王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
Entries
前回の続き。
前回に書いた情報から、崎山伸夫のBlogの崎山氏は、
(1)イギリスの創作物規制法に関わっている、法学部教授のクレア・マックグリンは、ラディカル・フェミニズムのシンパではないのか?
(2)イクォーリティ・ナウはロンドンにも事務所を構えているため、イギリスの法規制と連動して何らかの策動を行っていたのではないか?
と推測している。そして、この推測はほぼ当たっていると思われる。
また、崎山氏、及びに二次元至上主義!のDAI氏が注意を喚起している点だが、マックグリンの主張はエロゲーが犯罪を誘発するか否かにかかわらず、「文化的」な理由で社会から排除すべきだという内容になっている。これはラディカル・フェミニズムに特有の理論で、要するに彼らと「エロゲーはレイプなどの犯罪行為を誘発するか否か?」を議論することに意味はない。対外的に、ラディカルフェミニズム陣営は「エロゲーは性犯罪を誘発する」とコメントはしているものの、仮に誘発していなくとも「文化的な事由」から排除対象であることに何ら変わりがないからだ。
この点に関して、私はこのブログで何度も執拗に指摘しているのだが、規制反対派の一部が「ポルノは犯罪を抑止する」という、いわゆるガス抜き論に固執したために広範囲に広まっていない認識である。つまり、規制推進派の主張する「ポルノ犯罪誘因論」への対抗言説として「ポルノガス抜き論」を持ち出しても、規制推進派は最初からポルノが社会に影響を与えようが与えまいが撲滅するという結論に達しているので、議論として水掛け論になるように誘導されてしまう。
このように、規制推進派と反対派の主張が平行線を辿るのは、第一に規制推進派が社会的なコンセンサスを得やすいう理由で、レイプ作品をフレームアップして、自説を隠蔽している点に加えて、規制反対派の大多数がラディカルフェミニズムの理論書を読んでいないため、彼らの主張がどれだけ狂っているのかを、規制反対活動を通して実感できても、言語化できないという状況が長きにわたって続いていたという理由による。ただし、ボランティアとして規制反対運動に参加しているメンバーに、数千円もする規制推進派のうんざりするような理論書を何冊も読んで、これを理解せよと言うのは負担があまりにも大きいため、現状でこの問題を解決することは難しい。
これらの理論面に関する問題を中心に運営されている数少ないブログが、創作物は理論で性的虐待は実践か?で、キャサリン・マッキノンと関係の深いラディカルフェミニズムへの言及は、「セックス・イクォリティ」の記事で確認できる。http://civilliberties.blog63.fc2.com/blog-entry-61.html
その一部を抜粋すると、以下のようになる。
性的虐待は、もっぱら女にだけ起こり、セックスとして経験される。そのため性的虐待は、セックス・イクォリティについての主流の教義からは排除されてきた」[ibid. 243]。すなわち、性的虐待とは女にとってセックスそのものであるため、それが不平等問題であるとは考慮されてこなかったとマッキノンは言う。
創作物は理論で性的虐待は実践か?のCivilliberties氏は、こうしたマッキノンの主張に対して、
彼らにとっては、「レイプ」でない「セックス」は、じつは存在しえないものです。そのわけは、権力関係の入り込んでいないという意味で「平等」な男女間の性交渉はありえないと彼らが考えているためです。
と端的に要約している。そして、Civilliberties氏の見解がラディカルフェミニズムの理論に対する正しい認識だ。つまり、ラディカルフェミニズムの理論を受け入れた者にとって、大人同士の合意による性行為も「レイプ」なので、「レイプ」を許さない社会を構築する為には、あらゆる性表現は即刻排除すべし、ということになる。原則として例外はないのだ。
(続く)
前回に書いた情報から、崎山伸夫のBlogの崎山氏は、
(1)イギリスの創作物規制法に関わっている、法学部教授のクレア・マックグリンは、ラディカル・フェミニズムのシンパではないのか?
(2)イクォーリティ・ナウはロンドンにも事務所を構えているため、イギリスの法規制と連動して何らかの策動を行っていたのではないか?
