王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
Entries
今日は第7回東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取対策に関するセミナーを傍聴。詳細に関しては、後日に報告します。
これは愚痴になるけど、こういう政治的な活動にはお金は出ないので、時間的に自分の仕事を圧迫するため、精神的には疲弊する。会社に戻ってきて、すぐさま撮影の準備をしていると、さすがに嫌になってきたので、別の理由で仕事が嫌な先輩編集者と音楽的な話で歓談。
先輩編集者は、とにかくブルース(ブルーズが正確な言い方らしいけど知ったことか)やブルースロックが大好き。いわゆる「黒い」音楽に傾倒しているタイプである。一方の私はブギー、ファンク、そしてテクノとワンパターンな進行を延々と繰り返す音楽が好きなタイプ。私の場合、同じ「黒い」音楽でも、よりアフリカンな傾向が強い。どちらにも共通しているのは、西洋の教会音楽をベースにしたクラッシック、つまり機能和声が成立する以前の作曲法で作られた曲が好きではない、という点だ。
この辺は西洋史と作曲法の関連性について語らなければならないし、語っていたらどんだけ時間がかかるか分からないから割愛するけど、極論すれば機能和声という音楽理論が成立する以前にタブーとされた、対斜を避けて作られた曲が好きかどうかで、クラッシックに親和性があるかどうかが、ある程度決まってしまうのだ。対斜に関しては、素晴らしい説明をしているサイトがあったので、こちらを参照して頂きたい。
そして、このサイトにあるように、宗教的混乱が原因で教会音楽の歴史的遺産を失ったイングランドの作曲家たちは、タブーとされた対斜を作曲に多用していった結果、いわゆるクラッシックから遊離した作曲センスを身につけていき、最終的にこれがブルー・ノート・スケールとなり、彼らの一部がアメリカに移住した際に奴隷として使役していた黒人に伝播してブルースやジャズに発展していったらしい。
つまり、教会音楽の蓄積が散逸しなかったイタリア、ドイツ、フランスではクラッシックはこれらの文化資産をベースに発展していったのに対して、イングランドは「そんなの知ったことか」と、ブルースやロックに逝っちゃったわけだ。現実問題として、クラッシックにそれほど詳しくない人間に、著名なクラッシックの作曲家を挙げさせても、イギリス出身の作曲家の名前はほとんど出てこないだろう。私もぜんぜん出てこない。また、これに加えて、イギリス、アメリカ以外のヨーロッパ諸国からは、まともなロックバンドが滅多に出てこないのは、ブルー・ノート・スケール発祥のより決定的な証拠ではないか?
じゃあ、イギリス産のブルー・ノート・スケールが、何で黒人音楽のルーツのように扱われているかというと、これはスケールの問題と言うよりも演奏法の問題、つまりバウンスとかシャッフルと呼ばれるリズムパターンを使うか使わないかの違いだろう。
シャッフルは1つの拍を3つに分けて、2つめ、つまり真ん中の音を抜いて演奏することでリズム感を出すことをベースとした演奏法(バリエーションが幾つかある)で、これはクラッシックではあまりお目にかからない。というか、クラッシックでこれをやったら雑音としか受け取られないだろうし、実際にクラッシック好きはシャッフルの音を聞くと「雑音だ!」と断言する場合が多い。以前にも書いたが、アフリカの打楽器の演奏法にポリリズムというのがあり、シャッフルの感覚はこれに近い。というか、たぶん同じだ。
シャッフルは、本来ギターの演奏向きの技術だから、ギターの演奏例を出して解説すべきなんだろうけど、ピアノでの演奏を聴くとどれだけクラッシックと違うのかが分かるので、典型的なブギーの曲を挙げておく。
ちなみに、ピアノによるブギーの演奏技術の解説はこれ。この解説も素晴らしいです。
じゃあ、私と先輩編集者のどこが決定的に違うのかというと、私は同じパターンの進行に対して脅迫的にこだわるのに対して、先輩編集者はブルー・ノート・スケールをベースとしたメロディラインに愛着を持っている点にある。ぶっちゃけ、私は和音進行なんてどーでもいいのである。同じパターンがシャッフルで延々と繰り返されていさえすれば、それで満足なのだ。
ワンパターンだって? それで結構。そういうわけで、究極のワンパターンバンド、AC/DCの新譜がついに出た。当分は、もうこの曲しか聴かないつもりだ。
