王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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ここ数日は入稿作業のために、連チャンで朝帰り。さすがに寝不足で頭が腐ってくる。人間は寝ていないと徐々に頭の調子がおかしくなる(寝過ぎても似たような現象が起こるけど)というか、睡眠と脳の機能障害には密接な関連性があり、正常な人間でも2~3日寝なければ、意識がもうろうとしたり、感情の切り替えが上手くいかなかったり、現実と幻想の区別がつかないといった、精神病に類似した症状が出る。
そんな感じで、今の私の思考力は限りなく0に近い。こんな時には、何を考えても仕方がないので、機械的に作業をこなすことを務めているのだが、徹夜明けのふらふらした状態で朝食を採っていると、隣席にいた映画関係者らしき男性陣の談笑が、何とはなしに耳に入ってきて地蔵状態になる。
リーダー格とおぼしき男性が、映画制作者にも知性が必要で、機会があれば本を読んでおくべきだと主張しているのだが、その読んでおいた方が良いという本が、どういうワケか「バシャール」。
………………バシャール?
最初は私も「ついに寝不足で幻聴が聞こえだしたか」と思っていたのだが、耳を澄ますまでもなく、隣の男性は「バシャールは良いこと言ってるよ」と連呼。
つ、辛いよ。マジで辛い。普通の精神状態だったら聞き流せるのに、何でこんな時に限ってバシャールかな! 辛さのあまりに、俺が宇宙にチャネリングしそうだよ。
ちなみに、バシャールネタで学者としての名声が地に墜ちた(?)のが、蕩尽論で一世を風靡した栗本慎一郎先生。確認のためにネットを検索したら、『人類新世紀終局の選択-「精神世界」は「科学」である-』(青春出版社)という本だった。内容に関しては、眠いのでこちらのサイトをチェックされたし。
栗本に限らず、ニューアカデミズムを契機に注目された学者には、この手の『チャネリング』をやって撃墜された人物が多い。そのトップバッターが、オウム真理教を称揚しちゃった中沢新一(彼はレーニンにも騙されているので、生まれながらの騙され体質なのかもしれない)で、私が好きな今村仁司センセイも「共産主義の未来は中国にあるかもしれない」という趣旨の発言をなされて見事に失速。
もっとも、これらの学者の元ネタになった、フランスのアカデミズム自体が、アラン・ソーカルが書いたパロディ論文で吹っ飛んでいるのだから、仕方がないと言えば仕方がない。また、社会科学や哲学の住人は、しばしば「科学にもイデオロギーが含まれる」と主張し、相対論の必要性を訴えるが、実は歴史学的にもこれが過ちであることは、旧ソ連時代に起こった『ルイセンコ論争』が証明してしまっている。科学がイデオロギーの一種に過ぎないのであれば、何で「プロレタリアートのための科学」が大量の餓死者を出してしまったのかは永遠の謎だ。
そして、ソ連の失敗をフランスのアカデミズムが無批判に継承したのは、フランス共産党が『モスクワの長女』と揶揄されることと無関係ではない。ただ、フランスの左派系アカデミズム界隈でもっとも頭がおかしかったのが、フランス共産党に反旗を翻したルイ・アルチュセールだった。盲目的に誠実だったアルチュセールは、マルクスの『資本論』に掲載されていたデータに複数の改ざんがあることを無視できず、『資本論』を特定章しか読まないという方法論(アカデミズム用語では「認識論的切断」と言われてます。もちろん、原因がマルクスとエンゲルスのデータ改ざんにあったことは秘密だ)をフランス共産党に提示して失笑を買った。そして、統合失調症が原因で奥さんを殺害した。
つまり、狂っている人間は対他関係を破壊するほど不必要なまでに「誠実」であろうとするが、現実と幻想の境界線がぼやけているので「誠実」には生きられない。私はかろうじて臨席の男性に「バシャールなんていません」と言わずに席を立つ事に成功し、帰宅してから『さよなら絶望先生』の暗夜号路の回を読んで胸をなで下ろす。
簡単なことを難解に書こうとしたり、難解なことを簡素に書こうとする人間を信用すべきではない。どちらの方法論も間違っているからで、間違っている原因は主張者の大部分が狂っているからだ。簡単なことは簡単に書くべきだし、難しいことは難しく書くべきなのだ。何を言っているか分からないって? それで結構。眠いから説明する気も起こらないよ。
この世に偶然はありません!←バシャールの言葉
そんな感じで、今の私の思考力は限りなく0に近い。こんな時には、何を考えても仕方がないので、機械的に作業をこなすことを務めているのだが、徹夜明けのふらふらした状態で朝食を採っていると、隣席にいた映画関係者らしき男性陣の談笑が、何とはなしに耳に入ってきて地蔵状態になる。
リーダー格とおぼしき男性が、映画制作者にも知性が必要で、機会があれば本を読んでおくべきだと主張しているのだが、その読んでおいた方が良いという本が、どういうワケか「バシャール」。
………………バシャール?
