王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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職業としての娯楽作家の要諦
- ジャンル : 日記
- スレッドテーマ : ひとりごとのようなもの
11月20日の日記で、「駄目になるクリエーターのパターン」を書いたところ、複数の知人から「あれは俺のことか?」とか「あの日記を見ると心が痛い」という苦情、問い合わせが連発してぐったり。
いいですか、皆さん。このブログみたいに、無償で文章を公開している場合を除いて、私の書いてる作品というのは基本的に有料なんですよ。これも11月22日の日記に書いたのと同じように、ユーザーはお金を払うというリスクを負って私の作品を購入してるんです。だから、文章の書き手も相応のリスクを背負って作品を創る義務があるんです。これを職業倫理と言うんです。
つまり、金銭の授受を前提とした創作というのは、買い手に満足感を持ってもらうことが大前提で、その為に無い知恵を絞ってアイデアを考えたり、文章の練習をしたりするわけです。「俺がこれで良いと思うから、これでいいんだ」と、言いっぱなし、投げっぱなしで済ませることは許されないんですよ。分かります? 私が何を考えているのかが重要じゃなくて、ユーザーが何を考えているかの方が何万倍も重要なんです。
だから、娯楽で喰っていきたいのであれば、自我は殺してユーザーに合わせて下さい。それが嫌なら娯楽で喰っていくのは諦めましょう。世の中には色んな職業があって、尊敬されることが社会的なステータスと直結している場合もあります。たとえば、宗教家とか学者とか、評論家なんかはその手のお仕事でしょう。
で、そんなにお金を払う側の人間をひれ伏させたいのであれば、そういう仕事に就けばいいんですよ。たとえば、「俺は神と対話が出来る。尊敬しろ」とか「俺は学者だ。専門家だ。俺の話を聞け」とかね。でもね、娯楽作家というのは基本的にそういう職業とは無縁どころか真逆の存在なんです。
娯楽作家にとって理想の評価というのは「あいつはクソだ。作ってるものもクソだ。でも、可哀想だから俺が買ってやるか」なんです。分かりますか? 2番目に良い評価というのは「あいつはクソだ。でも、作品は面白いから買ってやろう」なんです。最悪なのは、「あいつは尊敬できる。いい奴だ。でも、作品はつまらないから買わない」ですよ。
要するに、娯楽は恋愛と一緒なんです。女性から「あの人、いい人なんだけど……ちょっとね」とか「あの人は人間として尊敬できるのよ。でも、男としてはね……」って言われたら、それは褒め言葉じゃないでしょ? 一番良いのは「あの人、ホントにダメな男で……私がついてないと、何にもできないのよ。だから、仕方ないけど一緒にいるわ」って言われることですよ。分かります? だから、ポンチ絵書いたりラノベ書いたりしているのに「俺を尊敬しろ」とか「俺を崇めよ」なんて思っちゃいけないんです。そんなものは、女性から尊敬されていないと不安で仕方がなくて、ついつい相手を束縛してしまうキチピーと一緒ですよ。そうじゃなくて「あいつは駄目だ」とか「あいつは分かってない」と思われないと、仕事として成立しないんですよ。
以上の理由から、宗教と娯楽は基本的に敵対関係にならざるを得ません。宗教の世界では、尊敬や信頼がステータスを構成する重要な要素だからです。よく宗教と娯楽を競合関係にあると勘違いする(自称も含む)クリエーターがいますけど、それは単に「尊敬されたい」とか「崇拝されたい」という劣等感が裏返った承認欲求の発露でしかないんですよ。娯楽作品というのは、宗教的な見地からするとあくまでもデモーニッシュな存在なんです。繰り返しになりますけど、類似・競合関係ではなくて敵対関係なんです。
そういう次第で、職業としての娯楽作家の要諦が分かったら、さっさと練習にお戻り下さい……って、あら? デモーニッシュなんて、ゲーテの言葉を使っちゃったよ。それじゃ、ついでにゲーテの格言を。
女は決して自分の自然な姿を見せない。なぜならば女は、自然から生みつけられたままでもきっと人から好かれるものだ、といういうふうに考えることのできる男ほどのうぬぼれがないからである。
