王様を欲しがったカエル
作家・シナリオライター・編集者を兼任する鳥山仁の備忘録です。
Entries
文章の善し悪しをジャッジする基準・完結編4
- ジャンル : 日記
- スレッドテーマ : ひとりごとのようなもの
テーマ演繹法の4つめの利点として、キャラクターチェンジが容易に可能であるということが挙げられます。たとえば、先ほどの恋愛をテーマに演繹した作品の場合、ヒロインが大人しくて引っ込み思案な性格か、明るくて積極的な性格か、ツンデレかヤンデレかで、同じ恋愛を演繹した作品でもテイストがかなり変わってくるはずです。 このような、「キャラクターを入れ替えることで、作品のテイストを変えていく」という調整を積極的...
文章の善し悪しをジャッジする基準・完結編3
- ジャンル : 日記
- スレッドテーマ : ひとりごとのようなもの
時間が空いてしまいましたが、続きに行きましょう。B.社会的事実や歴史的事実に対するリアリティ というのは、歴史的事実を出来る限り改編せずに小説を書くことによってリアリティを維持する手法を指します。いわゆる、歴史小説がこれに当たるものです。たとえば織田信長を主人公とした小説を書こうとしたら、信長は1582年6月21日に本能寺の変で死ななければならない、というのが「歴史的事実に対するリアリティ」です。これが...
文章の善し悪しをジャッジする基準・完結編2
- ジャンル : 日記
- スレッドテーマ : ひとりごとのようなもの
(3)のリアリティは、現実逃避型の娯楽に対する批判から主張されるケースが多く、A.心情描写のリアリティB.社会的事実や歴史的事実に対するリアリティC.科学、あるいは自然科学に基づいたリアリティ に大別されます。 A.の心情描写のリアリティは、日本の近代小説の理論的支柱となった、坪内逍遙の『小説神髄』(1885年)の頃から主張されているもので、これは主に江戸期の戯作批判、具体的には滝沢馬琴の『南総里...
文章の善し悪しをジャッジする基準・完結編1
- ジャンル : 日記
- スレッドテーマ : ひとりごとのようなもの
●基準4(編集者から見た文章のクオリティ) さあ、ここで初めて娯楽小説の内容に踏み込んだ上で、文章との関連性について考えていきましょう。 娯楽小説は大きく分けて、1)現実逃避2)教養補助3)リアリティ4)実学・啓蒙補助(うんちく系)5)反教養 という互いに矛盾する商業的な要素で構成されています。(1)の現実逃避は解説不要でしょう。要は「読んでいる間は現実を忘れさせてくれる」事を目的として書かれる文...
文章の善し悪しをジャッジする基準・後編2
- ジャンル : 日記
- スレッドテーマ : ひとりごとのようなもの
さて、辞書を利用した文章鍛錬法ですが、この技法は英米文学の作家(の一部)が行っているだけであり、日本はもちろんヨーロッパの作家の大多数ですら見たことも聞いたこともないはずです。前述のように、この練習法が広く知られるようになったのはヘミングウェイの知名度が上昇してからで、年代的には1920年代の後半以降ということになります。要するに、まだ百年も経ってないんですね。 おまけに、日本人の大多数はヘミン...