最初は私も「ついに寝不足で幻聴が聞こえだしたか」と思っていたのだが、耳を澄ますまでもなく、隣の男性は「バシャールは良いこと言ってるよ」と連呼。
つ、辛いよ。マジで辛い。普通の精神状態だったら聞き流せるのに、何でこんな時に限ってバシャールかな! 辛さのあまりに、俺が宇宙にチャネリングしそうだよ。
ちなみに、バシャールネタで学者としての名声が地に墜ちた(?)のが、蕩尽論で一世を風靡した栗本慎一郎先生。確認のためにネットを検索したら、『人類新世紀終局の選択-「精神世界」は「科学」である-』(青春出版社)という本だった。内容に関しては、眠いのでこちらのサイトをチェックされたし。
栗本に限らず、ニューアカデミズムを契機に注目された学者には、この手の『チャネリング』をやって撃墜された人物が多い。そのトップバッターが、オウム真理教を称揚しちゃった中沢新一(彼はレーニンにも騙されているので、生まれながらの騙され体質なのかもしれない)で、私が好きな今村仁司センセイも「共産主義の未来は中国にあるかもしれない」という趣旨の発言をなされて見事に失速。
もっとも、これらの学者の元ネタになった、フランスのアカデミズム自体が、アラン・ソーカルが書いたパロディ論文で吹っ飛んでいるのだから、仕方がないと言えば仕方がない。また、社会科学や哲学の住人は、しばしば「科学にもイデオロギーが含まれる」と主張し、相対論の必要性を訴えるが、実は歴史学的にもこれが過ちであることは、旧ソ連時代に起こった『ルイセンコ論争』が証明してしまっている。科学がイデオロギーの一種に過ぎないのであれば、何で「プロレタリアートのための科学」が大量の餓死者を出してしまったのかは永遠の謎だ。
そして、ソ連の失敗をフランスのアカデミズムが無批判に継承したのは、フランス共産党が『モスクワの長女』と揶揄されることと無関係ではない。ただ、フランスの左派系アカデミズム界隈でもっとも頭がおかしかったのが、フランス共産党に反旗を翻したルイ・アルチュセールだった。盲目的に誠実だったアルチュセールは、マルクスの『資本論』に掲載されていたデータに複数の改ざんがあることを無視できず、『資本論』を特定章しか読まないという方法論(アカデミズム用語では「認識論的切断」と言われてます。もちろん、原因がマルクスとエンゲルスのデータ改ざんにあったことは秘密だ)をフランス共産党に提示して失笑を買った。そして、統合失調症が原因で奥さんを殺害した。
つまり、狂っている人間は対他関係を破壊するほど不必要なまでに「誠実」であろうとするが、現実と幻想の境界線がぼやけているので「誠実」には生きられない。私はかろうじて臨席の男性に「バシャールなんていません」と言わずに席を立つ事に成功し、帰宅してから『さよなら絶望先生』の暗夜号路の回を読んで胸をなで下ろす。
簡単なことを難解に書こうとしたり、難解なことを簡素に書こうとする人間を信用すべきではない。どちらの方法論も間違っているからで、間違っている原因は主張者の大部分が狂っているからだ。簡単なことは簡単に書くべきだし、難しいことは難しく書くべきなのだ。何を言っているか分からないって? それで結構。眠いから説明する気も起こらないよ。
この世に偶然はありません!←バシャールの言葉
5件のコメント
[C78]
そーいや、「知の欺瞞」のアマゾン書評にちらっと出てますが、
香山リカって確かラカン学派だったんですよね……。
あのハチャメチャなラカン学説を「真摯に解読・研究する」なんて、
常人にとっては知的拷問以外の何物でも無いんじゃないか、と言う気もしちゃうのですが、
香山リカなら「御同類」だと思われるので、楽しい作業だったかもですねー(遠い目)。
香山リカって確かラカン学派だったんですよね……。
あのハチャメチャなラカン学説を「真摯に解読・研究する」なんて、
常人にとっては知的拷問以外の何物でも無いんじゃないか、と言う気もしちゃうのですが、
香山リカなら「御同類」だと思われるので、楽しい作業だったかもですねー(遠い目)。
- 2007-11-16
- 編集
[C79]
Sevenさん
えーと………。
オタク界隈でラカンの亜流みたいなことをやっていたのは伊藤剛なんですけど。
http://www.tinami.com/x/moujou/img/ito1.gif
Sevenさんは、相変わらず無自覚にオタク知識人に大外刈りをかけるのが得意ですな。
えーと………。
オタク界隈でラカンの亜流みたいなことをやっていたのは伊藤剛なんですけど。
http://www.tinami.com/x/moujou/img/ito1.gif
Sevenさんは、相変わらず無自覚にオタク知識人に大外刈りをかけるのが得意ですな。
- 2007-11-16
- 編集
[C82]
ブログの内容とは関係ないですが、私もようやくにして絶望先生を読んできました(漫喫で)。なるほど、そういう話でしたか。
マンガの感想になっちゃいますけど、「そんな穴はない」は、鳥山さんの解説がなければ理解できませんでしたね。
あと、2巻の商店街の看板のネタがツボでした。煙突アチャコとか。って、見てるのそんな細かいとこばっかですよ。
マンガの感想になっちゃいますけど、「そんな穴はない」は、鳥山さんの解説がなければ理解できませんでしたね。
あと、2巻の商店街の看板のネタがツボでした。煙突アチャコとか。って、見てるのそんな細かいとこばっかですよ。
- 2007-11-20
- 編集
[C85]
Anchangさん
絶望先生は読みやすさが追求されている日本のマンガの中で、「読みやすいふりをして読みづらい」方向性を追求しているような気がする作品ですから、そういう読み方で良いんじゃないでしょうか?
ウチらの間で流行っているのは、アニメ版に出てきた落書きの『デスニート』です。元ネタはネット上の誤字ですけど、これはキましたね。
絶望先生は読みやすさが追求されている日本のマンガの中で、「読みやすいふりをして読みづらい」方向性を追求しているような気がする作品ですから、そういう読み方で良いんじゃないでしょうか?
ウチらの間で流行っているのは、アニメ版に出てきた落書きの『デスニート』です。元ネタはネット上の誤字ですけど、これはキましたね。
- 2007-11-21
- 編集
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