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『正しい』男女交際モデル(80年代の北関東限定)・中編

2.中学校期

 中学校期は小学校高学年前後から始まった第二次性徴がほぼ全員に現れ、思春期に突入する過程で、男女の肉体的な(外面上の)性差が顕著になる時期である。これに従って、性差や性行為に強い関心持つ(ネガティブな意味も含む。たとえば、大人になりたくないなど)ようになるため、男女交際は重要な関心事となる(例外はもちろん存在する。たとえば、幼少期に重い鬱病にかかった男子の一部は性的関心を失うことが知られている。いわゆるアセクシャルの原因説が有力である。同性愛に関しては、本稿の対象外なので言及しない)。

 また、肉体的成長及びに社会的な経験の蓄積に伴い、小学校期に比較すると親への依存が弱まり、交友範囲が物理的に拡大し、複雑な行動が見られるようになる。また、中学進学による学区の変更や私立中学への入学によって、人間関係がいったんリセットされるグループも出現する。

 これらの現象がストレートに出るのは小学校期同様女子で、それまでは親の同意、もしくは暗黙の了解なしでは難しかった男女交際を、独自に、かつ秘密裏に行うケースがしばしば見られるようになる。すなわち母子関係が良好でなかった女子にも、男女交際を行える可能性が高くなる。

 彼女たちが男女交際のきっかけになると思っているイベントは、やはりバレンタインだろう。中学時代の女子にとって、公的(?)に男性への告白が可能な、ほぼ唯一のチャンスだからだ。裏返せば、女子にとってバレンタインが最重視される時期は中学生で、以降は次第にその価値を減じていく、ということになる。

 それでは、男子の方がどうかというと……これが実はよく分からない。いきなり、関係の浅い女子からチョコレートをもらって告白されたというパターンを探したのだが、ついにケーススタディが1件も見つからなかったのだ。前からよく知った仲とか、バレンタイン以前に告白されているケースの方が圧倒的というか、それ以外の実例がない。この辺は女子と男子の記憶に大きな差があるので、特定の個人に「初対面の女子から、いきなりチョコレートを渡される」という経験が集中しているのではないかと推測しているのだが、ケーススタディが見つからなかった以上、実体については不明としか言いようがない。たとえば、スポーツマンとして地元で有名など、とにかく何らかの理由で顔が知られていないと起こらない現象ではないかと思われるのだが……。

 そういう次第で、中学校期における男女交際のパターンに関しては、バレンタインというイベントが大きなトピックになりながらも、それ以外の時期における女子からの告白が高い比率を占めるものと想像できる。ただし、小学校期には関与の深かった女性親の影は薄くなり、女子本人からの告白、あるいはラブレターというケースが多い。

 男女交際の起こりうる場は、同地域のコミュニティ、同じ学校、部活、塾、そして不良グループなどである。この辺は、ネットや携帯が発達した現在とは、趣がかなり異なる点だろう。

 だいたいの場合、それらのコミュニティ内で女子が男子を物色し、彼女が気に入った相手に告白するという経緯を辿る。男子が女子に告白するケースは希で、こうした「事件」があるとコミュニティ内で大きな話題になるぐらいである。

 男子が女子の告白を受理すると交際が始まるが、これらの大部分は両親には秘密裏に行われる。特に、アッパーミドルクラス以上の家庭に育った女子にとって、交際=結婚なので、男女交際の事実が両親に知られることは家庭不和の原因となるため、秘密の厳守は必須となる。逆にコモンクラス以下の階層に育ち、不良グループに属している女子などにとって、交際相手の「格」が女性グループ内での自分のステータスに直結する場合がままあるため、不良グループの先輩や仲間に彼氏を紹介してもらう、という事が頻繁に行われるようだ。

