王様を欲しがったカエル

　ナチスを調べた勢いで、社会主義・独裁主義政権下で不就労、あるいは怠労をするとどうなるかを列記してみた。割とお国柄が出ていて面白いかも。

１）ナチスドイツ
　２回にわたって就職を拒否した者は強制収容所送り。
　これは、ちょっと分かりづらいかもしれないが、要するに労働条件が気に入らないという理由で、就職できるチャンスを２回棒に振ると強制収容所行きになるという、ナイスなルールである。さすが『国家社会主義ドイツ労働者党』と謳っているだけのことはあって、働かない＝労働者じゃない＝犯罪者である。

２）スターリン時代のソ連
　怠労は強制収容所送り。ノルマ未遂行も強制収容所送り。
　ソヴィエト共産党の場合、不就労者よりも勤労者の怠け癖に厳しかったようだ。ちなみに、スターリン政権下のソ連では、１２歳以上の子供にも大人と同様の刑法が課されていたため、子供が強制的に軍需工場で働かされているという状況下で、ついうっかりサボって遊んでも強制収容所送りになっている。子供に厳罰を科せと主張している「識者」が聞いたら大喜びしそうな社会制度である。

３）戦前の日本
　熟練労働者が怠労すると強制徴兵の上激戦地送り。
　１９３８年から国家総動員態勢を敷いた日本は、天皇制を維持したまま社会主義政権に突入したのだが、この時に問題になったのが熟練労働者。というのも、当時の熟練工は請負制で働いており、１つ物品を完成させる毎に幾らという計算で賃金をもらっていた。このため、熟練工は仕事を大量に抱えている経営者と契約をしたがる傾向が強く（そうしないと賃金が増えない）、工場から工場へと職を転々とするのが常だった。これでは社会主義的な計画経済は無理なので、国家総動員態勢になってからは年功序列・永久就職的な賃金体制に改め、その代わりに全体の賃金を引き下げた。その結果、熟練工の賃金は３分の２まで低下。これに怒った熟練工は、仕事をサボタージュするようになった。それが、どれぐらい酷かったかというと、戦闘機のエンジンを製造する部門での熟練工の出勤率が、終戦直前で５割だったという数字に良く表れている。要するに、工場労働者からすれば、働いても働かなくても入る賃金が変わらないのであれば、わざわざ空襲の危険に身をさらしてまでも働きたくないと思うのが本音だったわけだ。そして、これに怒った官僚は、サボタージュしている熟練工を強制的に徴兵して激戦地に送って殺害した。
　このため、戦後もこの時期の制度が維持されている大会社などでは、社員は一斉入社で年功序列で賃金が上がり、退職者には冷たいという社風ができあがった。今でも日本の自殺者の７割は男性で、その多くが失職者なのはこの制度が未だに維持されているためである。

４）コンゴ自由国
　ノルマを果たせない住民は手を切断。
　世界最悪の植民地制度を実行したのはベルギーである。ベルギー国のレオポルド２世がアフリカのコンゴを私有領とし、ここにコンゴ自由国を作り圧政を敷いたのだ。住民はゴムや象牙の採取を強要され、これがノルマに到達しない場合は手を切断された。一説によると、ベルギー人の圧政のため、コンゴの人口は２５００万から１５００万まで低下したという。