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児童ポルノQ&A(3)

 本日は仕事と平行して、各反対派の活動に対する情報収集、及びにロビイングの準備段階に突入。いつもは各自バラバラに活動している反対派の情報を集めるのは、バッティングを避けて効率化を図るのが目的。反対派内部では、しばしば「大同団結せよ」などという声が聞こえるが、漫画をメインの趣味にしている人間と、ゲームをメイン趣味にしている人間が一致して行動することなんて、絶対に無理だというのが分からないのは凄いとしか言いようがない。

 大体、反対派が一カ所に固まっていたら、そこに規制推進派から集中砲火食らって終わりだよ。近代戦が火力の上昇に伴って、固まっていると大被害を食らう密集隊形から、一人が倒されても他の人間が生き残る散兵が主流になったように、政治活動もネット・携帯などを大いに活用して、できる限り分散して活動したほうが、生存率が高まるに決まってるでしょ? どうも、反対派の内部にはナチズムというか全体主義をユートピアっぽく捉えているヤツが一定数いるようで、うんざりさせられる。

 まだコミケがメジャーでなかった時代と違って、今の同人誌即売会etcの規模や広がりを考えたら、古いやり方が通用しないのは厳然たる事実として認識しないと駄目だね。昔だったら、下北沢か池の上か神保町に集まって、適当にだべっているうちに何となく方針が固まったんだろうけど、それと同じことができるかと言われたら無理としか言いようがない。それが楽しい思い出であったことは否定しないし、自分が参加している定例の規制反対派オフ会がこれに近いんじゃないかと言われると反論するのが苦しいけど、次世代にこれを押しつけたりはしませんよ。ハイ。

児童ポルノQ&A(3)

