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サッカーとランニングフォーム

 現在の作業は、ムック2冊、短編1本、長編のシノプシス1本、そして政治活動2つ、といった按配。かなり、いい感じに忙しい。問題は肉体で、色んなところにガタが来始めている。ただし、今後のことを考えると、最初に治しておかなければならないのは、足の小指の炎症。前にも書いたが、これの原因は歩き方だから、歩行を変えるしかない。リハビリの医師と相談して、ジョギング、ランニングをピッチ走法からストライド走法に切り替える訓練を開始する。

 ピッチ走法とは、歩幅を狭くして足の回転を上げる走り方で、大体の日本人はこのやり方で走る。上半身がぶれないというか、正確には上半身の可動域を狭めて走る(上半身を捻らなければ、その分だけ歩幅は狭まる)ので、胴体の捻れが少なく、頭部の上下動も少ない。これに対して、ストライド走法とは、足を大きく前に振り出すイメージで歩幅を広くして、胴体を捻るようにして走る(ことで、体幹の筋肉を走力に変換する)ので、全身の柔軟性が要求される。

 この2つの走り方で、一番大きな違いは膝の屈伸と足の着地点。ストライド走法では、足を大きく前に振り出すので膝がぴんと伸びて、着地の際には足の踵から落ちる(足を伸ばしたまま地面に落とせば、振り子のように自然と踵から落ちる)感じである。これに対して、ピッチ走法では走行中でも膝は伸びきらず(膝を伸ばさない分だけ、歩幅が狭まる)、足の着地は踵からではなくて足裏全体を垂直に落とす感じになる。

 また、聞いた話によると、自分にとってどちらの走り方が向いているかは、仰向けに寝てみると判断がつくそうだ。ピッチ走法向きの人は、仰向けに寝ても膝が伸びきらず、ストライド走法向きの人は、膝裏が床に着くぐらい柔らかい傾向があるらしい。

 で、私の走り方だが、これが極端なピッチ走法。ほぼ、踵が浮いた状態で移動している。こうなると、全体重が足裏の前側、つまり指の付け根にかかってくることになり、着地した衝撃の分散は親指の付け根から、小指の付け根への横方向に向かうことになる。そうすると、足の薬指が小指を圧迫する形になって、長期間これが続いた結果として炎症が起こっていたのである。

 じゃあ、何でこんな走り方になってしまったのか? というと、大きく分けて理由は2つある。1つはサッカー、もう1つはそのサッカーをやっていた時期に起こした膝の怪我だ。

 私がサッカーをしていた時期の花形ポジションは、ウィングと呼ばれる前線の左右端に位置する攻撃の選手だった。フィールド上の両端から攻撃を仕掛けるので、鳥の翼が広がったイメージから、ウィングと名付けられたのだと想われる。

 サッカーというスポーツにおいて、サイドからの攻撃は非常に有効だ。端から攻撃されると、守りの選手はボールと中央の攻撃選手(センターフォワード)を同時に見ることができなくなるからだ。フィールドの端から前方向に上がってくるボールの位置を確認していると、フィールドの中央にいるセンターフォワードが見えなくなる(また、優れたセンターフォワードは、そのようなポジションをとるように動く)し、センタフォワードを確認していたら、ボールの正確な位置が分からなくなってしまう。そうしている間に、守りの選手はどっちつかずの状態(これを、ボールウォッチャーと呼ぶ)になって、ゲームに参加できない状態が続くようになる。

 だから、当時のサッカーチームでは、一番のテクニシャンをウィングにすることが常套手段だった。他の選手は、とにかくウィングにボールをパスし、これがチーム全体の攻撃の起点となる、というのが通常のゲームプランだったのだ。

 ボールを受けたウィングはそのままドリブルでサイドを駆け上がり、センタリングを上げるか、あるいは中央に切れ込んでシュートを決める。いずれにせよ、ウィングがボールを持っている間は、相手の守備陣はウィングに寄っていかなければならないので、他の選手へのマークが甘くなる。そうすると、他の選手は相手のマークから解放されるため、攻撃に参加することが可能になる。

 で、当時の私のポジションだが、残念ながら優れたテクニシャンではなかったので、担当したのはサイドバックだった。つまり、守り側の端っこで、花形のウィングを止めるのが仕事である。

 サイドバックにとって、一番の恥はウィングの突破を許すことである。最悪のケースは、ドリブルで抜かれてしまうことだ。が、もうお分かりだろうが、ウィングにはチームで一番ドリブルの上手い選手が配置されているのである。ドリブルが上手、というのはボールの持ち方云々以前に、相手のどちら側の足に重心がかかっているかを瞬時に判断できる能力があることを意味している。

