王様を欲しがったカエル

　ようやく撮影スタジオの片づけも終了し、撮影用の資材も調達。撮影進行表に若干の記載不備があるが、これでおおよその準備は整った。先々日から、新企画に関する話し合いも行われ、１つの企画を除いて方向性はほぼ固まる。

　仕事と平行して国会が始まったので政治関連の情報収集も開始。展開は予想とはまったく違ったが、××がちゃんと役目を果たしてくれたのはラッキー………などと考えている最中に安倍首相辞任の報が入って大パニック。就任当初から短命内閣と分かっていたとはいえ、このタイミングで辞めるのは想定外。お陰様で集めていた情報が全てパーになる。

　安倍が辞任に追い込まれた最大の原因は参院選で多数の議席を失ったことにあるが、その遠因となった理由は２つで、経済政策における無知と外交問題だろう。現在の日本の首相に求められるのは一にも二にも経済政策。小渕内閣当時、既存のケインズ経済学に基づく公共事業への税金投入が失敗に終わり、国が借金まみれになっても景気が回復しなかったことから、それ以外の経済政策を持った議員なり政党なりが国政を握るのは当然のことで、長期安定を誇った小泉内閣にはこれがあった（竹中を重用）。これと比較して、社会党や共産党が急速に退潮していったのは、党の方針により経済政策が１つしかなく、これが時代にマッチしなかったことも大きな理由の１つである。

　しかし、安倍は経済政策に興味を示さず、教育問題や防衛庁の格上げなど、景気上昇とは何ら関係のない政策にばかり力を入れていたのだから、支持率が低下するのは当然だろう。財務大臣が尾身幸次なのに、内閣府経済財政諮問会議議員に御手洗冨士夫を起用するのはおかしい。消費税の税率を維持したい（尾身幸次）のか、税率を上げたいのか（御手洗冨士夫）すらはっきりしない。

　もう１つの外交問題は、安倍の出自と関係のあることで、父親である安倍晋太郎や祖父に当たる岸信介と同様の大アジア主義者だったのは致命的だった。大アジア主義者は、黄色人種（と隣接するロシア）のみで経済ブロックを形成し、白人（欧米）に対抗するという妄想を抱きやすいが、当然のことながら黄色人種の国家が一体化したら、どの国がイニシアティブを握るのかという問題が発生するために、同じ大アジア主義者でも幾つかのタイプがある。安倍は典型的な「日本がリーダーシップを採る」派だったので、「中国がリーダーシップを採る」派の大アジア主義者（古くは九州系の右翼、最近では新左翼の一部がこれに該当する）とも折り合いが悪く、また白人との強調を目指す親米派とも上手くいかなかった。

　そして、とどめは松岡利勝の自殺だろう。現職国務大臣の自殺という前代未聞の不祥事だけでも支持率の急速な低下は避けられなかった。国会議員は選挙民からの支持を得るのにイメージは非常に重要な要素である。首相がこれほど自分のイメージに無頓着だったのは、戦後憲政史上例がないのではないか？

　個人的には、ポルノという仕事の関係上、バリバリのクリスチャンである谷垣禎一が首相にさえならなければオッケーだけど。既に新聞のインタビューで、ポルノ関連の法整備強化を示唆しているだけに、仮にこれが自分の身内へのリップサービスだったとしても警戒せざるを得ない。日本でクリスチャンの首相は勘弁して欲しいよ。まったく。