王様を欲しがったカエル

　鬱状態はやや回復。その間に私がやっていたことは、

１）mudanさんの書き込みにあった前貼りアニメ、『光と水のダフネ』を拝聴。
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２）仕事場に行って、『東方地霊殿』をプレイ。
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３）現場に行って撮影。

で、自分でも言い訳する気が起きないぐらいのオタクライフを満喫。しかも、最後の撮影を除けばまるで中学生レベル。アニメは画面情報量が少ないから、鬱に優しいメディアだなー。

　ただし、その間に鬱状態の原因の１つだった懸案事項に思わぬ形で目処が立ったので、復活の道筋が見えてきた。その代償として、１週間のうちに５本の撮影をこなさなければならないという強行スケジュールになったが、これも仕方がないと諦める。

　実は、このような事態は事前に想定されており、撮影班を私のいるＡチームと、以前から付き合いのある某氏単独のＢチームに分割することを計画、実行していたのだが、この某氏が２ヶ月前から言っていたにもかかわらず、緊縛術を習得していなかったことが発覚。私のチームの基本撮影スタイルが、依頼のあった場所に行ってＭ女性を縛り、写真を撮って帰ってくるというものだから、これは致命的なミスである。

　ぶっちゃけ、私のところに調教の依願が来るのは、縛りを含めた総合的なＳＭに関する技術が高いという大前提があるからで、そうした技術を習得、維持するためのトレーニング抜きでＳＭ写真を撮らせてくれるのは、プロかセミプロのモデルだけですよ。そんな虫のいい話が転がっているわけないでしょ。というか、私の代役が縛り一つ出来ないというのは、まったくもって、あらゆる事情を考慮しても許せない。

　そういう次第で、優しく言っても事態を理解できない奴（しかも２ヶ月待った）には身体で教えねばならぬと、前日に某氏のスケジュールを押さえて緊縛の特訓。３時間連続で基本的な縛りを反復練習してもらう。ご本人は「体育会系だ～」と愚痴をこぼしていたけれども、それが何か？　もちろん、体育会系ですとも。

　この時に練習に協力してくれたのが緊縛モデルのＡさんで、通常の撮影よりも肉体的負担の大きい練習に快く付き合ってくれたのには大感謝。思わず「いや、今日はありがとう。何でも奢るから、好きな場所を言って」と口を滑らせたのが失敗の始まりだった。

　Ａさんは「カラオケ！」と即答。カラオケ？　何故に？　美味しいものがあるわけじゃなし、歌ってストレスでも発散させたいのか？　不思議に思いつつも、「まあ、本人がそれで良いなら」とカラオケに同席。

　ところが、いざカラオケが始まると…………Ａさん、妙に歌が上手い。２．５オクターブ近い声域がある上に、声の伸びが明らかに素人とは違う。な、何だ？　こんな話、聞いてなかったぞ？

私「あの……Ａさん。歌、上手いですね」
Ａさん「そう？」
私「素人の歌い方じゃないんですけど」
Ａさん「あれ？　ばれた？　私、元歌手だったの。喘息が酷くて引退しちゃったんだけど」
私「………………その話、聞いたことないよ」
Ａさん「言うわけないじゃないですか。言ったら、誰もカラオケに付き合ってくれないもん」
私「そりゃそうでしょう。わざわざプロと張り合って歌いたい奴なんているわけ………………。ん？　ま、まさか……」
Ａさん「今日は付き合ってもらいますから」

　元とはいえ、プロの歌手の前で歌わされる素人というのは、ボクシングの元チャンピオンにスパーリングをつけてもらう練習生のようなモノで、分かり易く説明すると地獄。案の定、私が歌う番になると、呼吸法や発声法に関する厳しい指導が飛んでくる。嗚呼、体育会系。特訓させる側がする側に回るとは……。