Q:日本でも、規制に動いたのは警察、宗教家、大手マスコミ、それから左派系のフェミニストだったのでしょうか?
A:そうです。規制を推進する側の人間が虚偽の発言をするのも、たいした調査もせずに規制を訴えかけるところまで瓜二つです。
 ロリコンブームを契機として最初に規制を訴えかけたのは、市川房枝議員が発起人となって一九七五年に結成された、『国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会』でした。この会は、田中寿美子・吉武輝子・三井マリ子・中島通子など、当時のフェミニストの中でも『強面』で知られたメンバーで構成されていました。市川は婦人参政権運動に尽力したことで女性差別の解消に尽力するなど、素晴らしい政治的な成果を上げる反面、売春禁止法の制定にも尽力し、なおかつ一九七三年には「売春問題ととりくむ会」を形成するなど、性的な事柄に関しては極端に偏狭な理念の持ち主で、その批判の矛先はあらゆる性的な表現にも向けられていました。最初にそのやり玉に挙がったのは、「わたし作る人、ボク食べる人」というフレーズで有名になったハウス食品工業が発売していたインスタントラーメンのCMでした。その理由は、「食事作りはいつも女性の仕事という印象を与え、男女の役割分担を固定化してしまうものだ」というものでした。
 マンガの表現に口を挟み始めたのは、翌一九七六年の『イヤハヤ南友』(永井豪著・講談社刊)と『がきデカ』(山上たつひこ著・秋田書店刊)からで、いずれも『週間少年マガジン』と『週間少年チャンピオン』という、週刊少年マンガ誌に連載された人気作品についてでした。
 そして、この流れを汲む形でロリコンブームの初期にやり玉に挙げられたのが、どういう訳か『まいっちんぐマチ子先生』(えびはら武司著・月刊少年チャレンジに連載開始)というエッチラブコメ作品でした。この上記3作品を通読すればすぐに理解できることですが、作品中で主要な性的対象として扱われているのは、いずれも女教師(及びにその生徒達)です。つまり、『国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会』も含めて、当時の女性差別撤廃運動の主力を担っていたのは女教師であり、彼女達、及びに彼女達の職場を冒涜するような表現は規制すべし、という風潮があったと解釈する以外に、こうした批判を理解する手段がありません。もっとも、日本では行政官や公務員を性的対象として扱った作品は摘発の対象になりやすい傾向があり、特に婦人警官(の役柄)をポルノに出演させることは、警察による摘発の可能性を飛躍的に高めるという暗黙の了解がポルノ業界に存在します。つまり、教職員だけがヒステリックにポルノ批判を行っているわけではなく、公務員(の役柄)をポルノに出演させることそのものが、行政官に対する冒涜・批判・挑戦と受け止められていると考えるのが妥当でしょう。「まちこ騒動」に続いて、一九八四年にはローティーン、及びにハイティーン向けの少女雑誌に掲載されたセックス関連の記事が問題となり、多くの少女雑誌が廃刊に追いこまれています。これは、左派・右派を問わず性情報に関する規制を主張する団体が行なう常套手段で、女性や少女を性関連の情報から遮断することによって、性行為に関心を持てない状態にしておこう、という目的があります。
 このケースで主導的に動いたのは自由民主党(故・三塚博議員が提唱)で、『少年の健全な育成を阻害する図書類の販売等の規制に関する法律案要綱試案』という長ったらしい名前の法案を提出していますが、これは出版業界・マスコミ業界から「表現の自由を阻害するものだ」という批判が相次いだために、法案をまとめてからわずか2ヶ月足らずで上程を断念しています。
 ただし、こうした規制運動を始めたのは何も自由民主党が最初ではなく、むしろ彼らとは思想を異にする『日本基督教婦人矯風会』(以後矯風会)という団体の十八番でした。同会は矢島楫子という熊本出身の女教師が中心となって、アメリカで設立された万国婦人禁酒会の影響下で一八八六年に発足したもので、その目的はキリスト教の教義に基づく家族制度を維持・発展させることにありました。その手段として、禁酒(家庭外の場所での飲酒行為の禁止)・禁煙(これは、矯風会設立以前からキリスト教が喫煙行為を異教徒の教えとして禁止していたため)・廃娼(売買春の禁止。前述の通り、セックスワークが家族制度を破壊すると考えられていたため)が選択されたのですが、結果として彼女達の活動で最も有名になったのは廃娼運動でした。また、東アジアにおけるキリスト教徒の分布は、日本に少なく朝鮮半島(韓国)とやや離れたフィリピンに多いという特徴があったため、矯風会も在日朝鮮人や韓国、そして東南アジアと深い関係性を持っています。これが原因で、矯風会はロリコンブームが起こり、一部の小児性愛者が売買春目的で東南アジアに訪れるようになると、これに激しく反応して、東南アジアへの買春ツアーを扱った実写系のロリコン雑誌を作っている出版社に突撃し、編集部を占拠してしまったこともあったようです。この後、左派系フェミニストも矯風会も、一九九一年の朝日新聞に記事が掲載されたことがきっかけで問題になった、いわゆる『従軍慰安婦の強制連行』問題に深く関与するようになり、ここでできたコネクションが、後述する『児童ポルノ法』の成立に大きな役割を果たします。
 このように、一九八〇年代前半に盛り上がったロリコンブームに対する批判や規制の動きは各所であったものの、その多くは実写系に比較するとゆるやか、かつピントはずれである場合が多く、ブームそのものを抑止する効果があったとは思えません。ところが、ロリコンブームは一九八〇年代後半にはいると急速に終息していってしまいました。