 たとえば、守りの選手が右足に体重をかけていたとしよう。ドリブルが上手なヤツは、その足のある方向にボールをちょんと蹴ってくる。守りの選手は、その足に体重がかかっているので、足を出してボールを止めることができない。これは、やってみると分かるのだが、いったん反対側の足(このケースでは左足)に体重を移動させてからじゃないと、右足を宙に浮かせることが不可能なのだ。しかし、その間にボールは脇をすり抜けていく。これが、ドリブル突破の基本テクニックである。

 では、このような優れたドリブラーに対抗するにはどうすれば良いのか、というと左右の足に体重を瞬時にシフトできるよう、踵を浮かせて両脚に体重を均等にかけるフォームが正解。同時にドリブルで突進してきた相手に抜かれないように、その姿勢でじりじり後ろに下がってドリブラーとの距離を保つ。これを、リトリート(遅滞)という(当時は、こんな外国語は使われてませんでした。念のため)。

 じゃあ、何でリトリートをする必要があるのかというと、味方の守備の選手が、横からウィングを挟むのを待つためだ。そうすると、ウィングは前と横から挟まれる形になるので、逃げ場が後ろにしかなくなるし、前方のサイドバックの脇をすり抜けることもできなくなる。これが、守備側の基本戦術だ。

 余談になるが、この方法があまりにも上手くいってしまったため、ウィングというポジションは、その後に消滅することになる。最近では、余程優れたドリブラーがいない限り、プロの世界でも純粋なウィングを使うケースは希だ。ただ、個人的な感想だが、やはりウィングというのは華のある役割で、観客のすぐ側(サイドにいるということは、すぐそばに観客がいるということでもある)を、ドリブル突破で相手を抜き去る姿には興奮せざるを得ない。これがあるのとないのとでは、チームへの応援の気合いが違ってくると言っても過言ではない。

 しかし、今は華のない私の話である。ウィングのドリブル突破を止めるため、私は必要以上に踵を浮かせ、前傾姿勢で守備をするようになった(エビみたいな格好ですね)。すると、ランニングもピッチ走法がメインになってしまったのだ。この状態でしばらくプレーをしていると、私は監督の指示でセンターフォワードにコンバートされた。理由は私のサイドバックで身につけたフォームが、センターフォワードとしては有利だったからである。

 当時のセンタフォワードのお仕事は、相手の守備陣をかいくぐって、ウィングが配球してくれるボール(センタリング)をゴールに押し込むことである。センタリングが高ければヘディング、低ければボールに足を合わせることになる。その際に最悪なのは、来たボールをゴールバーの上に跳ね上げてしまうシュートを打つこと、今風に言うと「宇宙開発」をやってしまうことだ。

 これを防ぐ一番良い方法は、ボールを懐に入れて蹴ること、すなわち足の踏み込みを大きくして、上半身をボールに被せるようにすることで、ボールを身体の真下あたりで蹴ることだ。これも実際にやってみると分かるが、ボールを思い切り前に置いて、身体を反らせながら足を伸ばして蹴ると、ボールはかなりの確率で宙に浮く。下からすくい上げるような格好で、ボールを蹴ることになるからだ。つまり、浮かせないためには、正反対の動作をすればいい。

 というわけで、私の出番である。踵を浮かせ、やや前傾姿勢で走っているために、私がボールを浮かせることは、まずない。ストライド走法ではないので、大きく踏み込んで蹴ることは難しかったが、ゴール前ならそれほどキック力はいらない。数メートルの距離を、ゴールキーパーをかわしてボールを押し込めばいいからだ。むしろ、歩幅が狭い分だけ、横から来たボールに足を合わせることができる。

 こうして、私はサッカーを辞める前年度には、典型的なワンタッチゴーラーになっていた。しかし、ウィングの消滅と同時に、このポジションも消えていった。というよりも、ウィングよりも消滅の度合いは激しかった。

 おそらく、このフォームで大活躍した最後の大選手はロマーリオだろう。

 彼のゴール集を見ると明白だが、若い頃は上半身を反らして打つ、浮き球系のシュートが多いのに、バルセロナ時代(ユニフォームが違うので一目瞭然だよね?)のゴールの大半を、上半身が僅かに前に傾いた姿勢で打つグラインダー系で決めている。

 一方の私はといえば、40にして歩行訓練の日々だ。ちゃんと走れるようにならないと、健康維持ができないからね! まったく!

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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
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