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文章の善し悪しをジャッジする基準・後編1

 これに対して、文章末尾のバリエーションが豊富なのは単純一人称です。これは、一人称文体における助動詞の活用形が(その一人称を語る)主人公の人格表現に関わるためで、文末が無味乾燥なイメージを抱かせないからです。

 という堅苦しい書き方をしても、やっぱりわけが分からないでしょうから、具体例を並べていきましょう。

鳥山は馬鹿だった。

鳥山って馬鹿だったのよ。

鳥山は馬鹿だったんです。

鳥山は馬鹿だったんですね。

鳥山は馬鹿でした。

鳥山は馬鹿でしたわ。


 こんな感じで、末尾の変化が(一人称の)語り手のキャラクター性を表現していることが、お分かりいただけると思います。それぞれの例が、どんなキャラクターの正確を描写しているかに関しては、ここでは説明しません。各人で想像して下さい。

 ただし、バリエーションが豊富と言っても、これは複数の作品を並べてみた場合にバリエーションが豊富であるという話で、1つの作品に限ると文末はおろか一人称代名詞すら固定されているのが単純一人称の特徴です。これは、日本語の一人称代名詞が、文末と同様に語り手の性格や社会的地位を表現(あるいはパターン化)しており、なおかつそのバリエーションが豊富なためで、たとえば、

俺は鳥山仁だ。

私は鳥山仁です。

僕は鳥山仁です。


 では、読者に与える印象が異なってきます。
 しかし、単純一人称でも「言い換え」の問題は残り、しかも一人称三人称に比較するとAというキャラクターからBという別キャラクターへのシーン転換も期待できず、更に一人称が固定されている状況では、かなりトリッキーな文章の書き方をしない限り、

僕は~だった。

 というワンパターンな文章が延々と続くことになりかねません。
 そこで、単純一人称の場合、目立って使われるのが「省略」です。単純一人称の場合、語り部=主人公というが強固なので、文章上に提示する情報をある程度削除しても、文意が通じるという利点があるため、一人称三人称や三人称一人称に較べると省略技術が使いやすいのです。そして、単純一人称を用いた小説で使われる省略は、大まかに分けて人称名詞、人称代名詞の省略と、助動詞、動詞の省略の2種類になります。
 これも、具体的に文章を例示することで説明していきましょう。

省略1)

 俺の名前は鳥山仁。
 職業は作家。
 好きなものは煙草。
 一日に六十本は吸わないと落ち着かない。日夜絶え間なく襲いかかってくるストレスのせいだ。
 今日も仕事場にA書店の編集から電話がかかってきて、
「鳥山さん。十二月に出版する本のタイトル、明日までに考えておいて」
 などと無体なことを要求する。
 そんなこと、お前が決めろと心の中では思うものの、こちらはしがない零細文筆業。相手が目の前にいるわけでもないのに、何故か胸を張って明るい調子で、
「はい! 明日までですね! 売れるようなタイトルを考えておきます」
 と答えてしまう。


 と言う感じです。

 これを、前半の文章だけでも省略した部分を元に戻すと、

 俺の名前は鳥山仁だ。
 俺の職業は作家だ。
 俺の好きなものは煙草だ。
 俺は一日に六十本の煙草を吸わないと落ち着かない。俺には日夜絶え間なく、ストレスが襲いかかってくるからだ。


 となり、人称代名詞の「俺」と文章末尾の「だ」が反復して使用されているので、とても読めたものではありません。

 そこで、省略の技術が威力を発揮してくるのですが、人称の省略はあくまでも単純一人称が大前提。たとえば、一人称三人称や三人称一人称のように、複数の登場人物の視点に沿って物語が展開することが前提の形式では、人称を頻繁に省略してしまうと一体誰が何をしているのかが分からなくなり、混乱が生じるおそれが高くなります。

 これに対して、助動詞、及びに動詞の省略は、単純一人称、一人称三人称を問わず使用可能な技術ですが、過去形を多用する文章スタイルでは、助動詞や動詞を省略し、体言(名詞)を文末に持ってくる技法、すなわち体言止めは、時制が過去と非過去しかない日本語では、非過去形に「読める」ために使い勝手が悪く、これを多用していると文章中に占める非過去形の割合が高くなったような形式になり、文章全体が状況説明をしているニュアンスを帯びるというデメリットがあります。これも、具体例でやってみましょう。

省略2)

