王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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第2話 マンションの7階から一望できる赤霧丘陵は、秋の夜の闇に覆われていた。マンションの真下に広がっている院須万守町の住宅街にも、それほど明かりが灯っているというわけではない。 田舎の夜は早い。深夜近くに路上を徘徊しているだけで、不審者扱いは免れない。 四須さくらは大きく深呼吸をしてから視線をベランダと部屋を遮るガラス扉から安っぽい合板でできたテーブルに戻し、その上に乗っている2枚の写真に意識を集...