ああ、いいねぇ。これを聴いてると、心が洗われるよ。ずっと同じって大事だよな(←違います。ただの強迫観念です)。
これは愚痴になるけど、こういう政治的な活動にはお金は出ないので、時間的に自分の仕事を圧迫するため、精神的には疲弊する。会社に戻ってきて、すぐさま撮影の準備をしていると、さすがに嫌になってきたので、別の理由で仕事が嫌な先輩編集者と音楽的な話で歓談。
先輩編集者は、とにかくブルース(ブルーズが正確な言い方らしいけど知ったことか)やブルースロックが大好き。いわゆる「黒い」音楽に傾倒しているタイプである。一方の私はブギー、ファンク、そしてテクノとワンパターンな進行を延々と繰り返す音楽が好きなタイプ。私の場合、同じ「黒い」音楽でも、よりアフリカンな傾向が強い。どちらにも共通しているのは、西洋の教会音楽をベースにしたクラッシック、つまり機能和声が成立する以前の作曲法で作られた曲が好きではない、という点だ。
この辺は西洋史と作曲法の関連性について語らなければならないし、語っていたらどんだけ時間がかかるか分からないから割愛するけど、極論すれば機能和声という音楽理論が成立する以前にタブーとされた、対斜を避けて作られた曲が好きかどうかで、クラッシックに親和性があるかどうかが、ある程度決まってしまうのだ。対斜に関しては、素晴らしい説明をしているサイトがあったので、こちらを参照して頂きたい。
そして、このサイトにあるように、宗教的混乱が原因で教会音楽の歴史的遺産を失ったイングランドの作曲家たちは、タブーとされた対斜を作曲に多用していった結果、いわゆるクラッシックから遊離した作曲センスを身につけていき、最終的にこれがブルー・ノート・スケールとなり、彼らの一部がアメリカに移住した際に奴隷として使役していた黒人に伝播してブルースやジャズに発展していったらしい。
つまり、教会音楽の蓄積が散逸しなかったイタリア、ドイツ、フランスではクラッシックはこれらの文化資産をベースに発展していったのに対して、イングランドは「そんなの知ったことか」と、ブルースやロックに逝っちゃったわけだ。現実問題として、クラッシックにそれほど詳しくない人間に、著名なクラッシックの作曲家を挙げさせても、イギリス出身の作曲家の名前はほとんど出てこないだろう。私もぜんぜん出てこない。また、これに加えて、イギリス、アメリカ以外のヨーロッパ諸国からは、まともなロックバンドが滅多に出てこないのは、ブルー・ノート・スケール発祥のより決定的な証拠ではないか?
じゃあ、イギリス産のブルー・ノート・スケールが、何で黒人音楽のルーツのように扱われているかというと、これはスケールの問題と言うよりも演奏法の問題、つまりバウンスとかシャッフルと呼ばれるリズムパターンを使うか使わないかの違いだろう。
シャッフルは1つの拍を3つに分けて、2つめ、つまり真ん中の音を抜いて演奏することでリズム感を出すことをベースとした演奏法(バリエーションが幾つかある)で、これはクラッシックではあまりお目にかからない。というか、クラッシックでこれをやったら雑音としか受け取られないだろうし、実際にクラッシック好きはシャッフルの音を聞くと「雑音だ!」と断言する場合が多い。以前にも書いたが、アフリカの打楽器の演奏法にポリリズムというのがあり、シャッフルの感覚はこれに近い。というか、たぶん同じだ。
シャッフルは、本来ギターの演奏向きの技術だから、ギターの演奏例を出して解説すべきなんだろうけど、ピアノでの演奏を聴くとどれだけクラッシックと違うのかが分かるので、典型的なブギーの曲を挙げておく。
ちなみに、ピアノによるブギーの演奏技術の解説はこれ。この解説も素晴らしいです。
じゃあ、私と先輩編集者のどこが決定的に違うのかというと、私は同じパターンの進行に対して脅迫的にこだわるのに対して、先輩編集者はブルー・ノート・スケールをベースとしたメロディラインに愛着を持っている点にある。ぶっちゃけ、私は和音進行なんてどーでもいいのである。同じパターンがシャッフルで延々と繰り返されていさえすれば、それで満足なのだ。
ワンパターンだって? それで結構。そういうわけで、究極のワンパターンバンド、AC/DCの新譜がついに出た。当分は、もうこの曲しか聴かないつもりだ。
ああ、いいねぇ。これを聴いてると、心が洗われるよ。ずっと同じって大事だよな(←違います。ただの強迫観念です)。
9件のコメント
[C829]
- 2008-10-31
- 編集
[C830]
鳥山さん>
えー、鳥山さんテクノ番長だんたんですかー!?