娯楽作品の創作も一緒。自然とかありのままとか、そういうのはナシの方向でお願いします。ちゃんと自分の作品には、意図的にユーザーに合わせた「お化粧」をしてくださいね。分かります? 練習しない、ユーザーに合わせないのに自分の作品が認められるはずだと思うことそのものが、ただのうぬぼれに過ぎないんですよ。ゲーテも言ってるでしょ? 男に多いですよね。
いいですか、皆さん。このブログみたいに、無償で文章を公開している場合を除いて、私の書いてる作品というのは基本的に有料なんですよ。これも11月22日の日記に書いたのと同じように、ユーザーはお金を払うというリスクを負って私の作品を購入してるんです。だから、文章の書き手も相応のリスクを背負って作品を創る義務があるんです。これを職業倫理と言うんです。
つまり、金銭の授受を前提とした創作というのは、買い手に満足感を持ってもらうことが大前提で、その為に無い知恵を絞ってアイデアを考えたり、文章の練習をしたりするわけです。「俺がこれで良いと思うから、これでいいんだ」と、言いっぱなし、投げっぱなしで済ませることは許されないんですよ。分かります? 私が何を考えているのかが重要じゃなくて、ユーザーが何を考えているかの方が何万倍も重要なんです。
だから、娯楽で喰っていきたいのであれば、自我は殺してユーザーに合わせて下さい。それが嫌なら娯楽で喰っていくのは諦めましょう。世の中には色んな職業があって、尊敬されることが社会的なステータスと直結している場合もあります。たとえば、宗教家とか学者とか、評論家なんかはその手のお仕事でしょう。
で、そんなにお金を払う側の人間をひれ伏させたいのであれば、そういう仕事に就けばいいんですよ。たとえば、「俺は神と対話が出来る。尊敬しろ」とか「俺は学者だ。専門家だ。俺の話を聞け」とかね。でもね、娯楽作家というのは基本的にそういう職業とは無縁どころか真逆の存在なんです。
娯楽作家にとって理想の評価というのは「あいつはクソだ。作ってるものもクソだ。でも、可哀想だから俺が買ってやるか」なんです。分かりますか? 2番目に良い評価というのは「あいつはクソだ。でも、作品は面白いから買ってやろう」なんです。最悪なのは、「あいつは尊敬できる。いい奴だ。でも、作品はつまらないから買わない」ですよ。
要するに、娯楽は恋愛と一緒なんです。女性から「あの人、いい人なんだけど……ちょっとね」とか「あの人は人間として尊敬できるのよ。でも、男としてはね……」って言われたら、それは褒め言葉じゃないでしょ? 一番良いのは「あの人、ホントにダメな男で……私がついてないと、何にもできないのよ。だから、仕方ないけど一緒にいるわ」って言われることですよ。分かります? だから、ポンチ絵書いたりラノベ書いたりしているのに「俺を尊敬しろ」とか「俺を崇めよ」なんて思っちゃいけないんです。そんなものは、女性から尊敬されていないと不安で仕方がなくて、ついつい相手を束縛してしまうキチピーと一緒ですよ。そうじゃなくて「あいつは駄目だ」とか「あいつは分かってない」と思われないと、仕事として成立しないんですよ。
以上の理由から、宗教と娯楽は基本的に敵対関係にならざるを得ません。宗教の世界では、尊敬や信頼がステータスを構成する重要な要素だからです。よく宗教と娯楽を競合関係にあると勘違いする(自称も含む)クリエーターがいますけど、それは単に「尊敬されたい」とか「崇拝されたい」という劣等感が裏返った承認欲求の発露でしかないんですよ。娯楽作品というのは、宗教的な見地からするとあくまでもデモーニッシュな存在なんです。繰り返しになりますけど、類似・競合関係ではなくて敵対関係なんです。
そういう次第で、職業としての娯楽作家の要諦が分かったら、さっさと練習にお戻り下さい……って、あら? デモーニッシュなんて、ゲーテの言葉を使っちゃったよ。それじゃ、ついでにゲーテの格言を。
女は決して自分の自然な姿を見せない。なぜならば女は、自然から生みつけられたままでもきっと人から好かれるものだ、といういうふうに考えることのできる男ほどのうぬぼれがないからである。
娯楽作品の創作も一緒。自然とかありのままとか、そういうのはナシの方向でお願いします。ちゃんと自分の作品には、意図的にユーザーに合わせた「お化粧」をしてくださいね。分かります? 練習しない、ユーザーに合わせないのに自分の作品が認められるはずだと思うことそのものが、ただのうぬぼれに過ぎないんですよ。ゲーテも言ってるでしょ? 男に多いですよね。
