2ntブログ

Entries

サッカーとメディアの悪影響論

 皆さん、お返事が遅れて申し訳ありません。

 W杯観戦モードで、全てがグッチャグチャになっております。

 我が日本は無事にグループ予選を突破。初の自国開催以外での決勝トーナメント進出です。しかも、試合は本日行われます。

 いやあ、嬉しい。嬉しすぎる。どれぐらい嬉しいかというと、『シグルイ』の藤木源之助VS伊良子清玄で、伊良子が勝った時の賎機検校並の喜びようですよ。何が嬉しいって、馳星周とか金子達仁とか杉山茂樹とかの、電波理論でサッカーをダラダラ語るライター陣の妄想が木っ端みじんになったのが嬉しいね!

 彼らに共通しているのは、オランダやスペインなどの、ヨハン・クライフというオランダ生まれのスーパースターの影響下にある、攻撃的な戦術に特化したサッカーの信奉者という点だけど、どっちの国もW杯では優勝したことがないわけで、優勝したことのない国のサッカーを「理想だから真似しなさい」って言われても、古株のサッカーファンは誰も納得しませんよ。

 だから、この3人はW杯よりも「欧州チャンピオンズリーグの方がクオリティが高い」とか「サッカー文化が根付いた地域は、代表よりも地元チームを応援する」なんて寝言を言ってる(これは村上龍も言ってたな)わけですが、チャンピオンズリーグとW杯では大会としての規模や意味が全然違う上に(所詮CLはクラブレベルの試合に過ぎない上に、年に1回は開催される)、スペインで代表に人気がないのはW杯に優勝した経験がないために、国民からあまり過大な期待をかけられていないからで、これはJリーグができる前の日本代表と一緒。サッカー「文化」が根付いていなくても、代表人気の無かった時代の日本を知っている私からすると「どんだけ嘘ついてるんだよ」という気持ちにさせられますわな。

 スポーツの世界は「勝ってナンボ」という側面があるわけですが、サッカーという競技は手という繊細なコントロールが可能な身体の部位を「使ってはいけない」というルールに特徴があり、このため他の球技と比較すると予測不可能な事態が出現し易いため「大物食い」が起こりやすい傾向があります(真逆のスポーツの代表は、両手を使って相手の上半身の前面のみを殴るボクシングで、ビッグアップセットはほとんど起こりません)。だから、戦前の予想が成り立ちにくいんで、予想が間違っている点に関しては、この3人が特に批判の対象ってわけではありません。私も今回のW杯の勝敗的中率は50%ギリギリですから、他人様を批判する資格はナッシングです。

 彼らが奇妙なのは、サッカーというスポーツを使って「日本論」(それも否定的な内容)を展開することで、インターネットがこれだけ発達した時代に、果たして意味があるのかどうかという点が疑問なわけです。

 断言しても良いですが、現代サッカーは国の人口や経済力、政治体制に左右されますが、国民性にはそれほど左右されません。各国に情報網が張り巡らされ、そこから得られた情報を利用して自国の戦力を強化しているからです。この傾向はトッププロになればなるほど強く、今回のW杯で明らかに特異な戦い方をして結果を出しているのはチリ代表ぐらいです。しかし、監督のマルセロ・ビエルサはアルゼンチン人で、これがチリの文化を反映したものとは口が裂けても言えません。

 現代サッカーはゴールキーパーを除いた10人の選手のうち、守備が4人、中盤の選手が4人の合計8人が守備を担当し、残りの2人が特別な任務を背負う、という形式がスタンダードになりました。負けが込んでいた時期の日本代表は、このスタンダードを逸脱した戦術にこだわっていた(この点が日本的と言えば日本的かもしれない)のですが、W杯開幕直前になって監督の岡田さんが正気に返ってスタンダードなものに変更したところから、快進撃が始まっています。つまり、選手が悪かったのではなく、戦術が悪かったわけです。

 そして、今回の日本代表が素晴らしいのは、直前になって変更した戦術にきちんと対応ができているところです。まだW杯に出られなかった時代の日本代表では考えられなかった現象で、選手の戦術理解能力が高まっている証拠でしょう。分かり易く言うと「臨機応変」に事態に対処できるようになったということです。

 サッカーのような、選手が時間帯によって守備も攻撃も担当しなければならない競技では、このような高い状況対応能力が勝敗の鍵を握ります。4年前のドイツW杯の日本代表は試合中の戦術変更ができずオーストラリア代表に劇的な敗北を喫しました。

 で、ですね。何でこんな話を長々としているかと言うと、規制推進派がいつも唱えている「ソフトの与える悪影響」の最たるものが、このW杯だからです。決勝戦だけで観戦視聴者数は少なくみつもっても2億数千万人。最近の日本代表戦に限って言うと、関東圏で、

