのように苦しいのは、××が悪いせいだ」と「原因探し」、もしくは「悪者探し」をするようになります。この「××」が前世の因縁とか霊的な某になればオカルト系、社会構造が悪いと考えれば社会改革系……と色んな派閥に分かれていくわけですが、比較的女性に目立つ(男性に少ないというわけではありません。念のため)のが性愛系で、「レイプされたからPTSDになった」とか「彼氏に手酷い扱いを受けたから鬱病になった」などと言い出します。もちろん、戦争や大災害など生死の境をさまようような体験をした場合は例外(これはPTSDになることが分かっている)ですが、たいていの主張は虚偽です。精神病の発症が過去のネガティブな記憶を蘇らせているのに、本人達は「原因探し」に躍起になった結果として、「××という事件のせいで、今の私が辛い目に遭っている」と時間軸の逆転をやってしまうわけです。
これに関しては、精神病患者本人に説明が難しく、また正常な人間でも「時系列は合っているじゃないか」となりがちなので、具体的な例を出して説明しましょう。たとえば、以前このブログで取り上げた難治性統合失調症患者ロリ・シラーのケースでは、「過去の失恋の記憶を思い出した」ことが発病のきっかけになっています。つまり、失恋した体験が原因で病気になっているのではなく、失恋した体験を何年も経ってから「思い出した」ことが発病のきっかけになっているんです。
この2つが似て非なるものであることは明らかでしょう。仮に失恋が直接の原因であれば、失恋直後に統合失調症を発症していなければならないんです。ところが、ロリのケースでは、失恋から何年も経ってから当時の記憶を「思い出した」ことが原因なんですね。
ただし、病気になった本人から見ると、この2つには区別がつきません。たとえば、ロリと同じように統合失調症にかかったある女性は「小学校4年生の時に、××君と両思いになれなかったせいで、今の私がこんなに苦しんでいる」と、自分が病気になった原因が、遥か昔の小学生時代の恋愛(?)の失敗にあったと主張しています。
男性だろうが女性だろうが、生きていれば「両思い」になれなかった経験の1つや2つはあるわけで、こんな事が原因で統合失調症を発症してしまうのであれば、日本人の大半は頭の病気です。つまり、彼女の主張は虚偽です。しかし、両思いになれなかった「事実」はあったと思われます。
最悪なのは、そうした病気の原因とされる事実すら存在しない場合、すなわち記憶のねつ造です。日本ではこれを虚偽記憶と呼ぶようで、もっとも有名な例としてアメリカのセラピストが回復記憶療法を行った際に、抑圧されていた性的虐待の記憶が蘇ったとされていた事例が、実はねつ造された記憶であったと発覚した、というものが挙げられます(詳細に関しては、ウィキペディアの虚偽記憶の記事を貼っておくので参照して下さい)。
余談になりますが、記憶回復療法は催眠薬(睡眠薬)を投与した状態で記憶を蘇らせるという非常に危険(睡眠薬が効いている状態では、意識の混濁が起こって現実と幻想の区分が曖昧になる)なもので、アメリカでは2000年以降はこの手法による治療は停止状態であるとされていますが、当然というか何でこんな危険な治療をしていたのかは謎としか言いようがありません。
ただし、薬物の力を借りなくても、正常な精神状態の人間にも記憶のねつ造は頻繁に発生します。この点を鑑みて、精神科医の斉藤学は虚偽記憶の原語であるFalse Memoryを過誤記憶と呼ぶべきだと主張していますが、それなりの根拠があると思われます。
問題なのは、異常な精神状態にある人間が記憶のねつ造を起こすと、その病態の特徴である被害妄想と絡み合ってしまうため、虐待や被害を受けたという偽りのイメージが形成されてしまう、ということです。
これは私が実際に体験した出来事ですが、知人の統合失調症患者が医師に無断で向精神薬の投薬量を減らしたことがあります。ところが、案の定というか減薬の結果として病態が悪化。すると、この知人は自分で自分が飲む薬の量を勝手に減らしてしまったことを忘れてしまい、医師や私を含む周辺の人間が、自分のことを冷たく扱うせいで病気が悪くなったと主張し始めたのです。
これには私もキレて「お前とは薬の種類と量についてしか話をしていない」と突き放しました。幸い、この知人は向精神薬の服用量を元に戻したことで虚偽記憶から回復し、私に謝罪してくれたので一件落着となりましたが、こんなに事態が丸く収まるのはレアケースで、たいていは自分の虚偽記憶の方が正しいと主張して、周囲との関係を悪化させて人間関係を破壊してしまいます。