 どちらにしても、この時期の男女交際はそれほど両親に対してオープンになることはないため、一番の問題はデートのアポイントということになる。当時は携帯電話がないため、これが意外と難しい。従って、(両親に内緒で)アポイントを取りやすい環境というのが交際継続の重要な鍵を握ることになる。たとえば、学校の帰りとか、部活の帰りとか、塾の帰りとか、不良グループの会合などである。

 デートをする場所に関しても、帰宅時の道中、近所の公園、図書館、ウィンドショッピングなど、お金がかからないという条件を満たさねばならない。中学校期は小学校期に較べると自由度は増すが、アルバイトが出来るわけではないので金銭面での制約が大きい。1回のデートに大金がかかっていたら、とても関係の継続は望めない。

 また、男子は小学校期と同様に放課後の時間を「彼女に使うか、友達と遊ぶか」の二択に悩まされることになる。小学校期に較べると、親の強制力が低い分だけ、男子の性格がデートの回数に反映されやすい。

 ただし、女子の成長に伴い相手を多少は「性的な対象」と見なせるようにはなってきているので、自分に交際相手がいることを一種のステータスとして捉える感情も芽生えている。だが、同時に性交渉の対象として見なすケースは少ない。これは、別に性欲を我慢しているわけではなく、女子の肉体的な発達の程度が性欲の対象として認識できないレベルでしかないからである。もちろん、小学校期と同様にこの年代の少女に対して強い性的な関心を示す男子も少数いるが、その後にまともな男女交際ができる可能性は低い。

 男女交際で実時間の大半を占めるのは、女子の話を男子が聞いて合いの手を入れる、というやりとりである。この段階で、男子には女子の愚痴を聞くという試練が既に始まっている。女子の話に付き合うスキルのない、すなわち「そんな話はくだらない」と切り捨ててしまったり、あるいは逆にヴィヴィッドに反応してああだこうだと説教を始めるタイプの男子は、自分より立場の弱い(正確には弱く見える)女子としか付き合えないので、自ずと交際可能な女子のタイプが極端に限定される。

 ただし、誤解を招く前に釘を刺しておくが、すべての女性がおしゃべり好きで愚痴を言いたがるわけではない。男女交際において、自分から積極的に男性にアプローチをかけられるタイプの女性に「おしゃべり好き」で物怖じしない外向的な性格が多いのである。だから、そもそもこのタイプの女性が好きでなければ、中学生男子は女子との交際を幅広く行うことは難しい。また、しばしば男性向けの恋愛指南本に「聞き上手になれ」と書いてあるが、これは上記タイプの女性を想定して書かれている可能性が高い。

 特に北関東圏では女性を「自然なもの」=自由勝手に振る舞う非理性的な存在として差別的に扱う傾向があったので、おしゃべり好きな女子は「女性らしい」存在として周囲から認識される傾向があった。裏返せば「男らしさ」は寡黙(意味のない会話をべちゃべちゃ喋るのは男らしくない)であるべきであるとされたので、男女交際時には性差による話し役、聞き役の分担が自然にできるはずであると考えられていた(もちろん、ウソですよ。信じないように)。

 従って、交際が継続するかどうかも女子の気持ち次第の面が強く、女子が関係を続けたいと望んだ場合は、アクセサリーや編み物を男子にプレゼントをしたり、食事を作ってくれるなどのイベントが定期的に発生する。そして、男子がこれを受理する限り、男女交際は継続するものと見なされる。

 身体的な接触も同様で、女子が「触りたい」と思ったら、男子はそれを察して彼女の利き腕とは反対側の手を差し出さねばならない。これは一種の条件反射になるまで訓練されるので、そのうちに付き合っている女の子が自分のサイドに近寄ってくると、自動的に手が伸びるようになる。

 ただし、身体的な接触はあっても性交渉にまで至るケースは希である。これは、地域を問わず私の知人に聞いた結果だが、中学校期に肉体関係を経験した男女は、わずか2人しかいなかった。全国的に見ても、珍しかったものと思われる。

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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
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