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批評家に批評の才能は邪魔。

 本日も小説の執筆、インデザインを使ったレイアウト、文字の推敲、ゲームのレビューを行い、余った時間をまちづくり3法の資料収集に使う。今回は間をおかずに連続して入稿作業があるので、けっこうパニック気味。明日になったら、プライオリティを整理する必要がある………と思いつつも、現実逃避で浜岡賢次の『浦安鉄筋家族』を再読。

 『浦安~』は数少ない「何度読んでも面白い」作品の一つで、手元にある漫画としては二階堂正宏の『極楽町一丁目 嫁姑地獄篇』と同程度。どちらの作家も視覚的に不条理を表現する技術に長けているため、意味的にはワンパターンでも飽きないというのが特徴。この辺に自分の趣味が出るね。

 じゃあ、不条理とは何かというと、分かりやすく言うと「何で俺がこんな目に遭わなくちゃならないんだ」というシチュエーション。『浦安~』の場合は何気なく発生するアクシデントが不条理部分に該当し(こうしたアクシデントの被害が、金持ちで美少女の菊池あかねに集中しているのもミソだ)、『極楽~』の場合は嫁姑問題と老人介護が該当する。

 実は作品の面白さ、感情移入の度合いというのは、表現形式やジャンルの種類を問わず『不条理』の質と量が決定する。たとえば、アクション映画の傑作と誉れの高い『ダイ・ハード』。主人公のマクレーン刑事は、別居中の社会的に成功した奥さんとのよりを戻したいがために、ビルを襲撃したテロリストと対決するが、これなんかは本当に不条理の演出が上手い。マクレーンが女性との対他関係が不器用であるが故に、身体を張って奥さんを助けないと………というところで、かなりの割合の男性映画ファンが感情移入できるようになるという仕掛けは抜群だ。

 だが、人間にとっての最大の不条理は『死』。だから、悲劇系の作品は質はともかく不条理の量が豊富。自然と不条理の質よりも量で押し切ろうとするクリエーターが増えるので、批判の対象になりやすい。まあ、そう言う次第で「面白さ」という観点から作品を批評する場合、ジャンル・カテゴリによる分類はあまり意味がない。逆に言えば、映画や漫画などの創作系批評家の批評能力を判断しようと思ったら、どのようなアプローチで不条理に言及しているかをチェックすればよい。

 最初に作品の分類をやっているヤツは、まず才能がないと思って間違いない………と書いた段階で、「じゃあ、批評家に才能のある人間はほぼ0%なんじゃないの?」と思った人は正解。実は商業系の批評家で、センスのある人というのはほぼ皆無なのだ。原因は読者のニーズ。批評本を読む読者の大半は、「見ていない作品の粗筋を知りたい」(粗筋系)か「作品を通した批評家の自分語りが読みたい」(エセー系)かのどちらか、もしくは両方だから、本当に批評家としてのセンスのある人間が書いた批評本は売れないのである。

 プロの批評家に批評の才能が邪魔というのは、たぶん出版業界における最大の不条理の一つだろう。創作の世界では、センスがない方が有利という状況はかなり頻繁にあったりするのですよ。もちろん、言うまでもないことだが、私も批評のセンスは0%。ただ、それが恥ずかしいから、批評の仕事には手を出さないようにしてるけどね。

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toriyamazine

Author:toriyamazine
東京都出身。
高校在学中にライターとしてデビュー。
以降は編集者・ライター・ゲームディレクター・実写アダルトDVDの監督、そして作家を兼任。
仕事はSMポルノ関係全般で、小説、ゲーム、実写etc、アニメーションを除くすべてのポルノ作品を平行して制作。年間発表数は約6作品前後がコンスタント。
一般作に関しては、別名義、もしくはアンカーマンとしてのみ参加中。

追記・最近になってメールで連絡が取れないという非難が多く聞かれるようになったので、仕事用のアドレスを公開しておきます。
jjnewzine★gmail.com
です。★マークを@に変えて使ってね。

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