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『巨大娘研究』完成。

巨大娘研究~サブカルチャー批評の終焉と再生~ (サンワコミックス) (SANWA COMICS No.)巨大娘研究~サブカルチャー批評の終焉と再生~ (サンワコミックス) (SANWA COMICS No.)
(2012/02/17)
鳥山 仁

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またしてもお久しぶりでございます。
最近では、本気で文章作業がメインになってしまい、今や実写系ムックからは完全に遠ざかりつつある鳥山です。
人生よりも仕事の寿命の方が短いのは分かっていたんですが、どんなに私がポルノを愛していようとも、売り上げ数という厳しい現実があって、しかもエロよりも非エロの方が数値的に遥かに好調だと、どうしてもそっちの仕事を優先せざるを得ないわけですよ。シクシク。

 そんな中で2月の17日に発売する『巨大娘研究』に関しては、かなり例外だったりします。つまり、本作に関しては私の作業量的に採算をほぼ完全に度外視して作ってます。

 この作業を開始したのは、2008年の7月21日のこと。これは、このブログに記録を残しているので確定で良いでしょう。

 企画自体は共著者の嵯峨斐峰氏からの持ち込みで、最初はサイズフェチのカタログ本という内容でした。で、私の方も色んな検討をした結果、この企画に関してはサスペンドにしました。この辺の事情はツイッターや本文にも書いていますが、カタログとして本を制作した場合、既存のサイズフェチ関連のサイトに量的に勝てない事が判明している点と、カタログとして図版を並べた場合、同じ様な絵が延々と続くという、かなり最悪な誌面構成になることが確定していたからです。

 これは当然の話で、たとえば男性が縮小して女性にへばりつく、いわゆるシュリンカーのシチュエーションだけ集めた本を作ったら、小男が女性の胸の谷間かお尻に挟まってる絵ばかりが何枚も何枚もひたすら載り続ける「だけ」ですし、女性が巨大化するシチュエーションだけ集めて本を作ったら、ビルの横で仁王立ちになった女性の絵が何枚も何枚もひたすら載り続ける「だけ」の本になるわけで、マニア以外の人間が読んでも「虚無」という言葉しか思いつかないでしょう。しかも、マニアであればそれらの図版の大半は既に目にしているわけですから、そんな本をわざわざ購入する動機がないわけです。

 ただ、脚フェチの延長で巨大な女性が好きな私にとって「世界初のサイズフェチオンリー商業本」という魅力は捨てがたいものがあり、「どうしたら、書籍として価値のある=面白い本になるか?」という事は常に頭の片隅で考えていました。

 この問題を突破するきっかけを作ってくれたのも実は嵯峨氏でした。どういう意図があったのかは分からないんですが、彼が急に某サブカル系批評家の名前を挙げて「このライターの文章をどう思うか?」と訊いてきたんですね。これが本当に酷い文章で、作品批評をやっているのに該当作品が「どう面白いのか?」を理論的に説明していなかったんです。

 当時の私は批評関係に全く興味が無く、所持していた批評本も『世界の喜劇人』(小林信彦)、『消えた魔球―熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか』(夏目房之介)、『フランシス・コッポラ』(ピーター・カーウィ)の3冊に、批評かどうか微妙なんですが『映画秘宝』を数冊という有様で、サブカル系の批評には全く無知な状態でした。そこで「こりゃ酷いな。まともな作品批評をやれば、本にそれなりの価値が出るんじゃないか?」と思いつき、方針を大幅変更して現在のスタイルに近い構想を練りました。

 つまり、サイズフェチの作品紹介をフェチによる分類だけでなく「面白さ」という別基準を導入することで、単線的なカタログから複線的な批評本に変えようと図ったわけです。ただ、既存のサブカル系批評本の大半は「面白さとは何か?」という論理的な説明をほぼしていないので、この本には独自の基準を説明するページが必要となります。そうなると、自動的に紹介する作品数が減少する訳ですが、これに関しては最初から「物量ではネットに勝てない」と分かっていたので、それほど躊躇はありませんでした。

 また、独自の批評方法に関しても2009年の7月30日からこのブログで始めた『文章の善し悪しをジャッジする基準』で使った理論を批評に援用するだけだったので、それほど難しいとは思っていませんでした。というよりも、このブログのために書いた文章の元になった理論は、知人が作品批評のために編み出したものだったので、本来の用途に戻すだけで事足りると思っていたわけです。