Q:ピントが外れた規制でも、それなりに効果があったと言うことでしょうか?
A:ロリコンブームの終息にはいくつかの要因があり、それを単純化するのは難しいのですが、最も大きかったのはそれまでこのブームを下支えしていた、SF作品・特にTV放映されていたSFアニメの人気凋落でしょう。もともと、人口に占める小児性愛者の数というのは、世界各国でもそれほど多いわけではなく、児童との性行為を常態としているのは、売買婚の風習がある貧困地域が主体です。これは、男性が妻をめとる際に、相手の家長(もしくは家族)に金品の支払いをせねばならぬという社会システムですが、若ければ値段が安いという共通した傾向があります。なぜなら、少女は結婚後の労働力として期待できないので、価値がないと考えられているからです。
 そして、一九八〇年代の日本で売買婚が一般的であったという事実はないので、児童との性行為が「普通」であったとは考えにくく、上記のブームで多数派だったのはアニメファンや特撮ファンであったと推測するのが妥当です。もちろん、これらのファンの中にも小児性愛者が相当数含まれていたでしょうが、ファン全体に占める割合を考えれば微々たるものでしかなかったのも事実です。だからこそ、SFアニメブームが去った途端に、ロリコン漫画誌・アニメ雑誌の売り上げが低迷し、それに伴い複数の雑誌が廃刊・あるいは方針転換をせざるを得ませんでした。
 また、話をポルノに限定するのであれば、当時のロリコンマンガ・ロリコンアニメは、アニメ的なデフォルメを性器にまで行なっていたために、「ポルノにおける性行為描写は、可能な限りリアルであることが望ましい」というポルノグラフィの原則からは逸脱した、すなわちポルノとしては「弱い」作品が大部分を占めていました。しかも、ロリータ作品は、登場人物の性別よりも外見上の年齢の若さにこだわる傾向があり、読者のトランスセクシャル的な欲望を充足させる点でも「薄い」という二重の欠陥を抱えていました。
 これを商業誌で最初に克服したのが森山塔という漫画家で、登場人物の年齢をハイティーンにまで上げ、全体のデフォルメを少女漫画風に、性器の描写のみを劇画風にする、いわゆるクロスオーヴァーな手法で、エロマンガの作劇法に一大革命を起こしました。この結果として、『ロリコンブーム』は『美少女エロマンガ』、もしくは『美少女コミック』と名称を変更し、主体となった出版社も、森山の単行本を出していた松文館、辰巳出版、司書房、茜新社(フランス書院)、そして笠倉出版などに移行していきました。
 そして、ロリコンブームと同様に、このムーブメントにも大手出版社が興味を示したため、森山塔は山本直樹とペンネームを変更し、小学館系の青年マンガ誌である『ビッグコミックスピリッツ』に週刊連載を行なうようになります。森山の他にもこのムーブメントをきっかけに、一般商業誌へと転向するものは多かったのですが、目立ったのは小学館・集英社・講談社といった、いわゆる「音羽・一橋グループ」でのデビューでした。こうした一連の流れは、ロリコンブームにおける秋田書店のケースよりも大規模、かつ長期的だったために、漫画の世界では以前と比べて一般商業誌とポルノグラフィの境界線が、どちらにも対応できる作家によって曖昧になるという現象を引き起こしました。これは、青年マンガ誌もポルノも主要な読者層が10代後半以上の男性という共通項があったことが原因で、要するにそれまでロリコンブームを支えてきた読者の年代層が、年齢の上昇に伴って青年誌にも目を通すようになっただけの話でしかありません。
 しかし、外部から見た場合、実際はどうであったのかは別として、青年誌の作家とエロマンガの作家が同一人物であることは、エロマンガが一般の商業誌に浸食してきたのと同義で、批判の対象となり得ます。この段階で、後述する『有害コミック』騒動の火種が相当数ばら撒かれたと考えるべきでしょう。これが、前述の宮崎事件によって発火しました。
 宮崎事件は、一九八八年から八九年にかけて4人の少女が誘拐・殺害されるというもので、犯人として宮崎勤が逮捕されたことから、この名称がつきました。また、この宮崎が自室に大量のビデオテープを所持していたことから、ホラーマニア・アニメファン・ロリコンがバッシングの対象となり、やがてこれが『オタク』という蔑称へと収束していきます。これと平行する形で、一九八九年には岐阜県青少年条例の「包括指定」の合憲性が争われた裁判で、最高裁がこれを合憲としたことが、主に行政官の注目を浴びました。これは、やはり前述のエロ本自動販売機にエロ本を収納することを、青少年条例(後の青少年健全育成条例)によって、行政官が阻止できるかどうかが争われたもので、上記の裁判では行政官の阻止は合憲であると判断が下されたために、これ以降、いわゆる自販機エロ本は衰退の一途を辿ることになります。
 特に問題だったのは、上記判決の理由に書かれた「本条例の定めるような有害図書が一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼし、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長につながるものであつて、青少年の健全な育成に有害であることは、既に社会共通の認識になつているといつてよい」という判断で、これが以降の出版物に対する行政官、特に警察の介入に法的な根拠を与えたことになりました。