と推測している。そして、この推測はほぼ当たっていると思われる。
また、崎山氏、及びに二次元至上主義!のDAI氏が注意を喚起している点だが、マックグリンの主張はエロゲーが犯罪を誘発するか否かにかかわらず、「文化的」な理由で社会から排除すべきだという内容になっている。これはラディカル・フェミニズムに特有の理論で、要するに彼らと「エロゲーはレイプなどの犯罪行為を誘発するか否か?」を議論することに意味はない。対外的に、ラディカルフェミニズム陣営は「エロゲーは性犯罪を誘発する」とコメントはしているものの、仮に誘発していなくとも「文化的な事由」から排除対象であることに何ら変わりがないからだ。
この点に関して、私はこのブログで何度も執拗に指摘しているのだが、規制反対派の一部が「ポルノは犯罪を抑止する」という、いわゆるガス抜き論に固執したために広範囲に広まっていない認識である。つまり、規制推進派の主張する「ポルノ犯罪誘因論」への対抗言説として「ポルノガス抜き論」を持ち出しても、規制推進派は最初からポルノが社会に影響を与えようが与えまいが撲滅するという結論に達しているので、議論として水掛け論になるように誘導されてしまう。
このように、規制推進派と反対派の主張が平行線を辿るのは、第一に規制推進派が社会的なコンセンサスを得やすいう理由で、レイプ作品をフレームアップして、自説を隠蔽している点に加えて、規制反対派の大多数がラディカルフェミニズムの理論書を読んでいないため、彼らの主張がどれだけ狂っているのかを、規制反対活動を通して実感できても、言語化できないという状況が長きにわたって続いていたという理由による。ただし、ボランティアとして規制反対運動に参加しているメンバーに、数千円もする規制推進派のうんざりするような理論書を何冊も読んで、これを理解せよと言うのは負担があまりにも大きいため、現状でこの問題を解決することは難しい。
これらの理論面に関する問題を中心に運営されている数少ないブログが、創作物は理論で性的虐待は実践か?で、キャサリン・マッキノンと関係の深いラディカルフェミニズムへの言及は、「セックス・イクォリティ」の記事で確認できる。http://civilliberties.blog63.fc2.com/blog-entry-61.html
その一部を抜粋すると、以下のようになる。
性的虐待は、もっぱら女にだけ起こり、セックスとして経験される。そのため性的虐待は、セックス・イクォリティについての主流の教義からは排除されてきた」[ibid. 243]。すなわち、性的虐待とは女にとってセックスそのものであるため、それが不平等問題であるとは考慮されてこなかったとマッキノンは言う。
創作物は理論で性的虐待は実践か?のCivilliberties氏は、こうしたマッキノンの主張に対して、
彼らにとっては、「レイプ」でない「セックス」は、じつは存在しえないものです。そのわけは、権力関係の入り込んでいないという意味で「平等」な男女間の性交渉はありえないと彼らが考えているためです。
と端的に要約している。そして、Civilliberties氏の見解がラディカルフェミニズムの理論に対する正しい認識だ。つまり、ラディカルフェミニズムの理論を受け入れた者にとって、大人同士の合意による性行為も「レイプ」なので、「レイプ」を許さない社会を構築する為には、あらゆる性表現は即刻排除すべし、ということになる。原則として例外はないのだ。
(続く)
14件のコメント
[C1428] なぜイクオリティ・ナウは、レイプ推奨映画「ウォッチメン」を叩かないのか?
- 2009-05-24
- 編集
[C1429] 答え:影響とかどーでもいーから
たぶん誘い受けって思うし、本来ノるべきは鳥山さんだが、ちょーど見かけちゃったんでノってみるテスツ。
ラジフェミな皆さんにとって影響力とかどーでもいーんス。その存在自体が許せないんスから。セックスは全てレイプっておツムですからどもならん。
そんなおツムの連中にとって、社会はすでに腐り果てているワケで、今さら影響もクソもないのよね。
さて、たしかにラジフェミはイカれてます。セックスすなわち子作り。他は一切認めん、オナニーもアカンちう十字な皆さんと同じくらいイカれてます。
でも、セックス=レイプだったのって日本でもそんな昔の話じゃない事実は確かにあって、ドコとまでは言わんが国によっちゃ今でも現実ってのがアイタタ。
どーにかなるにはホントに生殖を機械化できるまでお預けなんだろうな。避妊だけじゃやっぱ足らんヨ。ワシらみんな結局女の股から産まれてきたって根っこは変えられないんだからサ。
問題は「ヤツらはたしかにおかしーけど、ヤツらの主張(要するに規制ね)はエエんでね?」な層がきっと一番多数派じゃないのかって気がすること。
