王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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本日も仕事に忙殺される。ただでさえ3冊同時進行はキツイのに、1冊が歴史系のノンフィクション作品だという点がボディーブローのように効いている。同じ文章でも、フィクションとノンフィクションは製作の過程がまったく違う。同じレースでもF1とラリーがまったく異なる競技なのと一緒だと言えば分かりやすいだろうか?
で、どちらのレースでもチャンピオンになったドライバーが希なように、フィクションの世界でもノンフィクションの世界でも優れた業績を残した作家はいない。理由に関しては去年の6月7日の日記に書いたとおりで、「現実は時系列の一貫性はあっても、意味の一貫性がないから」である。ところが、フィクションに求められるのがこの意味の一貫性で、場合によっては時系列がバラバラでも構わない。すると、作家がいつもの創作手法でノンフィクションを書こうとすると、必然的にありもしない意味の一貫性で現実なり歴史を捉えようとするので、自動的に運命論や陰謀論に流されていってしまうのだ。
その代表的な作家が松本清張で、この人の『日本の黒い霧』なんかは、未解決事件の原因究明をしていくと、だいたい「アメリカの陰謀でしたー!」で終わるという酷いシロモノ。ところが、当の本人は他の作家に対して「もっと現実を見ろ」という趣旨の発言をして悦に入っていたらしいから、呆れてものも言えない。現実見てないのは、松本先生、あんたの方ですよ。
作家がノンフィクションに関わる際に最も注意すべき点は、これも6月7日の日記に書いたとおりで、必ず編年体で現実なり歴史なりを把握することなんだけど、小説とかマンガとかアニメとか、いわゆるキャラものを自明としている人間には、こうした把握法が困難なのだ。幸い、私はかなり長期間にわたってヒストリカルシミュレーションゲームをやっていた経緯もあり、時系列の把握の仕方や一次資料の当たり方までは分かっているつもりなんだけど、それでも本職のノンフィクションライターと比較すると数段どころか数十段は劣る。
しかも、恐ろしいことに日本では編年体の歴史書やノンフィクションは、余程宣伝をかけない限り売れないのである。そこで、色々悩んだ結果、今回の本は国史体の変形で構成することを決定。実は、この段階で既に膝の裏にストレス製のアトピーが発症していたりする。
そこで、やっぱり自分には他人にものを教える仕事は向いてないなぁ……と再実感。まあ、「作家もできて、ノンフィクション作家もできる」などという激しい妄想に囚われていないから特に何の感慨も湧かないんだけど、規制反対運動に参加したクリエーター(自称も含む)の大多数が、これに引っかかってどっちも大成できずに駄目になっていく過程を見ると複雑な気持ちにさせられる。
たとえば、私なんかだと政治関連の文章を書く際にも、類義語や同義語を多用したり、わざと漢字を使ったり開いたり、あるいは緩叙法を使って文意を分かりにくくしたりと抵抗しているけど、ブログ閲覧者の「分かりやすくしてくれ」とか「長文が読めない」なんてリクエストを丸飲みにしているうちに、文章が教科書的というかフラットなものになってしまって面白くも何ともない……という感じで個性が抑圧されてしまう例はいくらでもある。
長文が読めない閲覧者とか、緩叙法が理解できない閲覧者なんて、小説によろこんで金を払ってくれるようなタマじゃないんだから、わざわざ相手にする必要なんかないんだけど、どうしても気になっちゃう人もいるんだろうなぁ。無視すりゃいいのにね。
