王様を欲しがったカエル

　ところが、規制推進派の間では、このような「水着グラビア」が性的搾取の証拠と見なされます。何故かというと、彼らには「生身の女性と写真女性を見比べてはいけない」というマナーを理解するための知性も経験もないからです。つまり、彼らはいつでも「図像としての女性」と「実在する女性」を比較しているんです。

　これは文明人にはあるまじき行為で、平均的な知性を持つ近代人であれば、写真の対象は可愛くあるいはエロティックに撮影、もしくは描写されるべく、照明や化粧、衣装やポーズなどに相応の努力が払われているため、たとえ被写体が選ばれた女性が美人であることを差し引いても現実からは遊離しているので、現実の女性と比較するのは誤りだという順当な推論を行い、これを実行するだけの理性があります。

　たとえば、写真の話になりますが、被写体の筋肉が極度に弛緩している状態では、どんな美人でもだらしなく、醜く写ってしまうものです。当然のことながら、撮影者はこのような状態にならないよう、適度な緊張感をモデルに与えるように撮影現場をコントロールする能力が求められます。もちろん、こうした状況下における撮影現場は「日常の自然な状態」とは程遠いもので、とても「普通に生活している女性」と比較することはできません。すなわち、撮影現場そのものが非日常なんです。

　にもかかわらず、彼らが写真なり図像なりと実在する女性を同一視するのは、

１）非文明地域の出自で、写真や図像が完成するまでのプロセスが理解できない。

２）知能が一般よりも極めて低く、写真や図像が完成するまでのプロセスが理解できない。

３）女性との交際経験があまりない等の理由で女性に対して耐性が無く、女性が被写体の写真や図像を見ると興奮して知能が低下する。

４）性的に興奮しやすい傾向があり、女性が被写体の写真や図像を見ると興奮して知能が低下する。

のいずれか、もしくは複数でしょう。しかし、常識的に考るのであれば、大学の教授なり評論を行っている人間が（１）や（２）のケースに当てはまる可能性は低く、実際は（３）か（４）、もしくは２つが合わさったケースであると想定が出来ます。つまり、性行為関連の事象になると性的興奮が原因で視野狭窄状態になり、冷静な判断能力を失ってしまうタイプの男性で、これが先ほどから何度も述べている「射精をセックスのプライオリティの上位に持ってきてしまうタイプ」の男性と同じなんです。

　私がこのことに気付いたのは、ＳＭ業界に入ってからしばらくした後で、いわゆる乱交系の好事家たちと交流をもってからでした。この、乱交好きの男性というのが、絶対に縛りやバイブの正しい使い方を覚えようとしないんですよ。最初は「あー、趣味趣向が違うから仕方ないんだな」と思っていたんですけど、どうも理由が違う。縛り方を教えてくれと言ってきたのに、レクチャーしている最中に興奮してくると、いきなりパンツを脱いで女の子とセックスしたがるヤツがけっこういるんです。

　これには私も怒って「何で、そう我慢できないんだ？」という趣旨の質問をしたら、「性的に興奮してくると、とにかく射精するか冷静になるまで頭がどうにかなってしまう。我慢が出来ないんだ」という趣旨の答えが返ってくるんです。それで、初めて乱交系の自称Ｓ男性の大半が、セックススキルに関して低い理由が分かりました。

　そりゃそうでしょう。セックスに思いをはせた瞬間から、頭に血が上って視野狭窄状態になってしまったら、スキルのことなんてどうでもよくなりますわな。だから、この手の男性が覚えられるセックススキルの大半は、前戯に関するものに集中しているんです。これは、本人達にも「女性とセックスする時は互恵的な方が良い」という意識が働く結果ですが、それ以上、つまり挿入から先のことは考えられないんですね。

　現実のセックスというのは、男性器を女性器に挿入した後もポジショニングやその他の要素を状況に応じてコントロールしていく必要があるんですが、もうその段階で頭に血が上ってしまっているので、自制心を発揮することができないんです。ましてや、射精と無関係な縛りやバイブに関しては、そもそも興味すら沸きません。それどころか、自己を正当化するために「道具を使うのは邪道だ」と主張している一団すら存在しています。

　こうなると、少しでもセックスの分かっている人なら理解できるでしょうけど、先天的に女性器が濡れにくいタイプの女性なんかは地獄なわけですよ。相手がゼリーやその他の補助剤を使おうとしないから、セックスしていても痛くて仕方がないんです。にもかかわらず、こういう体質的な問題を、彼らは「前戯の不足」と解釈してしまうので、根本的な解決がまったく出来ないんですね。

　で、ここまで書けばお分かりでしょうけど、少なくとも男性のセックスが上手い下手と、この「性的に興奮すると視野狭窄になる」という傾向には明白な関連性があります。つまり、性交中も冷静な男性ならセックススキルが身に付きますし、興奮して忘我の状態になるタイプの男性は、何度セックスしても上達するのは前戯ぐらいが関の山なんです。だから、セックスが上手いか下手かは、経験値よりもむしろ「生まれ持った才能」に左右されるという説が有力です。ここで、今まで書いてきた話の大半が繋がったはずです。

　実は、前述の結論を最初に書くことも出来たんですが、ネット上の反応が見たくてわざと遠回りをした書き方をしたところ、案の定というか「そんなものには興味がない」とか、セックススキルに対して茶化したリアクションをする人が結構いて笑わせてもらいました。

　ごめん。わざとだよ。でも、無料で書いてる文章なんだから、これぐらいは作者特権でアリだよね？