14件のコメント
[C877]
- 2008-11-26
- 編集
[C878]
前回と言い今回と言い鳥山さんの書いていることは
至極あたりまえの事なんですけどね。
(だからこそ耳に痛いわけですが)
でなければ処女に興味のない私が
5年も6年も処女のヒロインばかり書くわけがないw
至極あたりまえの事なんですけどね。
(だからこそ耳に痛いわけですが)
でなければ処女に興味のない私が
5年も6年も処女のヒロインばかり書くわけがないw
- 2008-11-27
- 編集
[C879]
消費者主権と言う言葉がありますが、まさに今回のエントリーに当てはまる言葉なんじゃないかと思っています。更に、リスクを伴う人間関係の基本にもなりますね。
>「あの人、ホントにダメな男で……私がついてないと、何にもできないのよ。だから、仕方ないけど一緒にいるわ」
いやーほんと言われてみたいものです。宗教ではこういう快感は味わえないのでカワイソーだなーと個人的には思うわけですが、宗教にのめり込んでる人々からすれば「そんなの関係ねえ!」なんでしょうね。
ってことで今後もリスクを負う一人のユーザーとして鳥山さんの作品を期待しております。
>「あの人、ホントにダメな男で……私がついてないと、何にもできないのよ。だから、仕方ないけど一緒にいるわ」
いやーほんと言われてみたいものです。宗教ではこういう快感は味わえないのでカワイソーだなーと個人的には思うわけですが、宗教にのめり込んでる人々からすれば「そんなの関係ねえ!」なんでしょうね。
ってことで今後もリスクを負う一人のユーザーとして鳥山さんの作品を期待しております。
- 2008-11-27
- 編集
[C883]
>「あいつはクソだ。作ってるものもクソだ。でも、可哀想だから俺が買ってやるか」なんです。
がわからんです。
特定の作家のスレ見ていると、悪口ばっかり書いてて「つまらないならなんで読み続けるんだ」と思うような人がいますけど、そういうアンチファン? が作家としてはいい読者ということでしょうか。
作品が面白ければ作家も好印象を持つのが自分としては普通ですね。作家自身に問題があったとしても変人好きなので「それもまた奇才っぽくてよし」と思ってしまいます。実際に知人だったら嫌なんで。
>「あの人、ホントにダメな男で……私がついてないと、何にもできないのよ。だから、仕方ないけど一緒にいるわ」
これも言われたら嫌だなあ。
「お前がいないと俺はダメなんだ」だったら多少うれしいですが。
他は納得。
がわからんです。
特定の作家のスレ見ていると、悪口ばっかり書いてて「つまらないならなんで読み続けるんだ」と思うような人がいますけど、そういうアンチファン? が作家としてはいい読者ということでしょうか。
作品が面白ければ作家も好印象を持つのが自分としては普通ですね。作家自身に問題があったとしても変人好きなので「それもまた奇才っぽくてよし」と思ってしまいます。実際に知人だったら嫌なんで。
>「あの人、ホントにダメな男で……私がついてないと、何にもできないのよ。だから、仕方ないけど一緒にいるわ」
これも言われたら嫌だなあ。
「お前がいないと俺はダメなんだ」だったら多少うれしいですが。
他は納得。
- 2008-11-27
- 編集
[C886] Anchang さん
人生カテナチオというのは、1つの選択肢だと思います。これは、善悪の問題と言うよりも、むしろ性格とのかねあいですよね。
話は変わって小説の件ですが、ラノベは例外的にイラストのウエイトが高いため、ビジュアル面での満足度が作品評価に直結するそうですよ。ただ、それでもマンガよりは購入にリスクが伴う商品ですよね。
最後になりますけど、また新作短編を書きます。いつものようにムック掲載ですけど。単行本分の量が溜まったら、フランス書院に持ち込んでみますかね?
話は変わって小説の件ですが、ラノベは例外的にイラストのウエイトが高いため、ビジュアル面での満足度が作品評価に直結するそうですよ。ただ、それでもマンガよりは購入にリスクが伴う商品ですよね。
最後になりますけど、また新作短編を書きます。いつものようにムック掲載ですけど。単行本分の量が溜まったら、フランス書院に持ち込んでみますかね?