 彼の名前は鳥山仁。
 職業は作家。
 好きなものは煙草で、一日に消費する本数は六十本を超える。日夜絶え間なく襲いかかってくるストレスのせいだ。


 これなんかは、典型的な一人称三人称の文体ですが、時制が曖昧なために全く時間が進行していないように読めますよね? でも、これが単純一人称の場合は主人公の心理描写、もしくは内心吐露になるので、読者には主人公の脳内で展開される状況説明として読まれるために、実時間の経過は問題にされないわけです。

 そこで、助動詞や動詞を省略した文章は、やはり単純一人称で使用される傾向が強くなります。

 このことも実地で検証すべく、ライトノベルの文庫を某書店で片端から漁ったんですけど、一人称三人称と比較すると、このスタイルで文章を構成している作品の数が少なく、複数の文庫からチェックすることになりました。で、その結果なんですが、こちらも大半の作品が一定の水準をクリアしていました。

 つまり、ですね。現在発売されているライトノベルの大半は、商業的に一定の水準をクリアしていると言うことなんです。

 じゃあ、何で電気屋さんのような古くからの本読みが、今の小説群に文句を言っているのかというと、これはご本人が語っているように描写文、特に情景描写の文章が極端に少ないからです。ただし、その理由は電気屋さんが考えているのと全く違います。

 文章の善し悪しをジャッジする基準・前編で説明したように、日本ではヘミングウェイ的な心理描写排除の文章形式は定着せず、大半の作家はロマン主義の影響下から逃れられませんでした。この段階で、英米文学と比較すると文章の練習方法が決定的に違ってきてしまったんです。

 これは「適語検索」という文章鍛錬法で、この技法を広めたのはエズラ・パウンドというアメリカの詩人でして、皮肉なことに彼がこの技法を完成させたのは日本文学の研究・翻訳からでした。これを、ヘミングウェイが模倣して小説に応用したのが心理描写排除のための基礎技術になったんです。

 それでは、どうしてパウンドはこの技法を開発せざるを得なかったのかというと、話が長くなるので割愛しますが、要するに英米文学に古くからある古典的な言い回しでは、日本文学を翻訳することが不可能だったからです。正確には、パウンドは古典的な英米文学の言い回しを使いたくなかったために日本文学の研究をやったんですけど、どちらにしても異文化の文章を自国語に翻訳しようと思ったら、それまでの文学的な蓄積を利用することが大幅に制限されます。自分で造語を作ったり、過去に忘れ去られた単語を見つけてくるしかありません。

 もちろん、これと同じ現象は日本でも起こりました。つまり、江戸期から明治維新にかけて、海外書籍の翻訳を試みた人々は、自国文化にない概念を自国語に翻訳するために、適語を見つけてきたり作ったりする必要に迫られたわけです。

 こうした技術は、当然の事ながら辞書の作成と平行して進化しました。逆に言うと、辞書がなければ、あるいは辞書を作るつもりじゃなきゃ適語は見つかりません。ヘミングウェイが全盛期にやった文章練習法がこれで、自分が体験した事象を正確に描写するために、片っ端から辞書を引いて適正な単語を探し出してくる、という行為を繰り返しました。その結果、余分な形容詞を使わずに、短く適切な言葉で状況を説明する文体を習得したわけです。

 これが適語検索の具体的な練習法です。

 適語検索を習得できると、作家は古典的な言い回しを使う必要がほとんどなくなります。だから、これを現代文学(モダニズム)という言うわけです。ところが、多読家はついついこの反対のことを考えてしまいます。つまり、語彙が少ないのは古今東西の本を読んでいないせいだと思うんですね。これは読書家としては正しい考え方なんですが、同時に文章家としては完全に間違っています。何故かというと、辞書を読まずに本ばかり読んでいると、過去の作品に出てきた言い回しをどうしても使ってしまいがちになり、結果としてパターン化された文章しか書けなくなるからです。

 語彙を増やしたかったら、直球勝負で辞書を読むべきなんです。ただし、それは読めない字を読むために使うのではなく、自分の目の前で起こっている現象を、的確に表現するのに相応しい単語を探してくる、あるいは新しい単語を作るための補助の役割を担わせるんです。

(続く)

31件のコメント

[C2143] 素っ気無い気もしますが

省略1の内容はクーンツ氏の件の本にはめれば恐ろしく省略できます。

・作家の私の元にA書店の編集から電話がかかってきた。十二月に出版する
本のタイトル、明日までに考えろとは無茶な要求だな。

個人的には一人称視点は書き辛いです。
  • 2009-08-09
  • 投稿者 : 匿名希望
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[C2146]