で、どちらのレースでもチャンピオンになったドライバーが希なように、フィクションの世界でもノンフィクションの世界でも優れた業績を残した作家はいない。理由に関しては去年の6月7日の日記に書いたとおりで、「現実は時系列の一貫性はあっても、意味の一貫性がないから」である。ところが、フィクションに求められるのがこの意味の一貫性で、場合によっては時系列がバラバラでも構わない。すると、作家がいつもの創作手法でノンフィクションを書こうとすると、必然的にありもしない意味の一貫性で現実なり歴史を捉えようとするので、自動的に運命論や陰謀論に流されていってしまうのだ。
その代表的な作家が松本清張で、この人の『日本の黒い霧』なんかは、未解決事件の原因究明をしていくと、だいたい「アメリカの陰謀でしたー!」で終わるという酷いシロモノ。ところが、当の本人は他の作家に対して「もっと現実を見ろ」という趣旨の発言をして悦に入っていたらしいから、呆れてものも言えない。現実見てないのは、松本先生、あんたの方ですよ。
作家がノンフィクションに関わる際に最も注意すべき点は、これも6月7日の日記に書いたとおりで、必ず編年体で現実なり歴史なりを把握することなんだけど、小説とかマンガとかアニメとか、いわゆるキャラものを自明としている人間には、こうした把握法が困難なのだ。幸い、私はかなり長期間にわたってヒストリカルシミュレーションゲームをやっていた経緯もあり、時系列の把握の仕方や一次資料の当たり方までは分かっているつもりなんだけど、それでも本職のノンフィクションライターと比較すると数段どころか数十段は劣る。
しかも、恐ろしいことに日本では編年体の歴史書やノンフィクションは、余程宣伝をかけない限り売れないのである。そこで、色々悩んだ結果、今回の本は国史体の変形で構成することを決定。実は、この段階で既に膝の裏にストレス製のアトピーが発症していたりする。
そこで、やっぱり自分には他人にものを教える仕事は向いてないなぁ……と再実感。まあ、「作家もできて、ノンフィクション作家もできる」などという激しい妄想に囚われていないから特に何の感慨も湧かないんだけど、規制反対運動に参加したクリエーター(自称も含む)の大多数が、これに引っかかってどっちも大成できずに駄目になっていく過程を見ると複雑な気持ちにさせられる。
たとえば、私なんかだと政治関連の文章を書く際にも、類義語や同義語を多用したり、わざと漢字を使ったり開いたり、あるいは緩叙法を使って文意を分かりにくくしたりと抵抗しているけど、ブログ閲覧者の「分かりやすくしてくれ」とか「長文が読めない」なんてリクエストを丸飲みにしているうちに、文章が教科書的というかフラットなものになってしまって面白くも何ともない……という感じで個性が抑圧されてしまう例はいくらでもある。
長文が読めない閲覧者とか、緩叙法が理解できない閲覧者なんて、小説によろこんで金を払ってくれるようなタマじゃないんだから、わざわざ相手にする必要なんかないんだけど、どうしても気になっちゃう人もいるんだろうなぁ。無視すりゃいいのにね。
6件のコメント
[C470] 手塚治虫監修の「世界の歴史」
- 2008-05-31
- 編集
[C471] 470さん
このシリーズは知りませんけど、手塚監修という段階で「ドラマが」とか「ロマンが」とか言ってることはほぼ間違いないでしょう。
というか、手塚さんはこの2つのどっちかしか言いませんよね。
もちろん、だからと言って歴史小説や歴史マンガを否定してるわけじゃないですよ。長谷川先生の『ナポレオン』を愛読している身として、そんなことは口が裂けても言えません。
長谷川マジック万歳!
というか、手塚さんはこの2つのどっちかしか言いませんよね。
もちろん、だからと言って歴史小説や歴史マンガを否定してるわけじゃないですよ。長谷川先生の『ナポレオン』を愛読している身として、そんなことは口が裂けても言えません。
長谷川マジック万歳!