VSカメルーン(45.2%)
VSオランダ(43.0%)
VSデンマーク(早朝枠40.9%)

 という平均視聴率を叩きだしています。まあ、概ね2人に1人の割合で試合を観戦しているわけです。これで悪影響が出ないわけが無い。私もサッカー観戦のために平均睡眠時間が3時間弱にまで減り、周囲とサッカーの話をしていないとイライラしてしまい、仕事もやる気が起きず、約束もあっという間に忘れる有様ですよ。

 しかも、こうやって仕事とは全く無縁のへっぽこサッカーライターの名前を実名挙げてボコッていたりするわけで、もう確実に凶暴化もしてますよね。

 そして、言うまでもなく、サッカー嫌いの人間にとって、このコンテンツは暴力以外の何物でもありません。好きでもないサッカーの話題を、職場や学校で毎日振られるところから始まって、サッカーを見ていないと言えば奇異の目で見られ(特に静岡と埼玉)、正直になって「サッカーなんて興味ないんだけど」と告白すれば、「いや、面白いから見なよ!」と新興宗教ばりの勧誘を受けるのは軽い方で、最悪になるとみんなから無視されて、教室の片隅で昼ご飯を食べちゃういじめられっ子状態……。

 ちなみに、ヨーロッパのビジネスシーンでサッカーの話題を口にすることは「絶対にやってはいけない」行為の1つで、商談や会社内の人間関係を破壊します。私の学生時代からの友人で、外資系企業に勤務している奴がいるんですが、彼なんかは2006-2007シーズンのチャンピオンズリーグで、ACミランというイタリアのサッカーチームが優勝したのを見て、イタリア人の上司に「ACミラン、優勝、おめでとうございます!」と賞賛したところ、この上司がミランの敵対チームであるインテルナツィオナーレ・ミラノのサポーターであることが発覚。1年半は口をきいてもらえなかったそうで、彼自身も上司の顔色がさっと変わったのを見た瞬間、「俺はクビになる!」と背中から大量の冷や汗が吹き出したそうです。

 まあ、そういうわけで、メディアの悪影響を唱えたいのであれば、ポルノなんてちんけなものを批判の対象にせず、サッカーを批判の対象にするのはいかがでしょうか? その時に、前述した金子とか杉山の力を借りると、適当な日本論までつけてくれるんでお得ですよ。

3件のコメント

[C3923] EURO2004のギリシャに

EURO2004のギリシャに近いんでしょうか。
今日は早めの試合ですから寝れますねw
  • 2010-06-29
  • 投稿者 : KENJI
  • URL
  • 編集

[C3928] KENJIさん

残念ながらPK敗でした。
日本はチームとしてパラグアイに近いと思います。つまり、昨日の対戦は似たもの同士の戦いでした。
ギリシャのレーハーゲルは、守備に関してはオシムと一緒でマンマークです。今大会ではチリ代表がこの守り方でした。
  • 2010-07-01
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
  • 編集

[C3930] 1D+1

>サッカーという競技は手という繊細なコントロールが可能な身体の部位を「使ってはいけない」というルールに特徴があり

 なるる。離散率が高い設計なのね。そーいや兄弟ゲームのラグビーは手を使う代わりにボールあんなにしちゃってますな。

 サッカーに限りませんが、ルールが高度なゲーム(球技はほとんどそうですナ)ではルールによってゲームが管理、支配されますから、そもそも国民性とかそんなん出ないもんでしょ。
 バレーボールとかゴルフとかテニスとか、みんなそー。競技レベルが上がるほどそー。ま、当然だけど。

>国民からあまり過大な期待をかけられていないから

 アメリカもじゃない?メルケルとキャメロンが並んで観戦してるのは出たけど、オバマがどーとかってのはなかった気がする。言うまでもなくアメリカにゃサッカーなんてちっとも根付いてないよネ。それであれだけの力あるのがスゴいけど。

 まー影響力はばかでっかいよネ。
 ロクすっぽワカりもしない上に、アマノジャクなタチもあるやつがれをして生中継見させたワケですから。
  • 2010-07-01
  • 投稿者 : 電気屋
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

0件のトラックバック

トラックバックURL
http://toriyamazine.blog.2nt.com/tb.php/307-4593e7fb
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

Appendix

プロフィール

toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
です。★マークを@に変えて使ってね。

FC2カウンター

カレンダー

03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -

最近の記事

月別アーカイブ

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

読書カレンダーBLACK

Powered By 読書カレンダー

Twitter...

toriyamazine Reload

ブログ内検索