 「恋愛」「社会」は適切な日本語が無くて造った言葉と習った気がします。夏目先生は当て字だから違うか。
 私は講談社の大類語辞典買っちゃいましたよ(すぐ飽きた)。小説を乱読するだけじゃ駄目で、なんでも地味な作業が基礎なのですね。本職さんから直ら聞かないと分からないもんです。

 小説のハウツー本だとストーリー作りメインなことが多かったと思います。最低限人称・視点の説明と「~た」連打は駄目よ、ぐらいは書いてるのですが。類語辞典に言及してる本はあまり記憶にないです。
 温帯の小説道場は「漢字をかなに開け」と「人物名がメルルーサというのは無知すぎる」しか覚えていません。

 ところで、一人称視点だと、冒頭で主人公が読者へ自己紹介するのがなんとなく気恥ずかしいです。回避すると主人公は記憶喪失にするしかないもんだろうか。

[C2147]

小説を書こうと思っているので、すごくためになります。
一人称は書きづらいですね。
  • 2009-08-10
  • 投稿者 : かがみん
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[C2148]

>>2146氏
地の文で自己紹介が恥ずかしかったら、他人の説明中に紹介させるか、もしくは自己紹介の必要な場面から始めてみるのはどうでしょう。思いきって主人公の立場を秘匿しておくのも面白いかもしれません。
  • 2009-08-10
  • 投稿者 :
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[C2149]

わざわざ自己紹介させなくとも、主人公の一連の行動から、読者に主人公像を自然と伝えるのが一番スマートな方法ではないでしょうか。説明台詞を極力使わないというのが脚本の基本だそうですし。
  • 2009-08-11
  • 投稿者 :
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[C2151]

エントリのタイトルからはズレますが、一応情報として。

discaこと金尻が鳥山さんを標的にしているようですね。
このblogの書き込みをネタに「法的アプローチ」を狙っているとの事。

http://s04.megalodon.jp/2009-0811-2301-40/idiagdia.com/wiki/index2.php?Trash%2F%E3%82%A8%E3%83%AD%E3%82%B2%2F%E9%B3%A5%E5%B1%B1%E4%BB%81%E6%B0%8F
>2009-08-09 この程度でも法的アプローチが可能とのこと。
  • 2009-08-11
  • 投稿者 : 一GT掲示板参加者
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[C2152]

クーンツですけど、この人は映像化作品に恵まれてませんね。
個人的にはキングよりも映像化しやすいと思うんですけど。

あと金尻(disca)のオヤジの小物ぶりには本当に呆れました。
APPのWikiを荒らした件といい、本当に尻の穴が小さい男ですなあ。

>ノート:ポルノ・買春問題研究会
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88:%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BB%E8%B2%B7%E6%98%A5%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A
  • 2009-08-11
  • 投稿者 : CBT
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[C2153] 一GT掲示板参加者さん

 情報に感謝です。

 法的アプローチというのは、たぶん名誉毀損のことなんでしょうけど、やりたければどうぞという感じですね。というか、やったらやったで、また右から左に情報を流すだけで、どんどんセクシャルマイノリティの世界で居場所がなくなっていくだけです。私の方は、そもそもポルノ制作者という段階で、名誉毀損をされても痛くも痒くもありません。金尻が、今まで書いた文章の数々を法廷に持っていって、今までどれだけ無関係な人間に犯罪者予備軍の烙印を押してきたのかを実地に証明していくだけですし、その様子も逐一流していきますよ。

 そもそも、ゲイ系のポルノに関して、あれだけのことを言っておいて、自分が批判された途端にパニックになること自体がおかしいんですよ。周囲が賛同してくれるとでも思ったんでしょうか? 絶対にあり得ないでしょ?
  • 2009-08-12
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2154]

 強いですね鳥山さん。マークされてるのに挑発して大丈夫? と思ってました。

 無断引用転載禁止に吹いた。discaは自分が批判している言動そのものを当の本人がしてますな。トップページだけで何項目当てはまることやら。
 本人の性別やらジェンダーと性志向が入り組んでるのはおいといて、「この人はいったいどこのコミュニティに属したいんだろーか」と思いました。