 ただ、作業としてはここからが難所でした。批評をやる以上、紹介作品の十数倍のコンテンツを自分で見てジャッジをしていかないとお話にならないわけです。この仕事だけをしているなら問題ないんですが、霞を喰って生きてるわけじゃないので、別の作業と並行しながら……となるとどうしても時間が足りません。本書でも白状していますが、この部分の作業の相当数、特に漫画作品に関しては共著者の嵯峨氏に負っています。自分だけでこの本を作っていたら、確実に投げ出していたでしょうね。

 こうして、どうにか本の75%程度が完成した段階で、仕上げとしてG-ZONEの管理人であられるX-Virus氏に助力を頂いて、原稿を並べながら情報の穴を埋めていくという作業に入りました。そして、穴が埋まった段階で各評論の整合性を合わせてようやく完成という次第です。

 本書は以上のような経緯で作られていますので、サイズフェチのカタログ本をお求めの方には物足りない内容になっています。また、既存のサブカル系批評本が好きな方も避けた方が無難でしょう。

 私が採算を度外視してまでこの本でやりたかったことは、オリジナリティと面白さの両立で、当然のことながらこういう事をやれば既存の本のスタイルから逸脱します。だから、規範的な書籍をお求めの方に本書はお薦めできません。そもそも、この本は著者序文から『神話からサイズフェチ商業化の時代まで』というオープニングまではページを捲るだけで読めるようになっているんですが、後はあっちこっちにページを飛ばしたり戻ったりをしないと全体像が把握できない構成になっていて、その点だけでも「変な本」なんです。普段の私だったら、こういうスタイルの本は絶対に作っていないと思います。

 個人的には本書の完成度に満足しています。ただ、一カ所だけ誰が見ても明らかな年代間違いをタイプミスでやらかしていて、その点は瑕疵ができちゃったのが残念なんですが。最近、目が悪くなってきて、著者校正の時に読み間違いをしていたんでしょう。気づいた方は「鳥山のバーカ」と笑ってやって下さい。批評本と言っても、肩の力を抜いて読める内容ですから。面白くなければ、批評だって意味ないですよね?

5件のコメント

[C4385] おめでとー、おめでとー、おめでとー。

 をを、ついに…。
 ランダムアクセスな構成取るとわチャレンジャーですのー。紙の辞書使い慣れてるクチならともかく、本が手になじんでない層にはツラそーだ。Webじゃふつーの手口ですが。
 なお、AKBのめがね写真集と天秤にかけた結果、コチラに軍配が上がり購入が決定いたしました。横山由依をメンツに含めないとかダメじゃん。
 そーでつか、目がかすむお年頃でつか。ろーがんナカーマ。とっととめがねっ漢になっちまいまそー。
 タブレット愛用してる今日この頃でつが、当初ギリポケットに入る7インチを想定していたものの、そーしたじじょーから10インチを採用するコトに…。
  • 2012-02-16
  • 投稿者 : 電気屋
  • URL
  • 編集

[C4386] ありがとうございます。

この本に関しては電気yさんの趣味からは完全に外れているので、ゲットしていただけるとは思っていませんでした。嬉しいです。ありがとうございます。

後は全然関係ないんですが、横山由依の顔を確認しました。もう少し年齢が行くと、吊り目女教師系が似合いそうな顔立ちですなあ。
  • 2012-02-16
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
  • 編集

[C4387] でしょでしょ?

>もう少し年齢が行くと、吊り目女教師系が似合いそうな顔立ちですなあ。

 まさに。
 彼女京女なんでナチュラルボーンイケズな上、基本素直クールで自分にも他人にも厳しータイプとミストレスとして万全のキャラクターなんスよ。かくもめがねジェニックなタレント外すとかありえないっス。
  • 2012-02-17
  • 投稿者 : 電気屋
  • URL
  • 編集

[C4390] おめでとうございます

今日、ホームセンター系列の大型書店にて購入しましたが、2冊とはいえ棚に平積み? されてましたよ。面白さの評価基準に不条理解析を持ってきた辺り目からウロコが落ちました。
  • 2012-02-21
  • 投稿者 : 寛
  • URL
  • 編集

[C4391] 寛さん

ありがとうございます。

ただ、批評は難しいですね。

小説ならいくらでもフィクションで補強できるんですが、ノンフィクションや現物がある批評はそういうわけにはいかないんで、冗談抜きで大変でした。お陰で、この本を入稿してからしばらく茫然自失状態で、気力がなかなか戻らなかったですよ。
  • 2012-02-21
  • 投稿者 : 鳥山仁
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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
です。★マークを@に変えて使ってね。

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