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新聞の「嘘」の付き方。同人誌即売会のグレーゾーン。

 先週からの風邪が、まったく治らず。最初は単なる微熱がでるだけのタイプかと思っていたら、私によくありがちな下痢コースで、心身共に消耗。特に日曜から火曜あたりは、直腸がホワイトホールに直結したんじゃないかと思うほどの酷さだった。食欲も湧かず、ここ数日で3キロ減量。水分が吸収できないから当然なんだけどね。

 で、マスコミの方は相変わらずロリコン叩き、オタク叩きにご執心(この2つは厳密には異なるが、マスコミからすれば似たようなものなんでしょ)のようで、前の日記で言及した産経新聞もこの有様。

都施設で過激マンガ販売 即売会の規制強化へ
10月30日8時0分配信 産経新聞

 東京都の公共施設で開かれたマンガ・アニメの同人誌即売会で、少女を性行為の対象とした過激なポルノコミックが公然と販売されていたことが分かり、都は29日、即売会の規制や監視強化に乗り出す方針を固めた。

 事前に作品内容の詳細なチェックを主催者側に義務付け、即売会当日の巡回を徹底してコミックを実際に閲覧するなどの対応を検討する。都の青少年健全育成条例に抵触する場合は、施設の貸し出し禁止や即売会の開催中止などの措置を取る構えだ。

 関係者によると、マンガやアニメの即売会は、商業誌とは異なり、自主規制に委ねられることが多い。そのため、主催者によっては少女を性行為の対象とした過激なポルノコミックが公然と販売されていた実態がある。

 都が規制や監視強化に乗り出すきっかけとなったのは、外郭団体「東京都中小企業振興公社」が運営する「都立産業貿易センター」で開催された同人誌即売会で、過激な性行為などを描いたコミックが販売されていたことから。

 同センターは「台東館」(台東区)と「浜松町館」(港区)の2館があり、年間で計100回程度の即売会が開催されている。このうち台東館では平成17年3月から今年5月にかけて、「マニアック総合同人誌即売会 アブノーマルカーニバル」などと題された即売会が計5回開かれていた。

 そのため都では、新たにコミックのサンプルを閲覧したり、即売会当日に販売される同人誌の内容を職員が確認することも視野に対応策を具体的に検討することにした。

 同人誌の即売会をめぐっては、警察庁の研究会が昨年12月、「子供を性行為等の対象とするコミックが公然と販売されている」と、規制強化の必要性を打ち出していた。

 都産業労働局では「成人向けの作品の販売自体を禁止するわけではないが、主催者側に法令順守の徹底を求めていく」としている。


 何というか、事実を組み合わせて、嘘の意味がとれるように、よく改ざんしてあるなぁというのが正直な感想。この手の「事実を足し引きして、別の意味に受け取れる文章構成にしてしまう」という技法を私が初めて目にしたのは、本田勝一のカンボジア虐殺に関するルポルタージュ。これでカンボジア虐殺に関する報道に興味を持ったのがきっかけで、本田と同じ程度悪質だった、言語学者チョムスキーの言説を知った。

 今では、どちらの発言もネットで検証されているので、比較的簡単に事実を知ることができるが、私がこの事実を知ったのは今から大体18年ぐらい前だったから、まだ本田勝一なんかは「硬骨の記者」的な扱いになっていて、「勝一は嘘つきだよん」という話をすると疑念の目で見られたものだ。

 ただ、今でも左派系の黄色人種レイシストの一部は本田を信奉しており、彼がアメリカの白人をこき下ろし、中国人を称揚する(さすがに、執拗な追求を受けたせいでポル・ポトを擁護するのは諦めたみたいだが)のを信じ切っているのだから、人種差別主義者というのは、いつまで経っても無くなりはしないと言うことなのだろう。肌の色が黄色とか黒なら抑圧された正義の民族で、白いと抑圧する側の悪い民族というのは、白人に対するコンプレックスの裏返しでしかないんだけどね。

 それでは、今回の産経の記事は、どのようにして事実を嘘に読み替えられる構成にしてあるのか? ポイントとなるのは、最終段とその前段の

 同人誌の即売会をめぐっては、警察庁の研究会が昨年12月、「子供を性行為等の対象とするコミックが公然と販売されている」と、規制強化の必要性を打ち出していた。

 都産業労働局では「成人向けの作品の販売自体を禁止するわけではないが、主催者側に法令順守の徹底を求めていく」としている。


 という部分。この文章が最終段落に来ていることで、まるでこれまで同人誌即売会が法令を遵守していなかったかのように「読める」構成になっている。もちろん、事実は異なり、基本的に同人誌即売会というのは、以前から法令に則った運営を原則として行ってきたわけで、行ってきたからこそ公共の会場を貸してもらえていたわけだ。