>2148さん
 京極夏彦が語り手の「私」が最後まで分からない短編を書いてました。全作読んだことがあるのに誰か見当もつかなくてもやもやしました。
  • 2009-08-12
  • 投稿者 : ありょーしゃ
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[C2155] CBTさん

まあ、予想通りの行動ですから、こちらとしては思うつぼです。ようやく、法定に規制推進派を引っ張り出して対決できる上に、公的な記録に残せるんですから願ったり叶ったりですよ。

小心者はすぐにパニックを起こして決定的なミスを犯します。今後もこの方向で活動を継続するのが吉でしょう。
  • 2009-08-12
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2156] ありょーしゃさん

あー、全部想定通りだから、驚かないだけです。

APPには角田という弁護士がいるので、金尻が彼女かその周辺を頼れば自動的にこうなります。

でも、裁判になった段階でAPPの主張にどの程度の正統性があるのかを法廷で争うことになりますから、私としては勝っても負けても死ぬほど美味しい状況です。

今まで反対派との直接対決を避けてきた規制推進派の尻尾をここで掴んで振り回せるんですから、こんなに楽しいことはありません。

裁判が始まったら、これまで集めた彼の発言証拠を片っ端から開陳してやりますよ。
  • 2009-08-12
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2157]

「鳥山は~でしたわ。」「鳥山は~ですわ。」
これ、漫画やエロゲにありがちなお嬢様とも
恰幅のいい中年男性とも取れるところがおもしろいですね
  • 2009-08-12
  • 投稿者 :   
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[C2158] ヤクザにケンカ売っちゃダメでしょjk

 そもそも鳥山さんはヤクザな商売してるんで、毀損すべき名誉がそもさんありゃしないのだナ。この時点で名誉めぐってケンカしてもどもならん。相手はHP0でも元気に戦えるゾンビなんだからサ。たとえ負けてもかえって色んな意味でハクがつかァ、てなもんでしょ。

 やつがれが辞書使って小説書くのに否定的なのは辞書に芸はないだろ?と思ってるから。そして、辞書的には「正しい」言葉遣いだけど、どーにも「芸がない」と感じる表現を最近たびたび見かけるから。
 意味は合ってて芸がない典型的な例と思うのが奈須きのこ選手。
 彼は温帯ばりの冗長かつ豪華なスタイルめざしてるんだが、いかんせん基礎体力(=語彙)が乏しくって、そこを辞書で埋めてるっぽいと感じてるんだナ。
 で、この傾向はテキスト系のゲームでもたびたび感じてるんだよネ。
 ただ、言われてみれば芸のある辞書を作れる可能性はあるかも知んない、とは思うようになったんで、オススメの角川のヤツに当たってみようかとは考えたものの、図書館行ってるヒマがない(汗 夏だからなァ(遠い目

 それにしても後編1ときたか。
 菊池秀行の足音が聞こえないかい?
 完結編1に期待だな、こりゃ。
  • 2009-08-12
  • 投稿者 : 電気屋
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[C2159] 「引用」を禁止することは出来ません

前からさんざっぱら言って来たことなので詳しい説明は省略しますが、

> 引用禁止

こんなこと書いてる時点で法律の知識が浅すぎる。出所の明示と自著の分量の一部である
2点さえ満たせば「引用」は元から無断でしてもいい行為。この程度のことも知らない人物の
「法的アプローチ」など恐るるに足らず、と言うのが率直な感想。
  • 2009-08-12
  • 投稿者 : nazo-
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[C2160]

冗長かつ豪華な文体で、上手に物語が書ける作家さんているんでしょうか?
私はエロゲから奈須きのこさんの作品に入りましたが、言い回しがクドくてときどき頭が痛くなります。
嫌いじゃないんですけど。

  • 2009-08-12
  • 投稿者 :
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[C2161]

奈須きのこさんとか西尾維新さんとか、今中高生にウケている作家さんはどこかクドイ部分が多いような気がしますね。今の時代の流行なんでしょうか。
けど作品や作家さんに対して何でもかんでも「中二(笑)」とか使う人も多いですよね。
・・・・・・お前らホントにちゃんと中身読んで言ってるのか、と問い詰めたいくらい沸いてて腹立ちます。


まぁ中2だなんだと言われようが、僕は奈須さんも西尾さんも結構好きな作家さんなんですが。
  • 2009-08-12
  • 投稿者 :
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[C2162] 匿名希望さん

