王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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予想していたことだが、仕事での朝帰りが連発して心身共に消耗。サブディレクターとのカルカソンヌ対戦も5連敗といいところがない。現在、並行して行っている作業は、
1)撮影スタジオの片づけ。
2)同上撮影用の準備。
3)制作中の雑誌用ゲームプレイ&レビュー。
4)駆け込みでの4ページ分の記事書き。
5)新雑誌用の企画立案。
となる。この中でもっとも精神的に大きかったのは(2)で、企画当初とスタジオの組み方を変更。家具店や日曜大工の店を回ってスタジオの設営に必要な素材を探したのだが、適当な品物が見つからず、レイアウトを変えることを余儀なくされた。
時間的に大きかったのは4ページ分の記事書きで、これは以前から編集部内で討議をしていた新企画用に文体と内容を変更したものを執筆。した結果として予想以上に時間をとられて四苦八苦。しかし、これで新しい形式の雑誌を創刊できる目処が立った。今年はゲーム雑誌を除いて、過去の遺産を食いつぶす行為ばかりやっていたから、かなり気分が楽になる。いつまでも、同じことをやっていても気が滅入るだけだし、読者だって悪い意味でのマンネリは受け入れない。敏感なのだ。
ただ、ここまで来る道のりで懸案になっていたのが、この新規企画のテイスト。リアリティ重視=ポルノにするか、ファンタジー重視=エロティカ重視にするのかで、編集部内の意見調整ができなかった。というか、正確には私が理解できなかった。
ポルノというジャンルは、ルネッサンス以降の人文主義と科学主義に基づくエロティカなので、性の神聖性や神秘性を否定することを前提として、性描写には医学的な正確性を(一定以上)要求される。ところが、この「一定以上」というのがくせ者で、作者や読者が性的に未熟だと、本人達がポルノだと思っているものが、ポルノではなくなってしまうという珍現象が発生する。
たとえば、有名な話ではあるが、処女のヤオイ系漫画家がボーイズラブ作品を描いたら、男性の股間にあるはずがない穴(通称、やおい穴と言います)が空いていたというのは序の口で、ペニスの向きが上下逆になっていたとか、すごいのになると亀頭に顔が描いてあった(バイブ見て描いたんですな)というものまである。もちろん、本人達は基本的にポルノという認識で作品を描いている(さすがに、やおい穴はメジャーになってしまったので誤認識もほぼ無くなったようだ)のだが、客観的に見ると、これはポルノじゃないわけだ。もちろん、同様の現象はボーイズラブだけでなくヘテロセクシャルのポルノ作品でも散見できる。
そこで、制作者サイドとしては、どこまで医学的・社会学的な正確性を記述に反映させるかによって、ポルノとしての濃淡を決定する判断を迫られる。私はおおよそ正確性重視=ポルノ重視派で、他の編集員はファンタジー重視。この溝を埋める必要があったわけだだが、これがなかなか埋まらない。
私はリアルじゃなければ嫌なのだ。私が腐女子だったら、上下逆向きのペニスが描いてあるボーイズラブでオナニーはできない。ヘテロセクシャルでも同様。こりゃ嘘だなって思った瞬間に萎えちゃえません?
………などと、偉そうなことを言っていたのは先日まで。実は金曜日に読者の方から電話があって、次回作として動画を使ったエロゲーを集めたムックを作って欲しいという要望があった。こういう要望はエロ本出版社によくかかってくる。制作者としてはまたとないチャンスなので、できる限り長い時間話をするように努めているのだが、この読者さんのリアルに関する認識が、私の偏狭な価値観を破壊してしまったのである。
読者の方「動画とか、ムービーが見たいんですよ」
私「可能な限り、ご要望にお応えします。できる限り速やかに、編集会議で………」
読者の方「動いていると、リアルだと思うんですよ」
私「………え?」
読者の方「だから、動いている方がリアルですよね?」
私「それは、ポリゴン作品ということでしょうか?」
読者の方「いや、アニメもです」
私「アニメというのは、リミテッドアニメのことですか? 普通に放映されている」
読者の方「そうです。動いている方がリアルなんですよ」
私「なるほど」
この会話がきっかけで、私が20年以上に渡って抱えていた謎は解けた。その謎とは、マンガ系の絵描きにアニメーション設定資料を使って絵の練習をする一群が存在することで、以前から私は「絵描きなんだから、本物をデフォルメして描けよ。カスが」と罵倒をしていたのだが、この読者さんのリアル認識が通用するとしたら、動いてるものはすべからくリアルなわけだから、トメ絵よりもアニメの方がリアルと言うことになり、アニメを見ながら絵を練習するのは正しい行為ということになってしまうのだ。
もちろん、私は読者想いだから、自分のリアルよりも読者のリアルを尊重する。これからは、動いていたらリアルという判断で作品を創っていこう。
1)撮影スタジオの片づけ。
2)同上撮影用の準備。
3)制作中の雑誌用ゲームプレイ&レビュー。
4)駆け込みでの4ページ分の記事書き。
5)新雑誌用の企画立案。
となる。この中でもっとも精神的に大きかったのは(2)で、企画当初とスタジオの組み方を変更。家具店や日曜大工の店を回ってスタジオの設営に必要な素材を探したのだが、適当な品物が見つからず、レイアウトを変えることを余儀なくされた。