未だ妙案浮かばず。さて、どーすべ。
ラジフェミな皆さんにとって影響力とかどーでもいーんス。その存在自体が許せないんスから。セックスは全てレイプっておツムですからどもならん。
そんなおツムの連中にとって、社会はすでに腐り果てているワケで、今さら影響もクソもないのよね。
さて、たしかにラジフェミはイカれてます。セックスすなわち子作り。他は一切認めん、オナニーもアカンちう十字な皆さんと同じくらいイカれてます。
でも、セックス=レイプだったのって日本でもそんな昔の話じゃない事実は確かにあって、ドコとまでは言わんが国によっちゃ今でも現実ってのがアイタタ。
どーにかなるにはホントに生殖を機械化できるまでお預けなんだろうな。避妊だけじゃやっぱ足らんヨ。ワシらみんな結局女の股から産まれてきたって根っこは変えられないんだからサ。
問題は「ヤツらはたしかにおかしーけど、ヤツらの主張(要するに規制ね)はエエんでね?」な層がきっと一番多数派じゃないのかって気がすること。
未だ妙案浮かばず。さて、どーすべ。
- 2009-05-25
- 編集
[C1432] ゲッターピジョンさん
一応、ざっとですが、イクォーリティ・ナウがウオッチメンを批判しているかどうか検索してみたんですけど、ちょっと見つかりませんでした。
まあ、あの名作にイチャモンつけたら、米国本国のマニアから袋だたきされるのは火を見るよりも明らかですけどね。個人的には、映画化を期に一人でも多くの日本人にこの作品を知ってもらいたいとは思います。
特に、アメコミを馬鹿にしているくせに、日本のマンガしか読んでないドメスティックなアホには、こいつに目を通しておけって気にはなりますね。
まあ、あの名作にイチャモンつけたら、米国本国のマニアから袋だたきされるのは火を見るよりも明らかですけどね。個人的には、映画化を期に一人でも多くの日本人にこの作品を知ってもらいたいとは思います。
特に、アメコミを馬鹿にしているくせに、日本のマンガしか読んでないドメスティックなアホには、こいつに目を通しておけって気にはなりますね。
- 2009-05-25
- 編集
[C1433] 電気屋さん
いや、その、先生。理性的に考えすぎです。
一応、(3)であっちの理論書の一部を引用しましたから、それを参考に態度を再考していただけませんか? 私は誇張表現で規制推進派が狂っていると言っているんじゃなくて、本当に、字義通りの意味で狂っていると言っているんですよ。
一応、(3)であっちの理論書の一部を引用しましたから、それを参考に態度を再考していただけませんか? 私は誇張表現で規制推進派が狂っていると言っているんじゃなくて、本当に、字義通りの意味で狂っていると言っているんですよ。
- 2009-05-25
- 編集
[C1436] ウォッチメン
アラン・ムーアが映画の出来にまた激怒しているそうです。
イカを出さなかったから?w
私は一本の映画として手堅くまとめてあると思ったのですが、ムーアだけでなく
コアな原作ファンの方々にも批判されてますね・・・・。
イカを出さなかったから?w
私は一本の映画として手堅くまとめてあると思ったのですが、ムーアだけでなく
コアな原作ファンの方々にも批判されてますね・・・・。
- 2009-05-25
- 編集
[C1437]
>鳥山氏・電気屋氏
この手のラディカルフェミニストがいかに「狂っている」かが端的に分かる記事がこちらです。(既にご存知でしたらすみません)
ポルノ消費者の女性は犠牲者であるという話
http://d.hatena.ne.jp/samoku/20090523#p1
私自身も、恥ずかしながら検閲派と呼ばれるフェミニストの理論書をきちんと読んでいませんでしたので、この記事を読んで絶句しました。既に「勝手に犠牲者扱いするんじゃねぇ、ふざけんな」という女性からの(当然の)反応も出ています。
女=犠牲者という図式に反発する
http://d.hatena.ne.jp/nagano_haru/20090524/1243167545
この手のラディカルフェミニストがいかに「狂っている」かが端的に分かる記事がこちらです。(既にご存知でしたらすみません)
ポルノ消費者の女性は犠牲者であるという話
http://d.hatena.ne.jp/samoku/20090523#p1
私自身も、恥ずかしながら検閲派と呼ばれるフェミニストの理論書をきちんと読んでいませんでしたので、この記事を読んで絶句しました。既に「勝手に犠牲者扱いするんじゃねぇ、ふざけんな」という女性からの(当然の)反応も出ています。
女=犠牲者という図式に反発する
http://d.hatena.ne.jp/nagano_haru/20090524/1243167545