http://picnic.to/~funuke/buttobi2/techno/techno04.html
それはそうと、クラシック好きな人がクラシック以外の音楽に否定的な理由がわかりましたよ。なるほど、雑音にしか聞こえないんじゃあねえ。
とは言いつつ、私もクラシックは好むのでありまして、しかもメロディ重視なんでw
普段はこんなの聞いてます。鳥山さん好みでは、ないですねえ。
http://jp.youtube.com/watch?v=9JN_s6c3Vo0
えー、鳥山さんテクノ番長だんたんですかー!?
http://picnic.to/~funuke/buttobi2/techno/techno04.html
それはそうと、クラシック好きな人がクラシック以外の音楽に否定的な理由がわかりましたよ。なるほど、雑音にしか聞こえないんじゃあねえ。
とは言いつつ、私もクラシックは好むのでありまして、しかもメロディ重視なんでw
普段はこんなの聞いてます。鳥山さん好みでは、ないですねえ。
http://jp.youtube.com/watch?v=9JN_s6c3Vo0
- 2008-10-31
- 編集
[C831]
ジャズは黒人のものだと信じていたのに……ジャズも好きです。
アメリカの民族音楽というとカントリーミュージックですがこれもルーツはアイルランド民謡だそうです。
対斜は解説がピンとこないのは譜が読めないからかなぁ。サティが教会旋法で作曲してたぐらいしか関連知識がないです。
クラッシックだとドイツ・ロシアのイメージです。オペラは聴かないのでイタリアは失念してました。
イギリスの作曲家は「威風堂々」のエルガーと「惑星」のホルストぐらいですね。アメリカ人はギリでガーシュウィンがいるんですけど作風はジャズ気味なので微妙。
AC/DC知らないけど聞いた感じからしてやっぱり古くから活動してるバンドなんですね。同じパターンというとトランスとかエレクトロニカ系も好きなんですか?
モーツァルトが曲想豊かなのに対してベートーヴェンは同じモチーフを延々繰り返していたため「発想が貧困」と言われてましたが、単に繰り返しが好きなだけだったのかも。
アメリカの民族音楽というとカントリーミュージックですがこれもルーツはアイルランド民謡だそうです。
対斜は解説がピンとこないのは譜が読めないからかなぁ。サティが教会旋法で作曲してたぐらいしか関連知識がないです。
クラッシックだとドイツ・ロシアのイメージです。オペラは聴かないのでイタリアは失念してました。
イギリスの作曲家は「威風堂々」のエルガーと「惑星」のホルストぐらいですね。アメリカ人はギリでガーシュウィンがいるんですけど作風はジャズ気味なので微妙。
AC/DC知らないけど聞いた感じからしてやっぱり古くから活動してるバンドなんですね。同じパターンというとトランスとかエレクトロニカ系も好きなんですか?
モーツァルトが曲想豊かなのに対してベートーヴェンは同じモチーフを延々繰り返していたため「発想が貧困」と言われてましたが、単に繰り返しが好きなだけだったのかも。
- 2008-11-01
- 編集
[C833] 829さん
れ、レニー・トリスターノが好きなんですか?
渋いというか、変人好きというか、ロックで言うならフランク・ザッパ好きと一緒ですな。ただ、この人は前世紀のミュージシャンに共通した身体的特徴、つまり全盲で、この点ではトラディショナルな存在なんですよね。同じビートにこだわると言っても、私にはここまで繊細な感覚はナッシングで、ただただ脱帽するしかありません。
渋いというか、変人好きというか、ロックで言うならフランク・ザッパ好きと一緒ですな。ただ、この人は前世紀のミュージシャンに共通した身体的特徴、つまり全盲で、この点ではトラディショナルな存在なんですよね。同じビートにこだわると言っても、私にはここまで繊細な感覚はナッシングで、ただただ脱帽するしかありません。
- 2008-11-02
- 編集
[C834] Anchang さん
前にも書きましたけど、ファンクの延長であるデトロイトテクノは好きだったりします。ただ、実はヨーロッパのテクノもモータウンサウンドの影響を受けているので、実体はそれほど変わりはなかったりするんですけど。
ラプソディは、確かに聴かないなぁ。イタリアン・メタルというジャンルを確立した点は評価対象ですけど、ロックとしては真面目すぎなんですよね。正座して聴きたくなっちゃう感じですか?
ラプソディは、確かに聴かないなぁ。イタリアン・メタルというジャンルを確立した点は評価対象ですけど、ロックとしては真面目すぎなんですよね。正座して聴きたくなっちゃう感じですか?