すると、精神病患者は自身の被害妄想を許容してくれる人間に依存するようになるので、APPやエクパットなど「ポルノは犯罪を助長する」と主張するグループと頭の病人が共依存関係になり、規制を訴えるようになります。これが、我々の目の前にある現実です。
たとえば、或る重度の統合失調症を患った女性は、彼女の家族から依頼を受けて精神病院に(彼女を)移送するためドライバーが室内に侵入した途端に「ぎゃーっ! 犯されるっ!」と叫んで大暴れしてしまいました。これで性的虐待が1カウントになります。本人的には、確かに虐待を受けているわけです。男性に対して極度の被害妄想を抱いている女性であれば、男性が自分に近寄ってきただけで「危害を加えるに違いない」と思うのは当然です。しかし、客観的に見た場合、これは虐待ではありません。
2つめにありがちなのは、「過去の不快な記憶から、性的虐待っぽいものを選択して性的虐待をねつ造してしまう」というもので、これは(3)で説明した、鬱病、統合失調症の特徴の1つである「嫌なことばかり思い出してしまう」という症状と、被害妄想が結びついて起こります。
たとえば、子供の頃に知らないおじさんに声をかけられたのが怖かった、という記憶があったとしましょう。脳が正常に作動している場合は、それは「過去の出来事に過ぎない」と、感情とは切り離して客観的に思い出すことが可能です。しかし、脳に異常が生じた結果として(精神的な、あるいはもっと正確に脳神経的な)苦痛を被っている場合、そのように考えることは困難です。
これも(3)で説明したとおり、彼らの大半は「今、私がこのように苦しいのは、××が悪いせいだ」と「原因探し」、もしくは「悪者探し」をするようになります。この「××」が前世の因縁とか霊的な某になればオカルト系、社会構造が悪いと考えれば社会改革系……と色んな派閥に分かれていくわけですが、比較的女性に目立つ(男性に少ないというわけではありません。念のため)のが性愛系で、「レイプされたからPTSDになった」とか「彼氏に手酷い扱いを受けたから鬱病になった」などと言い出します。もちろん、戦争や大災害など生死の境をさまようような体験をした場合は例外(これはPTSDになることが分かっている)ですが、たいていの主張は虚偽です。精神病の発症が過去のネガティブな記憶を蘇らせているのに、本人達は「原因探し」に躍起になった結果として、「××という事件のせいで、今の私が辛い目に遭っている」と時間軸の逆転をやってしまうわけです。
これに関しては、精神病患者本人に説明が難しく、また正常な人間でも「時系列は合っているじゃないか」となりがちなので、具体的な例を出して説明しましょう。たとえば、以前このブログで取り上げた難治性統合失調症患者ロリ・シラーのケースでは、「過去の失恋の記憶を思い出した」ことが発病のきっかけになっています。つまり、失恋した体験が原因で病気になっているのではなく、失恋した体験を何年も経ってから「思い出した」ことが発病のきっかけになっているんです。
この2つが似て非なるものであることは明らかでしょう。仮に失恋が直接の原因であれば、失恋直後に統合失調症を発症していなければならないんです。ところが、ロリのケースでは、失恋から何年も経ってから当時の記憶を「思い出した」ことが原因なんですね。
ただし、病気になった本人から見ると、この2つには区別がつきません。たとえば、ロリと同じように統合失調症にかかったある女性は「小学校4年生の時に、××君と両思いになれなかったせいで、今の私がこんなに苦しんでいる」と、自分が病気になった原因が、遥か昔の小学生時代の恋愛(?)の失敗にあったと主張しています。
男性だろうが女性だろうが、生きていれば「両思い」になれなかった経験の1つや2つはあるわけで、こんな事が原因で統合失調症を発症してしまうのであれば、日本人の大半は頭の病気です。つまり、彼女の主張は虚偽です。しかし、両思いになれなかった「事実」はあったと思われます。
最悪なのは、そうした病気の原因とされる事実すら存在しない場合、すなわち記憶のねつ造です。日本ではこれを虚偽記憶と呼ぶようで、もっとも有名な例としてアメリカのセラピストが回復記憶療法を行った際に、抑圧されていた性的虐待の記憶が蘇ったとされていた事例が、実はねつ造された記憶であったと発覚した、というものが挙げられます(詳細に関しては、ウィキペディアの虚偽記憶の記事を貼っておくので参照して下さい)。
