王様を欲しがったカエル

　どうにかロビイング活動用の資料を書き上げる。しかし、まだ資料の収集が２本ほど残っており、こっちは口頭での説明が前提だから、自分の頭の中でよく咀嚼して、当日によどみなく話せるようにしておかねばならない。

　にもかかわらず、仕事の進捗は停滞気味。原因は表紙の撮影に予定していた女の子（複数）がいずれも売れっ子になってしまい、２月にならなければスケジュールがとれないことが判明したため。お陰で、各モデルプロダクションから貰った宣伝材料を片端から見る羽目に。

　私は芸能界には詳しくないので全般的にそうかどうかは判断できないのだが、少なくともアダルト業界では人気の出る男優・女優というのは、おおむねスタートの段階からある種の『輝き』みたいなものがある。感覚的なので言葉にするのが難しいのだけれど、「あ。この人は成功するな」という予感がするのだ。

　たとえば、私がよく仕事を頼んでいる男優さんは、デビューから１年半ぐらいでギャランティが３倍に上がってしまったのだが、彼なんかは最初に現場に来て１時間も経たないうちに「あ。この人は成功するな」ということが分かってしまい、私としては珍しく本人に「貴方は成功しますよ」と予言してしまった。

　その男優さんは「いやいや」と謙遜しつつも「こいつ、何言ってンだ」という顔をしていた（当たり前だよね）けど、結果は私の予想通り。先週に彼で撮影をした時に「最初に会った時に、言った通りだったでしょ」と言ったら笑っていたが、これぐらいの自慢はして良いでしょ？

　アダルト業界は残酷な世界で、モデルの平均寿命は約３ヶ月と言われている。仕事が原因で心身が摩耗するワケではない。仕事が来ないから廃業せざるを得ないのだ。特に「脱げばお金になる」と思っている女の子は、週に１本の割合ですら仕事が来ないという現実に直面すると、情緒不安定になってしまう場合もあるようで、前に撮影した売れっ子の女の子が、同じ事務所の売れない女の子が、仕事がこないことが原因でパニックになっているのを慰めている様子を見て、こっちまで陰鬱な気持ちにさせられた。

　売れる人と売れない人の違いはどこにあるんだろう、という話はよく制作スタッフの間でも交わされるのだが、単にプロポーションが良いとか、顔が良いとか、そういったことだけでは決まらないから厄介だ。だからと言ってカリスマ性の有無でも性格の善し悪しでもないから、もう『輝き』と呼ぶしかない。『輝き』がある人間は、よっぽど下手なことをしない限り成功するし、無い人間は相当な努力をしても浮かばれない。

　こういうのって、どの人気商売にもあるものなんですかね？