 『有害コミック』騒動は、これらの状況を背景に拡大していったものと思われます。この問題は、実質的に児童ポルノ規制のゲネプロ(ドイツ語のGeneralprobe・ゲネラルプローベの略。本番さながらの通し稽古)としての役割を果たしました。
 その発端となったのが、一九九〇年の8月に東京都生活文化局婦人計画課が発表した「性の商品化に関する研究」という文章でした。この文章の第3章で触れられた「マンガの内容分析」は、女性蔑視的な表現をマンガで行ったケースを考察したもので、左派系フェミニズムの観点から著述されていました。これを翌日の朝日新聞が、社説として「貧しい漫画が多すぎる」というタイトルで掲載したことが、『有害コミック』騒動を世間に認知させました。
 これと平行して同年同月には、和歌山県の地元新聞である『紀州新報』に「ドギツイ描写で露骨に性を表現している出版物の行き過ぎを規制するよう行政当局の対策を強く促したい」という中年男性の投書が掲載されます。この意見表明は地元の行政官にも送付され、和歌山県田辺市の市長が『有害コミック』追放の取り組みを指示したことで、規制の歯車が一気に回り出しました。
 これを後押ししたのが、同年の9月に投書者の妻を中心として結成された『コミック本から子供を守る会』でした。この団体は『有害コミック』の法的規制を求めて署名活動を開始したのですが、なぜかその内容は「教師と生徒が校内でセックスするような性表現を規制しよう」というものでした。こうして集まった署名は約5万6千通にのぼりましたが、その主要な支持者はPTAや校長会であったと言われています。
 また、こうした運動の背景には、関西で盛んな新興宗教『念法眞教』の存在があったと考えられています。この宗教団体は同年6月から8月にかけて、機関誌で性描写のある青少年向けコミックを批判する特集を六回掲載した過去があり、これを受けて信者が新聞社や市に訴えかけを行ったというのが現在の定説です。しかし、それを勘案しても「ドギツイ描写」がいつの間にか「教師と生徒が校内でセックスする性表現」にすり替わった事情は理解できず、新聞に投書が掲載されてから『コミック本から子供を守る会』が結成される間に、教育関係の行政官が運動に関与した疑惑が濃厚です。
 そして、この運動を通してやり玉に挙がったのは、『いけない! ルナ先生』(上村純子著・講談社刊)と『ANGEL』(遊人著・小学館刊)の2作品でした。またしても、両作品には教師(『いけない! ルナ先生』は家庭教師だが、先生という単語が規制側を刺激した)が性的な対象として扱われる、もしくは性犯罪者として扱われる描写がありました。この構図は「まちこ騒動」の時と判で押したように同じで、もはや笑うしかありません。要するに、女性差別も子どもの保護も、教職者を性的な存在として描写させないための「方便」だったわけです。
 PTA関係者や教育関係者は、それ以前から青少年条例、あるいは青少年健全育成条例において、有害図書、もしくは不健全図書の指定を行う権限を有しており、この時も同年9月から和歌山県では多数のマンガ作品が有害図書指定を受ける憂き目にあっているのですから、これを「マッチポンプだ」と批判する向きもあったはずですが、なぜかそうした声が世間に広まることもなく、この運動は次々と規模を拡大して、最終的に一八の都道府県で意見書が提出されました。
 出版社側は以上のような規制運動の対応策として、一九九〇年から一九九一年にかけて出版倫理協議会が『成年コミックマーク』を表紙につけることを提案し、これに出版問題懇話会が従属するという流れで事態の沈静化を図りました。しかし、この対応策では規制側とは折り合いがつかないのは当然で、以降も各自治体の法案による規制強化は続けられています。では、出版者側が規制派の事情を理解していなかったかというとこれも疑問で、一九九一年には学校で生徒が合法ドラッグを服用してセックスをするというテーマの『BLUE』(山本直樹著・小学館)という作品が、東京都によって発禁・回収処分になっているのです。いくら何でも、規制側から攻撃を受けた作品にここまで共通項があれば、誰が規制運動を画策しているのか見当がつきそうなものですが、以降も出版社の対応は要領を得ないもので、これは現在まで延々と続いています。
 それ以上にトンチンカンだったのが、規制派のターゲットにされた漫画家と読者で、一部がそれなりに反論は述べたものの、組織だった抵抗はほとんどしませんでした。一九九二年2月14日の毎日新聞記事によると、当時の規制反対派として挙げられているのは、リベラル系フェミニストや雑誌編集者・漫画ファンが中心となって結成された「『有害』コミック問題を考える会」と、児童の人権問題に関与しており、現在でも活動を続けている「ARC」の2団体で、どちらも規制派、及びに漫画業界の実状を深く理解していたとは思えません。これは、同年4月18日の毎日新聞に掲載された「『有害』コミック問題を考える会」の代表(当時)だった笹倉尚子へのインタビューでも明らかにされています。彼女は運動の最大の成果は「フェミニストとオタッキーの出会いです」と力強く宣言しているのです。笹倉は現在でも埼玉県議のタイにおける海外視察中の買春疑惑を追及するなど、市民派のフェミニストとしては申し分のない人物ですが、この一言からもポルノやマンガ・アニメに対する知識がなかったことは明らかです。一方のARCには、後に児童ポルノ規制問題にもコミットする、平野祐二や角田由紀子の名前も見られ、有害コミック問題と児童ポルノ規制の人的な連続性がうかがえます。