時間的に大きかったのは4ページ分の記事書きで、これは以前から編集部内で討議をしていた新企画用に文体と内容を変更したものを執筆。した結果として予想以上に時間をとられて四苦八苦。しかし、これで新しい形式の雑誌を創刊できる目処が立った。今年はゲーム雑誌を除いて、過去の遺産を食いつぶす行為ばかりやっていたから、かなり気分が楽になる。いつまでも、同じことをやっていても気が滅入るだけだし、読者だって悪い意味でのマンネリは受け入れない。敏感なのだ。
ただ、ここまで来る道のりで懸案になっていたのが、この新規企画のテイスト。リアリティ重視=ポルノにするか、ファンタジー重視=エロティカ重視にするのかで、編集部内の意見調整ができなかった。というか、正確には私が理解できなかった。
ポルノというジャンルは、ルネッサンス以降の人文主義と科学主義に基づくエロティカなので、性の神聖性や神秘性を否定することを前提として、性描写には医学的な正確性を(一定以上)要求される。ところが、この「一定以上」というのがくせ者で、作者や読者が性的に未熟だと、本人達がポルノだと思っているものが、ポルノではなくなってしまうという珍現象が発生する。
たとえば、有名な話ではあるが、処女のヤオイ系漫画家がボーイズラブ作品を描いたら、男性の股間にあるはずがない穴(通称、やおい穴と言います)が空いていたというのは序の口で、ペニスの向きが上下逆になっていたとか、すごいのになると亀頭に顔が描いてあった(バイブ見て描いたんですな)というものまである。もちろん、本人達は基本的にポルノという認識で作品を描いている(さすがに、やおい穴はメジャーになってしまったので誤認識もほぼ無くなったようだ)のだが、客観的に見ると、これはポルノじゃないわけだ。もちろん、同様の現象はボーイズラブだけでなくヘテロセクシャルのポルノ作品でも散見できる。
そこで、制作者サイドとしては、どこまで医学的・社会学的な正確性を記述に反映させるかによって、ポルノとしての濃淡を決定する判断を迫られる。私はおおよそ正確性重視=ポルノ重視派で、他の編集員はファンタジー重視。この溝を埋める必要があったわけだだが、これがなかなか埋まらない。
私はリアルじゃなければ嫌なのだ。私が腐女子だったら、上下逆向きのペニスが描いてあるボーイズラブでオナニーはできない。ヘテロセクシャルでも同様。こりゃ嘘だなって思った瞬間に萎えちゃえません?
………などと、偉そうなことを言っていたのは先日まで。実は金曜日に読者の方から電話があって、次回作として動画を使ったエロゲーを集めたムックを作って欲しいという要望があった。こういう要望はエロ本出版社によくかかってくる。制作者としてはまたとないチャンスなので、できる限り長い時間話をするように努めているのだが、この読者さんのリアルに関する認識が、私の偏狭な価値観を破壊してしまったのである。
読者の方「動画とか、ムービーが見たいんですよ」
私「可能な限り、ご要望にお応えします。できる限り速やかに、編集会議で………」
読者の方「動いていると、リアルだと思うんですよ」
私「………え?」
読者の方「だから、動いている方がリアルですよね?」
私「それは、ポリゴン作品ということでしょうか?」
読者の方「いや、アニメもです」
私「アニメというのは、リミテッドアニメのことですか? 普通に放映されている」
読者の方「そうです。動いている方がリアルなんですよ」
私「なるほど」
この会話がきっかけで、私が20年以上に渡って抱えていた謎は解けた。その謎とは、マンガ系の絵描きにアニメーション設定資料を使って絵の練習をする一群が存在することで、以前から私は「絵描きなんだから、本物をデフォルメして描けよ。カスが」と罵倒をしていたのだが、この読者さんのリアル認識が通用するとしたら、動いてるものはすべからくリアルなわけだから、トメ絵よりもアニメの方がリアルと言うことになり、アニメを見ながら絵を練習するのは正しい行為ということになってしまうのだ。
もちろん、私は読者想いだから、自分のリアルよりも読者のリアルを尊重する。これからは、動いていたらリアルという判断で作品を創っていこう。
2件のコメント
[C26]
- 2007-09-10
- 編集
[C29]
Anchangさん
今、気づいたんですけど、私に電話をかけてきた読者さんがおっぱい星人だとしたら、「動いているのがリアル」は辻褄の合う話ですよね。ぶるんぶるんって感じで。巨乳ものに関してですけど、残念ながら応募してくる女性に美乳がいないので製作の目処が立ちません。
今、気づいたんですけど、私に電話をかけてきた読者さんがおっぱい星人だとしたら、「動いているのがリアル」は辻褄の合う話ですよね。ぶるんぶるんって感じで。巨乳ものに関してですけど、残念ながら応募してくる女性に美乳がいないので製作の目処が立ちません。
- 2007-09-10
- 編集
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本物は動く ⇒ アニメは動く ⇒ マンガよりアニメはリアル ということなんでしょうか。動きがリアルとかいうのとも違うような気がしますけど。乳ゆれなんてありえない動きするし。でも個人的には好きなんでwがんばって作ってください。