- 2009-05-25
- 編集
[C1448] 鳥山仁さん
いつも楽しく拝見させていただいております。
ラディカル・フェミニストは、彼らの「理想」に狂っているというべきか、それとも彼らの「理想」が狂っているというべきか。たぶん双方なのでしょうね。純粋で、まっすぐな人たちには違いないのでしょうけど。
ラディカル・フェミニストは、彼らの「理想」に狂っているというべきか、それとも彼らの「理想」が狂っているというべきか。たぶん双方なのでしょうね。純粋で、まっすぐな人たちには違いないのでしょうけど。
- 2009-05-27
- 編集
[C1450] CBTさん
監督がザック・スナイダーだからだと思いますよ。
絵面がよければ、それで良いという理由で選ばれたんでしょうけど、それで正解だと思います。
それにしても、去年から今年はアメコミ映画化の大当たりの年で、個人的にはウハウハでした。一番良かったのは、アイアンマンですかね? オープニングがAC/DCで、エンディングがブラックサバスのアイアンマン! 制作者は、よーく観客のことを分かってますよね。キャスティングも素晴らしかったなぁ。
絵面がよければ、それで良いという理由で選ばれたんでしょうけど、それで正解だと思います。
それにしても、去年から今年はアメコミ映画化の大当たりの年で、個人的にはウハウハでした。一番良かったのは、アイアンマンですかね? オープニングがAC/DCで、エンディングがブラックサバスのアイアンマン! 制作者は、よーく観客のことを分かってますよね。キャスティングも素晴らしかったなぁ。
- 2009-05-27
- 編集
[C1452] Civillibertiesさん
学術系の人間にありがちですが、フィールドワークをせずに抽象論と個人体験のみで理論構築をすれば、自ずから結論を間違えます。
社会学の大半は、この手の理論で埋め尽くされており、実経験の少ない学生が騙され、更にそいつらが社会経験を経ずに教職に就く、というサイクルで嘘が継承されていくんですよね。その代表的なモノが、アパルトヘイトだったりするんですが。
社会学の大半は、この手の理論で埋め尽くされており、実経験の少ない学生が騙され、更にそいつらが社会経験を経ずに教職に就く、というサイクルで嘘が継承されていくんですよね。その代表的なモノが、アパルトヘイトだったりするんですが。
- 2009-05-27
- 編集
[C1458] 鳥山仁さん
なるほど、そういった、ある意味で「クリーン」な環境そのものが、オブセッシブな思い込みが治癒される機会に接することの妨げになっているのでしょうね。
- 2009-05-28
- 編集
[C1475]
「アイアンマン」は初日に観に行きました。
直球ド真ん中の選曲も最高ですが、無茶苦茶楽しそうに演じていたダウニーJRが本当に素晴らしかったです。
また、前作ではイタズラ電話に精を出していた(涙)フランクが、やっと改心して殺しまくる様になった「パニッシャー」の三作目も良い出来だと聞いていたのですが、あっと言う前に上映が終了してしまいました・・・・。
日本じゃ知名度ないですからねぇ・・・・。
直球ド真ん中の選曲も最高ですが、無茶苦茶楽しそうに演じていたダウニーJRが本当に素晴らしかったです。
また、前作ではイタズラ電話に精を出していた(涙)フランクが、やっと改心して殺しまくる様になった「パニッシャー」の三作目も良い出来だと聞いていたのですが、あっと言う前に上映が終了してしまいました・・・・。
日本じゃ知名度ないですからねぇ・・・・。
- 2009-05-29
- 編集
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1件のトラックバック
[T48] 彼らを電波と罵るべきか? 表現規制問題について
表現規制反対の論陣を張る人々の中で、イクオリティ・ナウやラジカルフェミニストについての言及が増えてきています。文化的ガス室としての「二次エロ」禁止論(創作物は理論で性的虐待は実践か?)イリュージョンの『レイプレイ』バッシングが相当酷いことになってきた。(
- 2009-05-26
- 発信元 : 北へ。の国から
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さて、ネタバレを含むのですが、映画「ウォッチメン」は、
「仲間にレイプされかけた女性が、後に自らその男性の元に赴き、性交渉を持ち、出産する」
と言う内容を含んでおります。
(原作コミックも同様)
私は、影響力の多寡から言うと、イクオリティ・ナウは、「ウォッチメン」の方を先に叩くべきだと思います。「レイプレイ」よりも。