- 2008-11-02
- 編集
[C835]
鳥山さん
うーん、トリスターノ、音楽的にはそんなに変じゃないと思いますよ。ただ、「メエルストルムの渦」という地雷源的なアルバムがあるのでそれを最初に聞いちゃった人は受け付けなくなるのかも。
変人なのは同意で、孤高の姿勢を貫いた結果、共演者がいなくなり、行き着く先がレガートオンリーのドラムとのデュオでした。
http://jp.youtube.com/watch?v=FQZxUwpVQPo
あと、全盲なのは酒を飲みすぎたせいではないのでそこはトラディショナルではないかも(お
うーん、トリスターノ、音楽的にはそんなに変じゃないと思いますよ。ただ、「メエルストルムの渦」という地雷源的なアルバムがあるのでそれを最初に聞いちゃった人は受け付けなくなるのかも。
変人なのは同意で、孤高の姿勢を貫いた結果、共演者がいなくなり、行き着く先がレガートオンリーのドラムとのデュオでした。
http://jp.youtube.com/watch?v=FQZxUwpVQPo
あと、全盲なのは酒を飲みすぎたせいではないのでそこはトラディショナルではないかも(お
- 2008-11-02
- 編集
[C836]
鳥山さん>
>正座して聴きたくなっちゃう感じですか?
あー、まあ確かに。オケを入れた時点でそんな感じになっちゃいますね。インテリっぽさが演出されちゃうというかなんというか。シンフォニック・メタルって大概そんな感じですけど。クラシックへの親和性の問題もあるかな。
でも本当にクラシック好きな人はメタルってだけで聞きませんけどねw
いえ、他人の趣味を批判してるわけではありません。好きなものを聞けばいいだけです、はい。
>正座して聴きたくなっちゃう感じですか?
あー、まあ確かに。オケを入れた時点でそんな感じになっちゃいますね。インテリっぽさが演出されちゃうというかなんというか。シンフォニック・メタルって大概そんな感じですけど。クラシックへの親和性の問題もあるかな。
でも本当にクラシック好きな人はメタルってだけで聞きませんけどねw
いえ、他人の趣味を批判してるわけではありません。好きなものを聞けばいいだけです、はい。
- 2008-11-02
- 編集
[C837] ありょーしゃさん
実はジャズの歴史に関してそれほど詳しくないので、幾つかサイトを巡って調べてみたんですけど、かなり初期から白人ジャズプレーヤーが多数存在してますね。むしろ、クロスオーバー文化の典型で、白人ジャズマンの方がスウィングに傾倒していたりします。肌の色はあんまり関係ないんじゃないでしょうか?
対斜に関してもっと分かり易いサイトがないかと探してみたんですけど、ちょっと見つかりませんでした。
トランスは好きですけど、傾倒するほどではないです。機能音楽(?)に近い感覚ですね。ベートーベンはエリーゼのためにとトルコ行進曲が好きですが、やっぱり同じフレーズの反復が目立ちます。要するに、クラッシックでも反復が強調されていれば喜んで聴くってことです。
我ながら、自分の強迫観念の強さには呆れてモノも言えません。
対斜に関してもっと分かり易いサイトがないかと探してみたんですけど、ちょっと見つかりませんでした。
トランスは好きですけど、傾倒するほどではないです。機能音楽(?)に近い感覚ですね。ベートーベンはエリーゼのためにとトルコ行進曲が好きですが、やっぱり同じフレーズの反復が目立ちます。要するに、クラッシックでも反復が強調されていれば喜んで聴くってことです。
我ながら、自分の強迫観念の強さには呆れてモノも言えません。
- 2008-11-04
- 編集
[C849]
鳥山さん>
えー、デスマーチ中すみません。
まったく関係ないのですが、TEAMねこかんの「クリアまでは眠らない!」が曲の感じが初期のXjapanにすごく似てる気がするのは私だけでしょうか?w
こんなのでも聞いてなごめたらよろしいのですが。
http://jp.youtube.com/watch?v=EG_GnjntufY
えー、デスマーチ中すみません。
まったく関係ないのですが、TEAMねこかんの「クリアまでは眠らない!」が曲の感じが初期のXjapanにすごく似てる気がするのは私だけでしょうか?w
こんなのでも聞いてなごめたらよろしいのですが。
http://jp.youtube.com/watch?v=EG_GnjntufY
- 2008-11-16
- 編集
コメントの投稿
0件のトラックバック
- トラックバックURL
- http://toriyamazine.blog.2nt.com/tb.php/177-2ac8dc6e
- この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
これはガチで対斜だったんですねー。
勉強になります。
http://www.shoshinsha.com/piano/pianoChord_F7+9.html
リズムに関してはメロディが基本のビートに対して
少し遅れるのが好きです。
http://jp.youtube.com/watch?v=cByCF2IQQWU&NR=1