あー、確かに。
クーンツ的な圧縮技術を日本で使っていたのは泉鏡花で、泉鏡花賞の受賞作家も概ねこの手のテクニックが得意ですね。ただ、文章を圧縮してしまうと小説全体のリズムを損なうので読みづらい=駄文にることは避けられません。
個人的には、リズムで読まないタイプの読者向きだと思います。私は勘弁かなぁ?
  • 2009-08-13
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2163] 2146さん

一人称の自己紹介を回避しようと言う構成が採られた作品は、割と古くからありますし、また今のラノベ作家も結構使っていたりします。西尾維新なんかは上手いんじゃないでしょうか?
  • 2009-08-13
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2164] CBTさん

改めて。

クーンツ作品が映像化に耐えないのは、匿名希望さんにも指摘したように、文章の圧縮技術を使ってしまうからです。これを、映像化の際に元の分量に戻した段階で、ストーリーの進行が破綻します。この点で、映像化されると心理描写は減っても行動描写が比較的正確なキングに較べ、クーンツの文章は明らかに劣っています。

なお、クーンツの最高傑作は間違いなくデモン・シードで、これは登場人物が少ない分だけクーンツお得意の圧縮技術の使用頻度が低いので、映像化してもストーリーが破綻しづらかったからです。
  • 2009-08-13
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2165] 電気屋さん

辞書が詰まらない理由は、単に1980年代まで日本に良い辞典がなかったからです。

それと、これは予想していたんですけど、やっぱりきのこネタで勘違いされてますよ。今の子は、定型の言い回しに慣れちゃったせいで、きのこが「くどい」と思っちゃうんですよ。この状況でラノベ書こうっていうんだから、私も酔狂でしょ?
  • 2009-08-13
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2166] 2157さん

ああ、それは言えてる。
その文章は女性を想定していたので、中年男性説は思ってもいなかったですね。
  • 2009-08-13
  • 投稿者 : 鳥山仁
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[C2167] 鳥山仁さん

>クーンツの圧縮技術の欠点
この点はクーンツ本人も分かっていたのか某書で『文章のリズムにはきちんと
緩急をつけろんだぞ。一本調子にすんなよ』『会話がだらだら続くのは駄目だが、
説明文がだらだら続いても駄目だ』みたいな警告をしています。

やはり己の欠点は把握していたかな、とも思ってしまいます。
  • 2009-08-13
  • 投稿者 : 匿名希望
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[C2170]

なるほど~。いや、本当に勉強になります!

粗筋だけ見れば良いB級ホラーの原作になりそうなクーンツの作品が、何故に映像化されると
テレ東深夜直行のゴミ映画になってしまうのか、その理由が分かりました。

クーンツ自身が製作した「ファントム」のヘッポコぶりを目の当たりにして、映像化の失敗率
の高さには原作者にも責任があるんじゃないのかな~と素朴な疑問を抱いていたんですが、
やはりそうだったのですね。

このヘッポコ映画「ファントム」ですが、出演者のベン・アフレックは気に入っているそうですw
ベンはブルータルな傑作モンスター映画「ザ・フィースト」を製作していますし
相当なゲテモノ好きと見ました。
  • 2009-08-14
  • 投稿者 : CBT
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[C2171] 2160さん

多分、バロック系の文章でしょうけど、世界的に見てもなかなか以内と思いますよ。
奈須は新本格派のミステリー作家から文体影響を受けたという話を本人がしていたはずで、京大ミステリ研の流れの作家を読めば、元が転がってるはずです。私はミステリーが苦手なので読みませんが。
  • 2009-08-14
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
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[C2172] 2161さん

内容で云々するのであれば、過去の作品、特にハルマゲドンがまだ本気で信じられていた時期の娯楽小説の方が余程中二病的で、確かにそのような批判は不適当だと断言できます。

例えば、古いところでは島田清次郎の『地上』とか、平井和正の『幻魔大戦』とか、当時から抱腹絶倒だった娯楽小説というのは死ぬほどあるわけで、奈須や西尾だけを責めるのはオカシイでしょう。

でも、奈須の文章が問題になっているのはそれとは無関係で、しかも文章がくどいから敬遠されているのではなくて、むしろその逆で薄いから敬遠されているんです。
  • 2009-08-14
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
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[C2173] 匿名希望さん