余談になりますが、記憶回復療法は催眠薬(睡眠薬)を投与した状態で記憶を蘇らせるという非常に危険(睡眠薬が効いている状態では、意識の混濁が起こって現実と幻想の区分が曖昧になる)なもので、アメリカでは2000年以降はこの手法による治療は停止状態であるとされていますが、当然というか何でこんな危険な治療をしていたのかは謎としか言いようがありません。
ただし、薬物の力を借りなくても、正常な精神状態の人間にも記憶のねつ造は頻繁に発生します。この点を鑑みて、精神科医の斉藤学は虚偽記憶の原語であるFalse Memoryを過誤記憶と呼ぶべきだと主張していますが、それなりの根拠があると思われます。
問題なのは、異常な精神状態にある人間が記憶のねつ造を起こすと、その病態の特徴である被害妄想と絡み合ってしまうため、虐待や被害を受けたという偽りのイメージが形成されてしまう、ということです。
これは私が実際に体験した出来事ですが、知人の統合失調症患者が医師に無断で向精神薬の投薬量を減らしたことがあります。ところが、案の定というか減薬の結果として病態が悪化。すると、この知人は自分で自分が飲む薬の量を勝手に減らしてしまったことを忘れてしまい、医師や私を含む周辺の人間が、自分のことを冷たく扱うせいで病気が悪くなったと主張し始めたのです。
これには私もキレて「お前とは薬の種類と量についてしか話をしていない」と突き放しました。幸い、この知人は向精神薬の服用量を元に戻したことで虚偽記憶から回復し、私に謝罪してくれたので一件落着となりましたが、こんなに事態が丸く収まるのはレアケースで、たいていは自分の虚偽記憶の方が正しいと主張して、周囲との関係を悪化させて人間関係を破壊してしまいます。
すると、精神病患者は自身の被害妄想を許容してくれる人間に依存するようになるので、APPやエクパットなど「ポルノは犯罪を助長する」と主張するグループと頭の病人が共依存関係になり、規制を訴えるようになります。これが、我々の目の前にある現実です。
7件のコメント
[C1115]
- 2009-01-29
- 編集
[C1117] 鳥山さん
あーあーあー、過去の言動を思い出すと赤面スルー。
××のせいでとか言ってたのは全部妄想ですう。
いやな記憶はスルーするに限りますよう。
横レスですが
>「被害者を精神病者呼ばわりするなんて!」
というのがまさに差別発言なわけでw
××のせいでとか言ってたのは全部妄想ですう。
いやな記憶はスルーするに限りますよう。
横レスですが
>「被害者を精神病者呼ばわりするなんて!」
というのがまさに差別発言なわけでw
- 2009-01-31
- 編集
[C1120] sugiさん
もう、言ってるんじゃないですかな?
知ったことかと思いますけど。
ちゃんとした治療を受けないで、政治活動に精を出してる方が悪いんですよ。ただ、政治関連に首を突っ込むと、この手合いはうじゃうじゃいますけどね。
知ったことかと思いますけど。
ちゃんとした治療を受けないで、政治活動に精を出してる方が悪いんですよ。ただ、政治関連に首を突っ込むと、この手合いはうじゃうじゃいますけどね。
- 2009-01-31
- 編集
[C1122] Anchangさん
いや、今になって思い出さなくても(困)。
そうそう。話は全然違うんですけど、新作短編を書きましたぜ。今年はこの調子で、4本ぐらい短編を書きためる予定です。
そうそう。話は全然違うんですけど、新作短編を書きましたぜ。今年はこの調子で、4本ぐらい短編を書きためる予定です。
- 2009-01-31
- 編集
[C1124] 新作キター
あいや鳥山さんを困らせるつもりではありませんでした。すみません。
それより新作楽しみですねえ。年内にあと4本もあると聞いたらまとめて読みたくなってしまいますよ。単行本化されるとよいなあ。
それより新作楽しみですねえ。年内にあと4本もあると聞いたらまとめて読みたくなってしまいますよ。単行本化されるとよいなあ。
- 2009-01-31
- 編集
[C1191] Re: 新作執筆おつかれさまです。
いや、これは買って頂かなくて結構です。
mudanさんが悦んでくれそうな作品を書いたら、改めてアナウンスさせていただきます。
その時は、ぜひぜひ。
mudanさんが悦んでくれそうな作品を書いたら、改めてアナウンスさせていただきます。
その時は、ぜひぜひ。
- 2009-02-19
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