 そして、運命のいたずらか、児童ポルノ規制の萌芽も一九九〇年に始まりました。『観光と児童買春に関する協議会』というイベントが、タイのチェンマイという場所で開かれたのです。これは、東アジアと東南アジアのキリスト教関係者が開催したもので、タイやフィリピンに買春観光に来る白人男性や日本人を法的に規制しようという目的がありました。この法規制の根拠になったのが、一九八九年十一月に国際連合で行われた第四十四回総会において採択された『児童の権利に関する条約』で、これは国際的な視点で、飢餓や貧困、あるいは性的な虐待から子どもを保護するためのガイドラインの役目がありました。日本も一九九〇年九月にこの条約に署名し、一九九四年には同条約を批准(国の代表が署名や調印した条約を、国がもう一度確認すること)しています。
 この条約には憲法に比肩する法的拘束力があるため、規制推進派はポルノ規制の足がかりを作ることが容易だったわけです。同時に、この条約は国連で提案されたものですから、国連の関係者、具体的にはその下部組織である国際連合児童基金(以降はユニセフ)の援助を仰ぐことも可能になりました。たとえば、同条約を署名した各国に実施させるために、一九九〇年九月にニューヨークの国連本部において、日本を含む一五一ヶ国の首脳が集まって、『子どものための世界サミット』が開催されています。ここで採択された「子どもの生存、保護及び発達に関する世界宣言」とその「行動計画」が、後々の児童に関わる様々な団体の活動指針となっているのです。
 以上の事情から、『観光と児童買春に関する協議会』の決議を受ける形で、タイのバンコクに設立されたのが、End Child Prostitution in Asian Tourism、略してECPAT(エクパット)と呼ばれる団体でした。日本語に訳すと、「アジアにおける子ども買春観光産業を終わらせる」になります。エクパットの活動は、前述のユニセフによる後押しもあって、短期間で世界各国に関連団体が設立され、オーストラリア、スウェーデン等では子どもに対する性的虐待を禁止する法律が整備されました。また、エクパット結成のきっかけになった、アジア各国―――フィリピン、スリランカ、タイ―――等には、子ども買春を禁止する法律が成立しました。日本でも一九九二年三月に『ECPAT/ストップ子ども買春の会』(俗称エクパット東京)が、同年六月には『エクパット・ジャパン・関西』(俗称エクパット関西)が相次いで設立されています。
 ここで、問題だったのがエクパット東京で、その実体は前述のキリスト矯風会だったのです。何しろ、最初の事務局があった場所が、東京西早稲田日本キリスト教協議会(NCC)内部だったのですから、「宗教とは関係がない」といういい訳はききません。しかも、この団体が最初に開催したのは、『子どもポルノの法規制問題、ポルノウォッチングの具体的活動に関する公開講演会、学習会』というイベントでした。これは明らかに、国連の条約やエクパットの設立理念とはかけ離れた行為でした。 一般に流通しているエロ本やアダルトビデオには、18歳未満の女性が出演してはいけないことが、既存の児童福祉法でも定められていました。未成年が出演しているポルノは、アンダーグラウンドの世界でこっそりと流通しているだけでしかありません。しかも、私が知る限り、アジアへの児童観光買春ツアーをテーマにした合法的なポルノ作品はほとんど存在していません。つまり、子ども買春観光ツアーを撲滅することと、日本国内でポルノウォッチングをすることは、本質的に無関係です。
 にもかかわらず、エクパット東京は一九九六年七月にも、日本国内の書店、コンビニで販売されている「子どもポルノ」の実態調査なるものを行なっています。この調査は矯風会を中心に、一九九五年の秋頃から開始されたものですが、現行法でも禁止されている未成年が出演したエロ本が、一般の書店やコンビニで販売されているわけがありません。「子どもポルノ」という名目で、ポルノ的な作品全般を糾弾しようと言う意図が明白で、うんざりさせられます。同年にはアメリカで『児童ポルノ禁止法』が制定施行され、モデルや被害者が存在しない仮想児童ポルノ(マンガ・イラスト・アニメ・CG・成人が児童に扮した作品などすべてを含むもので、バーチャル児童ポルノと呼ばれている)も禁止の対象になっていたので、日本でも同様の法律が成立すると踏んで行動を開始したのでしょう。
 また、エクパット東京の代表で矯風会の人権部長でもある宮本潤子は、同年にスウェーデン政府とユニセフの協力によって、ストックホルムで開かれた『児童の商業的搾取に反対する世界会議』、通称『ストックホルム会議』において、日本の実写系ロリコン雑誌(一説によると『アリスクラブ』だと言われている)を参加者に見せて回り、「このような児童ポルノが日本では公然と販売されています」とアジテーションしたようなのです。結局、こうした活動が功を奏して、『ストックホルム会議』において、「日本は世界有数の児童ポルノ生産大国である」といういわれのない非難を受けるようになります。