クーンツは自分の小説の欠陥は承知しています。
彼は非常に珍しい、批評家タイプの文筆家で、実作よりも批評能力の方が高いんです、

私はクーンツのアメコミ批評を読んだことがあるんですが、あまりにも上手くて舌を巻いた記憶があります。よほど多読家だったんでしょう。

そういう意味で、クーンツは江戸川乱歩やコリン・ウィルソンに近い存在だと思っています。
  • 2009-08-14
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
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[C2176] きのこ料理はこってりか。

 いや、きのこはクドいだろjk(笑
 もはやネタとしてすら機能しないおなじみグルメフレーズは「まったりとして、それでいてしつこくない」だけど、きのこ選手は「まったりとして、それでいてしつこい」なんだな(注:当社比)。そして、しつこいすなわちクドいだよね。
 ただ、たしかに量はあっても質は薄い、てのは感じます、ハイ。

>冗長かつ豪華な文体で、上手に物語が書ける作家さんているんでしょうか?

 冗長かつ豪華な文体ってェのはとーぜんお話の筋を運ぶのにまーったく寄与しないのネ。どれほど緻密で重厚であろうとも、そーした描写文ってお話一歩も進めないから。
 マンガでいうと画力に似てるね。マンガ家の画力とストーリーテリングの力ってほとんど相関しないよネ?
 小説も一緒で文章の芸と物語を構成する力はせとんど関係ない(←アタリマエ)。だから両立も容易じゃない。
 ただ、そーゆースタイルで「売れてる」人はそれなりにいます。栗本温帯がそーだし、菊池ゃんやら獏ちゃんやらもだね。読んだことないけどきっと真保選手もなんだろなー。
 鳥山さんも触れてるバロックだのゴシックだのいうジャンルは大仰なケレンがいっとー大事なジャンルで、そーしたスタイルそのものが筋書きよりむしろ大事ってェちょっくら歪んだジャンル(だがそれがイイ!)だから、よそよかその手の書き手はいるんでしょうね、読んだことないけどサ!(ぉ
  • 2009-08-14
  • 投稿者 : 電気屋
  • URL
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[C2179]

文章の薄い濃いっていうのは、結局その小説の面白さそのものの部分にはあまり関係がないんですよね。
どれだけ読者を活字の羅列だけの世界へと引きつけられるかっていう。そういう物語を見せる手法が優れてさえいれば、たとえ淡白な文章であっても読者はお話に引き込まれますし。
・・・いや、それでもやっぱり文章が薄いのはいくないと思いますけれども。

あと個人的に奈須さんが書いたDDDの、SvSのクライマックスは嫌いじゃないけどやっぱりクドイ(笑)
奈須さんの作品じゃ、一番好きなシリーズなんですがねー。
  • 2009-08-15
  • 投稿者 :
  • URL
  • 編集

[C2180]

奈須さんの作品にけちをつけるのはお門違いと言うのは分かっているんですけど
(そもそもそんな資格はないからね)、彼の作品はチェイン(連続・連鎖)が少ない
んじゃないのかな、とも思ってしまいますね。逆にジャンプ(跳躍・飛躍)は多い。
本当にこの話題は物語を進行させるのに必要なの?と思うような描写もゴロゴロ(
伏線、というわけでもないような話題も…)。

>鳥山仁さん
クーンツ自身はかなり読む人のようです。自身の本で書いた紹介文『読んで読んで
読みまくれ』を地で行く人というか。
  • 2009-08-15
  • 投稿者 : 匿名希望
  • URL
  • 編集

[C2197] 総入れ歯…

もとい、そう言えば、池波正太郎は、
「連日、劇場に同じ出し物を見に行って、日々の微妙な違いを文章にする練習をした」、
と聞いた事があるような気がします。
(違う作家だったかもしれません)
  • 2009-08-17
  • 投稿者 : ゲッターピジョン
  • URL
  • 編集

[C2568]

ちょっとヒマができたので、前から読みたかった「文章の善し悪しをジャッジする基準」を読み進めてるところです。

皆さんと比べると、私はほとんど本を読まない人の部類に間違いなくはいると思いますが、普段こういうことを意識して読んだことはありませんから、なんだか新鮮な感じです。

ただ、文章描写での時系列の違和感を感じさせない文章がかけるというのはやっぱりプロで、アマチュア作品では、素人目から見ても、過去にいっちゃったり、突然現在に戻ってきたりして、なんじゃこりゃっていうのが良くあったりするので、こういう基礎っていうのは大事なんだなあと考えさせられたり。

きのこさんは、状況描写が省略しすぎてなにやってるか分からない時がありますね。まあ、それが魅力なのかな?

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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
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