- 2008-06-01
- 編集
[C479] 470さん
うははは。
そこが問題なんですよね。
事実を元にしたノンフィクションというのは、事実ではないけれども実在する人物をモデルにしているわけです。
この点で、意味的には絵画や写真と同じなんですよね。
そこが問題なんですよね。
事実を元にしたノンフィクションというのは、事実ではないけれども実在する人物をモデルにしているわけです。
この点で、意味的には絵画や写真と同じなんですよね。
- 2008-06-05
- 編集
[C509] 深いですね。
事実を元にしたノンフィクションというのは、事実ではないけれども実在する人物をモデルにしていることって、考えたこともありませんでしたけどおっしゃる通りですね。
ところで鳥山さんは、「やっぱり自分には他人にものを教える仕事は向いてないなぁ」とご自分でおっしゃってるわけですけど全然そんなことないと思いますよ。だっていつも理屈が通る(うなずけるという意味?自分で言っててうまく表現できませんけど)説明で教えてくれるじゃないですか。私なんかすごく助かってますよ。
ええ、分かってます。たぶん説明すること自体が苦痛なんだろうなとw
ということでフィクションつながりで、かな~り今更なんですけどFurtive Mindやってみました・・・
ご、ごめんなさい!ほんとはもう少し早くプレイする予定だったんです。許して~
と、とりあえず、感想を。
ん? コ、コレハwww
え?コレほんとにフィ○ションなんですかwww
いや錯覚だ、錯覚のはずだ!
っていうか背景、ハイケイガwww 笑いがとまりませぬwww
しかし内容はすごく考えさせられますね。ほんと色々考えながらプレイしてましたよ。ほんとなんでもっとはやくプレイしなかったんだろうと今更ながら後悔してます。
とりあえずバッドエンドで終わっちゃったので、更に挑戦してみます。なかなか難しいですね。
しかし確かにフィクションw なんですけど、思考するという意味では反対派もプレイ(ゲームのことねw)やっておいたほうがいいような気がするのは私だけでしょうか?
あとブログの更新とまっちゃってますけどお体大丈夫なんでしょうか?なんだか心配ですね。魔ゼルな規犬もいつのまにか消えてますし。
ともあれ早く戻ってきてくれることを期待してます。けど体壊しているならちゃんと治してから返ってきて下さいね。
ところで鳥山さんは、「やっぱり自分には他人にものを教える仕事は向いてないなぁ」とご自分でおっしゃってるわけですけど全然そんなことないと思いますよ。だっていつも理屈が通る(うなずけるという意味?自分で言っててうまく表現できませんけど)説明で教えてくれるじゃないですか。私なんかすごく助かってますよ。
ええ、分かってます。たぶん説明すること自体が苦痛なんだろうなとw
ということでフィクションつながりで、かな~り今更なんですけどFurtive Mindやってみました・・・
ご、ごめんなさい!ほんとはもう少し早くプレイする予定だったんです。許して~
と、とりあえず、感想を。
ん? コ、コレハwww
え?コレほんとにフィ○ションなんですかwww
いや錯覚だ、錯覚のはずだ!
っていうか背景、ハイケイガwww 笑いがとまりませぬwww
しかし内容はすごく考えさせられますね。ほんと色々考えながらプレイしてましたよ。ほんとなんでもっとはやくプレイしなかったんだろうと今更ながら後悔してます。
とりあえずバッドエンドで終わっちゃったので、更に挑戦してみます。なかなか難しいですね。
しかし確かにフィクションw なんですけど、思考するという意味では反対派もプレイ(ゲームのことねw)やっておいたほうがいいような気がするのは私だけでしょうか?
あとブログの更新とまっちゃってますけどお体大丈夫なんでしょうか?なんだか心配ですね。魔ゼルな規犬もいつのまにか消えてますし。
ともあれ早く戻ってきてくれることを期待してます。けど体壊しているならちゃんと治してから返ってきて下さいね。
- 2008-07-11
- 編集
[C510] mudanさん
おお。
ついにプレイして頂けましたか。
面白いでしょ? シナリオには自信があるんですよ。
ちなみに、あの作品はフィクションですので悪しからず。ああいうのが、「フィクションとしてのリアル」なんですけど、分かってくれる人が少なくてねぇ……。シクシク。
ついにプレイして頂けましたか。
面白いでしょ? シナリオには自信があるんですよ。
ちなみに、あの作品はフィクションですので悪しからず。ああいうのが、「フィクションとしてのリアル」なんですけど、分かってくれる人が少なくてねぇ……。シクシク。
- 2008-07-13
- 編集
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