王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
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高嶋ぽんずさんの短編を解析する(文章技術解析)・2
前回の続きから。 1回目で、私は「欠損情報=謎を提示することで、読者の興味を惹き、その後で解答を示す」という方法で、シーン、あるいはシークエンスを繋ぐ、という方法説明しました。映像作品やミステリ系の作品では謎を提示することを「伏線」、謎の答えを提示することを「伏線を回収する」などと言いますが、これも「欠損情報の提示によるシークエンスの接続」という技法の亜種だと思って構わないでしょう。 この方法の...
高嶋ぽんずさんの短編を解析する(文章技術解析)・1
ツイッターで仲良くしていただいている、高橋ぽんずさんから「自作の短編をガチでチェックして欲しい」という依頼があったので、このブログでやってみます。というよりも、長さからいって、ツイッター上では不可能でしょう。 依頼をいただいたのは『蜘蛛の糸異聞―カンダタ地獄行―』で、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』をベースにした二次創作です。 基礎情報として、ベースとなった蜘蛛の糸は約3000字の作品、ぽんずさんの二次創...
「あしたのジョー」→「リングにかけろ」→「うる星やつら」とほぼ同時期に、別の暴力系ヒロインの系図を作ったのは「ルパン三世・TV版」(1971年)です。こちらのヒロインである峰不二子は、魅力的な肉体を主人公であるルパン三世にちらつかせ、金品をかすめ取った挙げ句セックスはさせないというネグレクト系です。ただし、「ルパン三世」が大ヒットしたのはTV版第2シリーズ(1977年)からで、また原作の「ルパン三世」にお...
前回のコメント欄にあった電気屋さんに対するアンサーです。 まずですね、恋愛をテーマに含むフィクションにおける暴力行為は、基本的にポルノ的要素と反比例します。 つまり、セックスシーンが無い恋愛モノ、ラブコメモノの方が、ポルノよりも激しい暴力シーンが多いんです。その理由ですが、恋愛のドキドキ感と暴力を受けるドキドキ感が生理学的に一緒だからです。どちらも自律神経のうちの交感神経が活性化した状態なので、...
文章の善し悪しをジャッジする基準・完結編5
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人はすべて模倣された歓びを感ず。(アリストテレス) アリストテレスの『詩学』は、テーマ小説を書くための優れたノウハウ本です。フランスで新古典主義が流行した時期に、上演された演劇の多くが『詩学』を典拠にして作られたことからも、この本の内容が有用であったことが伺えますし、恐らく現在でも小説を書く際に有効なツールでしょう。 ただし、これはアリストテレスが普遍的な真理を述べているからではありません。ぶっち...