7件のコメント

[C241]

散兵が力を発揮するには、分散した個々に強烈な同朋意識と達成すべき理想(正義とか故郷防衛とか)が刷り込まれてないと駄目じゃん。でないと離散してしまう。まあ生存率は高まるかもしれないがw
  • 2008-03-22
  • 投稿者 : sugi
  • URL
  • 編集

[C242]

ECPATはいかにしてユニセフをたらし込んだか
http://blog.sakichan.org/ja/2008/03/21/

重要な情報なので一応
  • 2008-03-23
  • 投稿者 : 一GT掲示板参加者
  • URL
  • 編集

[C243]

sugiさん

さすが、よく分かってらっしゃる(笑)。
ただ、効率化を考えると、トップダウン式というのは上からの指示を待たなければならないので、どうしても動きが鈍くなる。
それを考えると、自律的な少数のグループが独自に行動した方が、ずっと効率面でいい結果がでるし、生存性も高くなる。
その分だけ、高い自発性が要求されますけど、我々は傭兵や奴隷兵ではないので、要求されるのは当然でしょう。嫌なら止めればいいんです。
  • 2008-03-23
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
  • 編集

[C244]

一GT掲示板参加者さん

情報に感謝します。
原文と和訳を併記しているのはありがたいですね。
これで、ワケの分からない日本ユニセフ協会たたきが、少しでも減ってくれればいいんですけど……。
英語が読めないのか調べないのか、とにかく本家ユニセフの情報に目を通さずに、変なデマを流している奴が反対派内部にいるんで、うんざりしていました。見ろよと思うんですけどね。
  • 2008-03-23
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
  • 編集

[C249]

>自律的な少数のグループが独自に行動した方が、ずっと効率面でいい結果がでるし、生存性も高くなる。

それは分かるけど、究極的には多数派を動かさぬと対抗は難しいのでは?
多数派が動かないと肝心要の政治家が動いてくれないんじゃないか、という危惧がある。
  • 2008-03-26
  • 投稿者 : sugi
  • URL
  • 編集

[C1278]

>同会は矢島楫子という熊本出身の女教師が中心となって、アメリカで設立された万国婦人禁酒会の影響下で一八八六年に発足したもので、その目的はキリスト教の教義に基づく家族制度を維持・発展させることにありました。

私は矢島楫子と同じ熊本出身なんで、「ゲッ、熊本は矢島楫子のお膝元かよ。さぞかし盛んに布教してるんだろうなぁ」と嫌な気分になりながら矯風会のホームページをみてみたんですが、なぜか熊本には矯風会の支部はひとつもない様子。
というより、九州での布教状況を見るとまるで熊本を避けてるような。

http://www18.ocn.ne.jp/~kyofukai/05organization.htm

偉大な創設者の故郷になにもないなんて、一体どうしたことなんでしょうな。
そういえば、熊本バンド事件の舞台になった花岡山では、今でも熊本のキリスト教徒が集まって祈祷をやるらしいんですが、実はこの花岡山、熊本ではラブホテル街として有名なところでw
そぐわないといえばこれほどそぐわないものもないかと。
  • 2009-04-03
  • 投稿者 : sugi
  • URL
  • 編集

[C1280] sugi さん

http://www.manyou-kumamoto.jp/contents.cfm?id=722

知っていらっしゃると思いますが、熊本の女子教育は横井小楠の系譜が発展させたもので、この系譜が太平洋戦争の敗戦と共に衰退した段階で、何らかの断絶があったのだと思われます。

ただ、私は戦前日本の女性史に疎いので、どのような経緯があったかまではよく分かりません。しかし、ラブホテルは意外で笑いました。コンドームの使用は禁止ですかね?

  • 2009-04-04
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
です。★マークを@に変えて使ってね。

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