 では、この最終段の文章が、何故に同人誌即売会が法令を遵守してこなかったかのように読めるのかというと、これは、最初の段と次の段に、

 東京都の公共施設で開かれたマンガ・アニメの同人誌即売会で、少女を性行為の対象とした過激なポルノコミックが公然と販売されていたことが分かり、都は29日、即売会の規制や監視強化に乗り出す方針を固めた。

 関係者によると、マンガやアニメの即売会は、商業誌とは異なり、自主規制に委ねられることが多い。そのため、主催者によっては少女を性行為の対象とした過激なポルノコミックが公然と販売されていた実態がある。

と書かれているから。この2つの段落と最後の段落を組み合わせると「緩い自主規制をしていた同人誌即売会が、違法な少女を性行為の対象とした過激なポルノコミックを売っていた」ように「読める」わけだ。

 いい加減にしろよと言いたくなるけど、困ったことに東京で開催されている同人誌即売会の多くは、一点だけ法令を遵守していない可能性がある。それは、『東京都青少年の健全な育成に関する条例』の第3章9条-2。

 この条文は、

2 図書類の販売又は貸付けを業とする者及び営業に関して図書類を頒布する者は、指定図書類を陳列するとき(自動販売機等により図書類を販売し、又は貸し付ける場合を除く。以下この条において同じ。)は、青少年が閲覧できないように東京都規則で定める方法により包装しなければならない。
というもので、包装の方法に関しては、『東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則』の第18条に書かれている。

第十八条 条例第九条第二項及び第九条の二第三項の東京都規則で定める方法は、次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 ビニール袋等により指定図書類又は表示図書類(以下「指定図書類等」という。)全体の包装を行うこと。

二 伸縮しない材質のひもにより十字掛け又はたすき掛けを指定図書類等に行うこと。

三 前二号に掲げるもののほか、指定図書類等を容易に閲覧できない方法と知事が認める方法

 2つの条文でポイントとなるのは、同人誌の「販売」を行っているサークルや個人を、「図書類の販売又は貸付けを業とする者及び営業」と認定するかどうかだろう。以前、知り合いの編集者と話をした時も、「これがポイントだよね」と合意した部分で、仮に私が同人誌即売会を窮地に追いやりたいのであれば、この条例を拡大解釈して、同人サークルに包装を要求する。少部数しか売れないサークルなら対応できるが、数千部単位で同人誌を持ち込んでいる大手サークルは、色んな意味で苦しくなるはずだ。

 ただ、現段階の情報では、東京都側はこの方法で対応してくる気配はなく、これはすなわち都側の直接の担当者に警視庁の生活安全課が含まれていないことを意味している。このまま、上手く軟着陸してくれるといいんだけどね………。

3件のコメント

[C71]

>一 ビニール袋等により指定図書類又は表示図書類(以下「指定図書類等」という。)全体の包装を行うこと。

>二 伸縮しない材質のひもにより十字掛け又はたすき掛けを指定図書類等に行うこと。

>三 前二号に掲げるもののほか、指定図書類等を容易に閲覧できない方法と知事が認める方法

即売会では売り子が目の前で監視してるから
『容易に閲覧させない』事は容易だと思います。

しかし、この『容易に閲覧させない』の対象は
青少年の事を指すかどうか明示されていないのが
気になります。

対面販売を行い、販売をしても良いと売り子が
判断した相手に内容を確認させるのは構わないと思うのですが
どうでしょう。
  • 2007-11-02
  • 投稿者 :
  • URL
  • 編集

[C72]

常識的に考えれば、『容易に閲覧させない』の対象は青少年の事を指すのは明らかだと思います。
また、成人が内容の確認を要求するのは自然なことで、これも問題はないのでしょうか?
問題は、都の青少年条例が、9条-2、9条の2-3で二重に放送の義務を課している点で、9条-2がくぐり抜けられたとしても、9条の2-3に記されている図書類発行業者に、同人誌の制作者が該当するかどうかという点です。
これは、私の方がすっかり書き忘れていた(すいません)ことですけど、けっこう重要なんですよね。
  • 2007-11-02
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
  • 編集

[C73]

あ、いかん。
×→放送
○→包装
です。
申し訳なし。
  • 2007-11-02
  • 投稿者 : 鳥山仁
  • URL
  • 編集

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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
です。★マークを@に変えて使ってね。

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