- 2008-11-28
- 編集
[C888] mudanさん
宗教は神様だか仏様だか知りませんけど、とにかく超越的存在なり神格的存在なりが「いる」という前提ナシには成立せず、これは究極の権威主義でしょう。
要するに、自分の言ったことだと主張しても、周囲の人間は耳を傾けてくれないから「権威のある存在の発言だ」と言わざるをえない、ということです。
そういう人と話していても、正直言って劣等感が強すぎて「痛々しい」としか思えないし、また楽しくもないんですよね。
まあ、人を悦ばせようという気持ちがないから宗教に耽溺するんですけど。嘘の上塗りしてどうするんだと思いますよ。
要するに、自分の言ったことだと主張しても、周囲の人間は耳を傾けてくれないから「権威のある存在の発言だ」と言わざるをえない、ということです。
そういう人と話していても、正直言って劣等感が強すぎて「痛々しい」としか思えないし、また楽しくもないんですよね。
まあ、人を悦ばせようという気持ちがないから宗教に耽溺するんですけど。嘘の上塗りしてどうするんだと思いますよ。
- 2008-11-28
- 編集
[C889] ありょーしゃさん
相変わらず天然で真面目な性格ですね。
文章を読み間違えてますよ。
「相手が悦ぶことをした」上で「この作品はクソだ」と言わせるんです。
つまり、読者が本当は好きだけれど、口に憚る恥ずかしい欲求を満たしてあげるのがベストだってことです。
そうすると、読者は対外的にはその作品を所持しているいい訳を始めて「この作品はクソなんだ」となるんです。
ホントにクズな作品なら、誰も見向きもしませんよ。
他のことに関しては、今度ブログに書きます。こっちは読めば一発で理解できるはずです。
うひゃひゃ。
文章を読み間違えてますよ。
「相手が悦ぶことをした」上で「この作品はクソだ」と言わせるんです。
つまり、読者が本当は好きだけれど、口に憚る恥ずかしい欲求を満たしてあげるのがベストだってことです。
そうすると、読者は対外的にはその作品を所持しているいい訳を始めて「この作品はクソなんだ」となるんです。
ホントにクズな作品なら、誰も見向きもしませんよ。
他のことに関しては、今度ブログに書きます。こっちは読めば一発で理解できるはずです。
うひゃひゃ。
- 2008-11-28
- 編集
[C890] 884さん
それ、上手くいき過ぎると、相手が100%の確率でストーキングを始めますよ。
実例なら沢山見てるんで、あまりやらない方がイイとだけ忠告しておきます。
女は怖いんじゃよ。
実例なら沢山見てるんで、あまりやらない方がイイとだけ忠告しておきます。
女は怖いんじゃよ。
- 2008-11-28
- 編集
[C893]
>鳥山さん
カテナチオ…ってサッカーの戦術ですか。穴熊戦法といってもいいですね。パンツ脱いでシュートしてくるような相手には負けるかも知れませんw
フランス書院いいですねえ。挿絵はあの方で?ってフランス書院文庫って挿絵ないですやんw
カテナチオ…ってサッカーの戦術ですか。穴熊戦法といってもいいですね。パンツ脱いでシュートしてくるような相手には負けるかも知れませんw
フランス書院いいですねえ。挿絵はあの方で?ってフランス書院文庫って挿絵ないですやんw
- 2008-11-29
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[C910] 906さん
あー、懐かしいですね。
私は小説も映画も好きですよ。
まあ、世の中には心から笑えない人がいるってことですよ。
たとえば、重度の鬱病なんかは、その典型ですが。
私は小説も映画も好きですよ。
まあ、世の中には心から笑えない人がいるってことですよ。
たとえば、重度の鬱病なんかは、その典型ですが。
- 2008-12-03
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いやー、今までリスク回避を優先した生き方でした。きっとこれからもそうですw
そしてクリエイティブな職業に就かなくて正解でした。飽きっぽいもので。自分という人間を再認識できました。ありがとうございます。
ところで、娯楽作品にお金を払うという件ですが、小説の場合、連載とかで内容があらかじめわかってない分マンガよりもリスクが高いでしょうね。リスク回避の点からいえば、前に読んで面白かった作家のを選ぶ傾向が高くなるでしょう。
というわけで、鳥山さんの作品に関してはリスクを犯す気があるので(いや正確にはリスク回避しているんですが)、期待しています。